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居場所を探しに

久しぶりにでた外。
11月とは思えないほどの強い日差しに思わず目を細める。

久しぶりにつけたアイシャドウがスマホに反射してキラキラ光って、周りの雰囲気と不釣り合いだなと気づく。

みんなブラウンとかオレンジ系の秋の装いをしているけど、私は気にせずお気に入りのスカートをひらひらさせて歩く。

日差しはあるけど、風はやっぱり冬の匂いがする。外の木々が赤い色をしている。もうすぐ冬がくるのだと実感する。

慣れた駅でも、渋谷までの道は久しぶりだから少し迷うかと思ったけど、大丈夫。足が覚えてる。

平日の朝は会社や学校に行く人でごった返している。みんな泣きそうな顔をして、重い足取りで歩いている。

ゆっくり歩く私を煩わしそうに抜いていくサラリーマン。朝から身なり完璧なお姉さんが私の横を足早に歩く。

頭がまだふわふわしていて、起きているのか夢なのかわからないけど、確かに私はここにいる。他人の中にいる自分を客観視して、自分がいることを認識する。

ひどく時間が経っていた気がするけど、外に出てみると実際はそんなに時間が経っていないことにも気づく。

何も変わらない街。たくさんのビルとたくさんの人。いつもと同じ空。いくつもの車が行き交い、信号が青になるとたくさんの人が横断歩道を渡る。

相変わらず汚い街だけど、かつては毎日遊んでいた街。合コンやデート、クラブや通っていた美容院。道を通りながら、なつかしさを感じる。

渋谷にいると誰もが目的もなく歩いているように感じる。私みたいに、ただあてもなく歩いているのではないかと。
誰かのことを求めて。行くところもなくて。居場所を見つけに。なんとなくそういった人たちが渋谷に集まっている気がしている。

かつて私が大好きだった人とよくきていた道玄坂のホテル街の前を通る。ホテルの外観は何も変わってない。きっと中身もあの頃と同じなんだろう。彼の後ろをついて歩くかつての私の後ろ姿が見える。

私はあの頃となにか変わっただろうか。歳を重ねて、少し大人になったと思うし、見た目も歳をとったとは思う。でも、やっぱり何も変わっていないような気がする。

寂しい。安心したい。居場所が欲しい。今もずっと思っている。

昔も今も、私はここに目的もないまま歩いている。

人がたくさんいるところに来れば、誰かに私の存在を認めてもらえるような気がした。

でも、やっぱりこの街にきても寂しさは埋まらない。

他人の中の私をみても、昔の私を想像しても、結局私の心にある穴は何も埋まらない。

やっぱりここに居場所はなかった。

私は歩いてきた道を引き返した。さっきよりも早い足取りで。少し目線をあげてみたら、渋谷の空は季節外れのように青かった。

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