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本気の一歩を踏み出すまで半世紀かかった
踏み出せなかった半世紀
私が自分の中にいる女性に気づいたのは、幼稚園のころでした。社宅に住んでいて、周囲にはお姉さんが多く、おままごとに付き合ったり、スカートを履いてみたり、少女漫画を読んだりするうちに、女の子の世界に憧れるようになったのです。
小学校6年生のときに母の下着を身につけてからは女装に夢中になりました。しかし、本気で女性として生きることを決心したのは55歳のとき。幼稚園から通算して約半世紀もの間、迷い続けていました。
自分の中の女性を心の奥深くに隠し、周囲の期待や社会の常識に従うだけで精一杯の毎日。「自分らしく生きたい」と願う気持ちと「それは許されない」という社会の常識が私の心を引き裂いていました。
踏み出すきっかけ
そんな私も、20年前に一度、女性として生きようと決心しかけたことがありましたが、そのときはさまざまな事情で断念しました。
けれども55歳のときに、「このままでは一生後悔する」という思いが、マグマのように湧き起こってきたのです。それで「還暦まであと5年。この期間を使って準備を整え、第2の人生を女性として生きよう」と決心しました。周囲にどう思われるかよりも、自分を偽ったままでは後悔すると強く感じたからです。
まずは日常的に女装することから始めました。
踏み出したあとに見えた世界
実際に女性としての生活に向けて歩み出すと、周囲の反応は驚くほど温かいものでした。銀行や市役所、病院の職員も親切に対応してくれ、ご近所や買い物先でも特に問題はありませんでした。ブティックや美容院、まつげサロン、ネイルサロン、ランジェリーショップでも普通に接客してくれました。フラ教室では一人の女性として迎え入れられ、発表会の舞台にも立たせてもらいました。
考えていた以上に温かい世界が広がっており、今では女性としての自分らしい生活を楽しむことができています。
読者へのメッセージとお願い
このように書くと、私は女性らしい容姿や体型に恵まれていると思う方もいるかもしれません。しかし、実際はそうではなく、スッピンでは男性そのものですし、身長は180cm近く、手や足も大きいです。体重もあと10kg減らしたいところです。それでも幸せの方がずっと大きいのは、理解してくれる方々がたくさんいるからです。
もし踏み出せずにいる方がいたら、私の経験が少しでも勇気のヒントになれば嬉しいです。「自分のタイミングを信じて」というのが、半世紀悩んだ私だからこそ言えること。焦る必要はありません。いつかきっと、一歩を踏み出すときが来ます。その先の未来は、きっと明るいものになると信じています。一緒に幸せを目指しましょう!
最初の一歩に踏み出せない方が不安に思っていることを、XのDMで教えていただけないでしょうか。今後の記事執筆の参考にさせていただきたいです。
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トランス女性が直面する日常の悩みや課題に寄り添いながら、私自身のカミングアウト経験や、女性としての生活を築く中で学んだことをお届けします。…
自分のしたいことと向き合うことで、わたしはしあわせになれたと思っています。わたしの生き方を知って、ちょっとでも癒やされる人がいればいいなあという気持ちで書いています。スキやフォローは本当に励みになりますので、よろしくお願いいたします。