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春を祝うクルド人難民たち:賑やかな踊りの輪の陰に垣間見えるのは?

「ネウロズ」(または「ノウローズ」Nowruz)という言葉は、知らない方も多いのではないだろうか。あるいは、埼玉県内であれば知っている方も多いかも知れない。
「ネウロズ」とは、クルド人の春を迎える祭りのことで、春分の日に祝う。「世界最大の少数民族」、「国を持たない世界最大の民族」とも呼ばれるクルド人たち。日本には、特に埼玉にはトルコから難民・移民としてやってきた、しかし難民として認められることがまずないクルド人が住むが、ここオランダには2011年に始まり未だ終結の見えないシリア内戦から逃れてきたクルド系シリア人が増えている。

このクルド系シリア人、クルド系トルコ人(イラン、イラクからのクルド系移民の参加者もいたはずだ)の難民・移民の人々が、ついに昨日2024年3月23日、このエリアでは初めてのネウロズを開催した。

オランダ東部のアーネム、ソンスベーク公園で開催された「ネウロズ」

昨年、2023年6月20日にYahoo!ニュース特集に掲載してもらった私の写真記事、「難民1億人時代――クラスメイトの難民たちが明かす逃避行と現在」の執筆のためのインタビューに協力してくれたクルド系シリア人女性難民のフェリアルの誘いで、私の初めての「ネウロズ」体験となった。

会場には200人ほどのクルド人たちが集まっていた。民族衣装で着飾った人も多く、独学でドレス作りができるフェリアルも、自作の青地に金の刺繍を施した独特の衣装で身を飾っている。彼女の友人たちも、フェリアルによる手作りのドレスと目と眉を強調したようなメイクで、大変華やかな姿をしている。(ちなみに私はスーパーマーケットにでも行くような、ウィンドブレーカー姿の普段着での参加だったが、踊りには参加してしまった)

しかし、小雨が降ったり止んだりの午後、ぬかるんだ地面からせっかくのドレスの裾も、長い袖も泥で濡れてしまっている。それでも彼女たちは、「そんなこと気にしない」とばかりに、両手の小指をとなりの人の小指とつなぎ合わせ、シンプルなステップを踏む。クルド人たちが手を繋いで作る輪はどんどん大きくなり、ステージ上でライブ演奏される民族音楽の歌や太鼓のリズムに合わせて、彼らは踊り続ける。

クルディスタン労働者党PKKとオジャランを組み合わせた旗

回り続けるのはクルド人たちだけではなかった。この祭りには、いくつもの旗が持ち込まれ、その多くは「クルディスタン労働者党」、つまり武装組織とも言われるPKKの赤地に赤い星を掲げた旗や、そのPKK創設メンバーのアブドゥッラー・オジャランのものだった。

「埼玉でも開催されるネウロズでは、これらの旗もひるがえるのだろうか?」そんなことを考えているうちに太陽は森のかげに傾き、クルド人たちはそれぞれの家へと向かって行った。


フェリアルの娘のロシュナは、クルドらしいスカーフを頭に巻いてもらった

本来なら、好きな白黒の写真を撮りたいところだが、クルド人たちの衣装の色鮮やかさを見ると、カラー写真しか考えられなかった。


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この記事のリンクをFacebookに投稿したところ、トップに掲載したクルド少年の写真に対し「彼の名前はSarhad」というコメントをもらえた。誇らしげにクルドの旗を掲げている彼、Sarhadくんでした。

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