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好きな映画紹介『さよなら人類』

こんにちは、Holly(@__one__01)です。

今回は、はじめて見たときの衝撃が大きかった映画『さよなら人類』についてご紹介します。

『さよなら人類』について

スウェーデンが生んだ鬼才、ロイ・アンダーソン監督による、人間であることに関する3部作の最終章がこの『さよなら人類』です。

前作である『散歩する惑星』は、集合的な罪と人間の脆さ、『愛おしき隣人』は夢の中への大胆な旅立ちを描いています。『さよなら人類』は悲しみと苦しみ、そして生きる喜びを描いており、前2作を観ていなくても問題なく楽しめます。

動く絵画と呼ばれる理由

ロイ・アンダーソン映画は「動く絵画」と呼ばれています。

その理由は、Studio24というロイ・アンダーソンが所有する巨大なスタジオに美術を組み、遠近法の構図、配置、細部、配色まで全てのシーンで徹底的に計算されているからです。

カメラは固定ショットで、特定の誰かを追ったりズームにすることのないスタイルが絵画的な印象を生み出しているように思います。

登場人物の顔がみんな白いのも個別性を超越し、普遍的な人間性を示すためのメイクだそう、監督の狂気的なまでのこだわりに圧倒されます。(私はそういうものに惹かれがち)

メイキング映像が面白い

この映画のメイキング映像は是非見て欲しい、全てのシーンをスタジオ撮影しているだけあって美術がすごいです。

ロイ・アンダーソン監督に影響を与えた画家

ロイ・アンダーソンが影響を受けた画家として、オットー・ディクス、ゲオルグ・ショルツ、エドワード・ホッパー、ピーテル・ブリューゲル、イリヤ・レーピンの名前を上げています。

オットー・ディクスとゲオルグ・ショルツは新即物主義の画家で、新即物主義とは、第一次世界大戦後に勃興した非常に冷めた視線で社会を観察し、それを即物的(客観的)に時に批判を込めて表現した美術運動です。

映画の中ではエドワード・ホッパーの『ナイトホークス』や『サマータイム』そっくりの構図が登場します。

ピーテル・ブリューゲルの『雪中の狩人』からは、木々にとまる鳥が、眼下の人々の営みをもの珍しそうに眺め、思案しているようにみえることがインスピレーションとなっている。映画からは時折、鳥の鳴き声が聴こえてくる。鳥俯瞰で見てこの映画の世界では主役とその他大勢ではなく、誰もがそれぞれ主人公なのだ。

冒頭の博物館のシーンは、人が鳥を見ているようで、実は鳥が人を見ているという暗示なのだろうか。

イリヤ・レーピンの『トルコのスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック』という絵画は11年かけて描いた巨大な作品で、今では世界遺産の一部となっています。アーティストとして世界遺産を目指すという、自らの表現を限界まで突き詰める姿勢に影響を受けたようです。

映画に込められたメッセージとは?

3人の死が描かれていますが、そこに恐怖はなくまるでコメディのようです。「人間にとって死は恐怖ですが、それを覆すかのように面白おかしく死を表現したかった。」と監督は語ります。

時代を超えてスウェーデン国王カール12世が現代のバーに立ち寄るシーン、アフリカの囚人たちがイギリス兵によって拷問具に入れられるシーンは、残酷に思うかもしれないが、よく考えてみれば現代でも低賃金で酷使されている人などがいて、時代や形が変わっただけで、僕たち人間のやっていることはあまり変わっていないという人間の本質を訴えている。

この映画は、「私たちは何をしているのだろう? 私たちはどこへ行くのだろう?」と自分たちの存在について思考することを促しています。

人類は愚かだが、それでも一人一人愛おしい、というメッセージを悲喜劇を用いて伝えようとした愛に溢れる映画です。

感想

人々のおかしな人生を微笑ましく見ていると、唐突に残虐なシーンが混ざり、人間の愛おしさと愚かさの両極端な感情の間を行ったりきたりとさせられました。

映画のグレイッシュな色彩は生まれ故郷のスウェーデンに由来しているような気がします。日本や北欧はグレイッシュ、南国はビビットな色使いをしますよね。私も太陽の少ない北陸育ちなのでグレイッシュな色合いの方が好きです。

映像美に謎の中毒性があり、ハマる人はとてもハマる映画だと思います。(私はハマった。)

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