わたしの場合のハープの楽しみ方
ハープの楽しみ方は色々あると思いますが、ここではわたしの場合、よく思っていることを書いてみます。
わたしがハープを好きなのは、弦がはじかれると、空気からと、ハープ本体の木からも振動が伝わって、体ごと響きを感じられるというのがあります。多くの音を華やかに鳴らしたいときも、少ない音の響きと静けさを楽しむときも両方あると思います。
もう一つは、動かしてる指や手のひらが気持ちよいというのもあります。よい形にぴたっとはまって、丸いきれいな響きがでたとき、弾いた後の指の力がうまく抜けているときの気持ちよさというのもありますし、それ以外にも手や指を動かせていること自体の気持ちよさがあると思います。
練習曲をやっていると、最初は今までにやったことのない指の動きにしどろもどろになったり、そもそもできなかったりするのですが、なんとか体が覚えてくれてできるようになってくると、その動きが気持ちよく感じ出します。体の中の、今まで繋がっていなかった箇所の神経の回路が繋がり出してきた感じ。仔犬が生え始めの歯がくすぐったくて、いろんなものを噛んでみたいかのように(あくまでわたしの感覚ですが…)、やたら弦のあちこちを、そのフォームではじいてみたくなったりします。
よく譜面に関係なく、でたらめに(というか指の動くままに)、左手で分散和音、右手の人さし指だけであちらこちらの弦をはじいてみる(あるいは右手でも分散和音もしてみたり)というのをやって遊んでいますが(とてもすてきな現代音楽風、あるときはヒーリングミュージック風になったような……?感じがするときもあります)、手自体が気持ちよいのです。
わたしには、すでに世の中にある曲で、弾いてみたい曲、弾けるようになれたらいいなと思う曲がとてもたくさんあります。一方、上に書いたように、ただあちらこちらの音をぽろんぽろん弾いて楽しむ、一人即興演奏みたいな時間も大好きです。ハープはありがたいことに、ちょっと不協和音気味でもそんなにひどく聞こえないというか…(不協和音じゃない方が穏やかに聞けるときは多いですが)、響きを楽しめる楽器だと思います。
そうやってなんとなく弦を鳴らしているときに、ふと、「あっ、いまきれいな音鳴った」、「いまの音の繋がり好きだ」みたいのが出てきたときに、もうカタカナでドレミ表記でいいのでメモしておいて、あとで小さな曲にしてみたり、というのを少しずつやっています。
わたしが今までで一番絵を見て感動した画家で、エミリー・ウングアレーというアボリジニーの女性がいます。随分前に(いま調べたら2008年でした)新国立美術館であった展覧会で、壁一面にひろがる彼女の絵を目の前にして圧倒されました。体の中からなにかが湧き上がるという感じ、うれしくなってくる感じ、躍動感というか、圧倒的なパワー。
彼女の描く点や線、さまざまな色で自由に展開される世界は、自然を含め自分の故郷に関するすべてのもの、彼女にとって大事であるすべてのものを描いていたということでしたが、わたしには、彼女はその自分の愛するものを、とにかく「その色で、その筆で、ひたすら点をうっていく、点で白い紙を埋め尽くしていく、その感触が気持ちよかった」、「その色と、その筆で、線をぐるぐるかくのが気持ちよかったから、どこまでもかいちゃった」、「それでひたすら、夢中でどんどん描いていき、紙の上を覆い尽くしてしまった…」というように作品を生んでいったように感じたのです。勝手に、絶対そうなんじゃないかと思いながら、彼女の作品たちを眺めていました。ほんとうのところはエミリーさんに尋ねてみないとわかりませんが…。そう感じさせてくれる、描く喜び、筆を運ぶ躍動感を感じさせてくれる作品たちでした。
話が飛んでしまいましたが、なんかその動作自体の気持ちよさも純粋に味わってやっていることってあると思うし、それは幸せなことだなあと思います。それは見ている人、聞いている人にも伝わるのかもと思います。