ヘリコプターが やたらちいさく、はやくとぶ 灰色のまちひとつ ひととしてあまいのを求め 立っている
恍惚と流れる夕の空 その前でより一層碧い山よ ややあって 木陰で稲取る祖母と白鷺 一度忘れ 私は想像した 誰に 何人に愛を配ろうと 私の自由だ いつ どんなことばで どんな色で渡そうと。 叫ぼうと。 初秋の田んぼの黄緑に染まってきている。
こんにちは ほとけさま どうか助けてください 湿気で重たいこの曇りの日 すこおし、おなかの下の方に キリとした痛みがあるの ほとけさま 助けて下さい こんばんは ほとけさま 何処に居らっしゃいますか。 私はじぶんの部屋に居るんですが どうしてか、何も思い通りに動きません ほとけさま 教えて下さい とんとん、ほとけさま こんにちは 少し、気づいた事があります 大きな深い海の渦に 飲まれているように感じるのは この街が灰色で冷たく 知らないひとと近すぎてとおい その所為では
私は円柱の存在だ 電柱とそんなに変わらないが 天にも届こうと 儚く消えゆく銀か青か その真ん中を とろり、と流れる 涙 まだ死を恐れている。
小さな世界でいい なにも知らない 子供にかえって もてる分だけの希望を守って 赤い華の 日ざしにかくれればいい
過去は夢 ターンとリターン 繰り返し ターン、 ターンに ターン で リターン 先は闇 ターン、 ターン もうひと回り、 また回る はっきりして 輝くのは今 夢の中では いつも踊るの ーーーーーーーーーー 今という時のリアリティと 過去という時のファンタジー 未来という時の空白 について考えた。 考えたときの私は、雨の日の夜、外の不穏な空気と雨音を感じつつ 寝苦しく感じながら、 悪天、そして眠るべき時間帯の中でこそ冴えわたる意識を感じていた
近くて 遠く 目をつむった 暗い宇宙で 近く、 遠くを 行く彼ら 私は 進む ひとり、 ひとり 出会えば 遠く ひとり、 ひとり また 想う ひとり、 ひとり 私は 進む 深く 静かな この 一(いつ)を 前とうしろが 始まりと終わりが 上下も 左右も つながる、 そんな宇宙
私、ひとりになっちゃう。 孤立した島 荒れるくらい海 灰色に 温度を失って 分厚い雲が 囲む 湿って 永遠を思わせる いよいよ 私を 粉粉にするよう、 視線は どこにも届かない 目に込み上げる涙だけが、ほとばしって熱い。 乱暴な 冷たい風に吹き付けられて 心が妙に、急に澄んだよう 思い出す まだ ここにある 大切なもの 明るい光 あの頃の部屋、母の手、ベランダの草 今全てが広がって だんだんと あたたかくひかりかがやいて 溶けて 伸
くまさん 一匹釣ったんよ ぐいーん ぴちゃんで、 美味そうな。 草むらン中 ちょっとかき分けて これで良いかね よっこらせ さてさて お味はいかがかな そういえば これは めでたいことだ こいつ たべるのは はじめてで まわりには 誰も 見とらんけど 一所懸命な 鱗よ。 歌をひとつ、 うたっとこか。
2021年6月5日9時59分、20秒、21秒、22秒 … 私はあまりにも譲りすぎた。 散歩、読書、午後のお茶、ピアノ、旅、食事、睡眠、夜更かし、 おしゃべり、外で飲むお酒、空… どれも、時間を忘れてすることが出来ない。 時間に囚われては、満足にできないことばかりなのに。 この街で生きる私を縛るのは、時間だ。 夜勤明けのこの私と、 隣の部屋のつい1年ほど前に生を受けたばかりの赤ちゃんと、 ベランダの下の小道を歩くおじいさんは、、 今、真に平等なはずだ。
アスパラかじった いつの日か 茹でただけで 青々と柔い そのアスパラの 繊維いっぽん やたら噛めない 繊維いっぽん こいつは まるで おれじゃないか こいつも 立派に生きていた! あたたかな 腹から出でて 風 吹き抜けて 出来ること 身のタケに合ったこと シテ それでもやっぱり 空を仰いで ほうら、結局 こうなるのだ 全然知らぬ 人に囲まれ ホガラカな顔 してやってさ。 皆はなんでか 笑ってて ふくらみ へこんで 道成って おれは そこを 歩いて
+++++++++++++++++++++ ・ ++++++++++++++++++++++ コンコン、 冷たい音がした。 木の戸を開けると、一人の男。 そして冬の夜の空気。 肌が白く、身体の線も薄い、どことなく頼りない彼は、私の旧知の知人だ。 彼の視線は、時々私に触れそうで、触れない。 「大丈夫かな。」 誰が、どう大丈夫なのだ。 彼を家に上げるのは嫌だったけれど、吹き付ける風に押されるように 言葉もなく、迎えた。 次の日起きると、彼は既に起きて
近所の八百屋のお向かいの家。 クリーム色だか、薄ピンクだか、そういう感じのこの辺では少し大きな一軒家。 ちょうど道路に面した二階から出窓がややせり出ていて、よく見ると羽ペンが机上に一本立っている。 私はその出窓を確認する。電気はいつも消えていて、誰もいない。空白の席の、薄暗さがなぜだか気になって、通る時目をやる。 いつもより早めの学校帰り、がらんどうの筈のその窓の中を見やったら、なんと人が窓に向かって何か物を書いている。 オレンジの暖かい光の下のその人は白髪のおじい