キャンディーと過ごす休日
カーテンのすき間から、朝日がこぼれる。
名前の知らぬ鳥の歌を聞き、ゆっくりとまぶたを開ける。
窓の外を見ると、オレンジ色の太陽が昇り、川沿いに広がる町を照らしている。
今日は何をしようかと、こだわりのコーヒー豆を挽きながら考える…
というのは、理想である。
休日の過ごし方というのは、だいたい予定通りにいかないものでー特に予定のない『予定』ともなればー計画通りにはほとんど進まない。
実際に、休日というのは前日の夜から始まっている。
ここで早寝出来たら、次の日もスッキリ目が覚めるのだろうが、なかなかiPhoneを手放すことができない。
お気に入りのYouTubeチャンネル、TikTok、Twitter、Instagram。
見だしたら止まらない、魅力的なコンテンツに溢れている。
あぁこの雑誌のモデルのように、大きな瞳になれたらなぁ、引き締まった顔になれたら、、などと妄想にふけっていると、いつのまにか時間は過ぎてしまう。
そして、緊急事態宣言下の連休中、ついにスマホゲームに手を出してしまった。
抜け出せなくなるとはわかっていた。
実際、大学生の頃、スマホゲーム『キャンディークラッシュ』に狂うほどハマっていた。
キャンディーをモチーフにしたパズルゲームで、3つ同じ種類をを揃えて、それを消していく。クリア出来ないと、『ライフ』を失う。
ただ、時間が経てばまたライフは回復するので、それをいつも今か今かと心待ちにしていた。
また同じような状況になることが分かっていたのに、まぁ、息抜きに、インストールしてしまったのだった。
当時のデータは引き継げていないので、またステージ1からのスタートである。
何年かぶりの感覚。
指をすべらせると、子気味いい音とともにはじけるキャンディー。
『Divide!』キャンディーを消すとともに響く、男性の声。
久々の快感に、脳が痺れるような快感に陥った。
どんどんステージか進んでゆく。
連続でステージをクリアすると、ボーナスアイテムが貰えて、さらにゲームがクリアしやすくなるのである。
そんなこんなでステージを進め、カラフルなキャンディーたちと戯れていたら、気づくと時計は朝の五時をまわっていた。
慌てて目を閉じ、眠りにつく。
夢の中でも、キャンディーの町で泳いでいた。
目が覚めた時には、お昼を回っていた。
こうなると、もう初めに立てていた計画は、ただの物語にすぎなかった。
まぁ、こんなのもたまにはいいか、と思いながら、またキャンディーの街に冒険に出かけるのであった。
おわり
#休日のすごし方