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あの花束は何処(いずこ)から
私は独身の時、カーディーラーのショールームで働いていた。今回はその時の話をしようと思う。
どんなエピソードが面白いだろうかと考えてみたけど、以前も書いたあの話のインパクトが大き過ぎるので、加筆修正して書いてみようと思う。
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私の仕事はショールームに来店されたお客様をご案内したり、経理事務、登録業務、その他諸々多岐に渡っていた。当然、その中には電話対応も入る。
ある時、掛かってきた1本の電話を受けたのが私だった。
「はい、ありがとうございます。⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎、みゆでございます」
「あの、ちょっとお話があるのですが」
電話の主は若そうな男性の声がした。
「何でしょうか?」
「あのですね。実はあなたに花を贈りたいんですけど、贈ってもいいですか?」
「え?花ですか?私に、ですか?」
「そうです、あなたにです。いいですよね?」
私が唖然としていると、「それではそういう事で」と電話が切れた。
私に花を贈りたいって、一体何事?
何処の誰が私に花を贈ってくれるというのか。
考えても誰の事か想像もつかなかった。
様子のおかしい私を見たみんなが話しかけてきた。
「さっきの電話なんだった?」
「みゆちゃん、様子がおかしいよ」
「あのですね、なんか私に花を贈りたいって」
「お前に?誰が?」
「分かんないんですよ」
「みゆちゃん、モテモテじゃんw」
本当に一体何なんだろう。
私になんで花なんて贈ってくれるんだろう。
数日後、ショールームに大きな花束と共にお花屋さんがやって来た。お花屋さんは私に大きな花束を渡すと、「ありがとうございましたー!」とにっこりと微笑んで帰っていった。
「えらく豪華な花束やねぇ」
「みゆちゃん、やっぱりモテモテじゃん!」
「でも、一体誰からなんだろうね。心当たりは無いの?」
「心当たりなんて全然無いですよぉ」
花束は大きくて立派なものだった。色とりどりの花はとても綺麗で可愛かった。女の子は花束を人からもらうのは嬉しいものだけど、出所の分からない花束を手に私はどうしたものか考えた。花束にはカードが入っていたけど、誰からかは書かれていなかった。
いたずらなのかと思ったけど、それにしては手が込んでいるし、何よりお金が掛かり過ぎている。考えれば考えるほど謎は深まるばかりだった。
ショールームには、私を含めて3人の女性がいる。もしかしたら、私じゃない他の2人のどちらかに宛てたものではなかったのだろうか。それに、私は真っ先に気に入られるタイプでもないし、二番手、三番手の通好みのタイプなのだから。
花に罪は無いので、自宅に持ち帰る事にした。花束を見た両親も目を丸くして驚いていた。それはそうだろう、娘が大きな花束を抱えて帰ってきたら普通は驚くと思う。それでも、母は花瓶に花を活けてくれた。花瓶に活けられた花はそれはそれは綺麗だった。
結局、それからは何の連絡も進展もなく、誰から贈られたものかは分からずじまいだった。
ところが、この話には続きがある。
それからしばらくして、私は結婚のために会社を退職した。嫁ぎ先でも同じ様な仕事を家族経営の会社で続ける事になった。まだ結婚して長くならない頃の事だ。朝、事務所に行くとカウンターテーブルの上に大きな花束が置いてあった。
「何これ?」
「店の前に置いてあった」
「は?何で?」
「さあ、何だろうね」
みんなで不思議がっていると、夫が言った。
「それ、みゆに来たんじゃないの?前の会社で花もらってたじゃん」
この花束も出所は分からず、今でも謎だ。一体何なんだろう。ちょっと怖い気もする。これもいたずらなんだろうか。この謎はもう永久に解けることはないのだろう。
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本当に、あの2つの花束は一体何だったんでしょうか。
今でも不思議でたまりません。
あの花束、本当は私じゃなくて違う人に贈ろうとしたんじゃないのかな。
電話を取る時に自分の名前を名乗るけど、その人が本当に私の名前を知っていたのかが分からないんですよね。
それに、2回目の花束も怖いんですけど。
置いてあったっていうのがまた怖いですよね。
でも、花束の後はもう何も不思議な事は起こらなかったので良かったです。
仕事の話は、こちらに真面目な話も書いています。
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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