窓用クーラーと焦げたやかんの思い出
立秋を過ぎて暦の上では秋になったが、まだまだ猛暑の毎日が続いており、我が家でもエアコンがフル稼働の日々である。
タイトルに掲げた思い出は、今から25年ほど前、京都府北部で地方公務員をしていた20代前半頃の話である。
当時、私は1DKの賃貸アパートで一人暮らしをしていた。駐車場付きで家賃42,500円。古い物件だったが通勤に便利で日当たりも良かった。ただしベランダはなく布団が干せるような柵のついた大きな窓があるのみ。そしてエアコンがついていなかったので、父が窓用クーラ-を中古で見つけてきて、部屋の側面にある窓に取り付けてくれた。
今はきっと良い製品があるのだろうが、当時の窓用クーラーは稼働音が大きい割にはあまり冷えないという印象だった。しかし居室側は6畳の狭い部屋、またその頃は暑くてもせいぜい30度超えだとかそんな程度だったのではないだろうか。特に暑さに苦しんだ記憶も無く、このクーラーで不満なく過ごしたように思う。
その夏の日の夜、なぜお湯を沸かしていたのかは覚えていない。夕食にカップ麺でも食べるつもりだったのか、私は台所で水を入れたやかんをガスコンロにかけてそれをすっかり忘れ、居室の片隅に設置したデスクトップのパソコンに向かって、多分トランプのゲームか何かをしていた気がする。
しばらくして・・・なぜだろう。クーラーを付けているのに、部屋がだんだん暑くなる。おかしいな。設定温度を下げる・・・機能はその窓用クーラーには無かった気がするので、おそらく「強」にしようと椅子から立ち上がり、クーラーの方へ歩いて行った私は、そこでやっと、やかんを火にかけたままだったことを思い出した。
あっと気がついて慌ててガスを消したが、すでに水は一滴も残っておらず、やかんはチンチンとかすかな音を立てながらガス火にその身を焼かれており、焦げ付いたやかんの底には小さな穴がいくつか空いていた。ボヤになる寸前だったのかとぞっとした。
湯が沸騰する音がしていたはずなのだが、ガス(台所)、クーラー、パソコン(私)という位置関係から、クーラーの稼働音が大きかったために気がつかなかったらしい。部屋の温度上昇という異変に気づいて、あわや出火という事態を辛うじて避けられたことは良かったが、自分のうっかり加減に怖くなった。それ以来、火を使うときは決して離れないように気をつけている。