見出し画像

オンラインでのサロンコンサート 《シューマン的なブラームス》

年に二回ほど自宅でサロンコンサートをしてきましたが、これまで演奏してきたプログラムを振り返ると、なんというか、本で例えるなら、
『大きな書店の店頭に並べられたベストセラーではなく、古本屋でひっそりと売られている名作』が多い気がします。

最近のお気に入りは、ブラームスの「8つのピアノ小品」。
昔、仲が良かったオーストリア人の友人から、誕生日にこの曲集の楽譜をもらいました。
決して派手ではないし、ブラームスのピアノ作品ならもっと後期のものの方が需要があるので、ずっと棚の中に眠っていましたが、急に思い立って弾いてみたのです。
すると、もう、こんなに面白い曲集をなんで今まで放置していたんだろう!と後悔するくらいハマりました。
曲の概要はこうです。

交響曲第2番の作曲から1年後、1878年の夏頃に、ヴェルター湖畔の避暑地ペルチャッハで作曲された。なお、第1曲の初稿のみ1871年に書かれている。第2曲がイグナーツ・ブリュルによって1879年10月22日に先行して初演されており、全曲の初演は10月29日にベルリンでハンス・フォン・ビューローによって行われた。ビューローはその後もこの曲集を愛奏したと伝えられている。出版は1879年春に行われた。
『ワルツ集』の独奏版以来、13年ぶりに出版されたピアノ独奏曲となった。マックス・カルベックは、ブラームスがこの頃ロベルト・シューマンやフレデリック・ショパンの作品の校訂を行ったことをピアノ曲への回帰と関連付けている。和声が晦渋になり作品が内向的になっていく、ブラームスの「後期」への入口にあたる作品とも言われる。
Wikipediaより

上記の解説に「シューマンやショパンの作品の校訂を行った…」というくだりがありますが、その影響がうかがえるのが第4番。
この曲は『間奏曲』としか記されていませんが、調性が不安定で、それでいてとてもロマンティック。どことなくシューマン的な感じがします。
あ、〇〇的というのは、本当は不適切ですね。
誰しも多面性を持っていて、ブラームスだって、こんなふうに情緒不安定でロマンチストな部分があって、それも彼自身なのですから。
ただ、この曲のメロディの音名を並べると、どう考えても意図的です。
最初のメロディが Es-A-H-C となっていて、これはシューマンの謝肉祭で使われている象徴的な音符 A-Es-C-H の順序を入れ替えたもの。(謝肉祭は「4つの音符による面白い情景」という副題がついていて、その4つというのが上記の A-Es-C-H (ラ - ミ♭ - ド - シ)または As-C-H (ラ♭ - ド - シ)であり、由来はシューマンのかつての恋人の出身地名(ASCH)とのことです。)

ブラームスは師であるシューマンをとても尊敬し、彼からどれだけ影響を受けたことかわかりません。
逆に、師の作品に関して細部まで理解していたのがブラームス、とも言えます。(もちろんシューマンの理解者としては妻のクララ抜きには語れませんが、ブラームスとクララの関係性は長くなるので割愛します)
なので、この作品はブラームスのシューマンに対するオマージュと捉えるのが自然でしょう。
音と言葉による遊びがコッソリ仕掛けられ、いろいろな想像が膨らむ一曲。
それではどうぞ、お聴き下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?