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理学療法士がオススメする「はじめての在宅介護」で必要な福祉用具とは
理学療法士とは、身体に障害のある人に対して、運動療法を用いて自立した日常生活が送れるように支援する、リハビリテーションの専門職です。
簡単にいうと動作の専門家であり、私も日々多くの患者さんのご家族や介護スタッフに対して、介護や介助指導、福祉用具等のアドバイスなどを行ってきました。
特に最近は、コロナの流行による病院や施設での面会制限により、
会いたいときに会える「在宅介護」を選択する人が多くなった印象があります。
そこでこの記事では、理学療法士としてオススメする
「はじめての在宅介護」に必要な福祉用具をご紹介していきます。
福祉用具を準備する前にやるべきこと
在宅介護をはじめようと決意し、福祉用具を準備する前に、やっておくべきことをお伝えします。
実際、在宅介護をはじめてみたら、
「この手すりは全然必要なかった」「生活の邪魔になってしまった」
という失敗談をよく耳にします。
在宅介護に必要な福祉用具は、多ければ良いわけではなく、介護される本人(以下、被介護者)のことはもちろんのこと、介護をするご家族のことも考えて準備する必要があります。
最低限、下記の点を事前に確認してから準備するようにしましょう。
⚫️寝室の場所を決める
寝室を中心に被介護者の生活動線を考えながら、福祉用具を配置する必要があります。よってまず一番に寝室の場所を決定していきましょう。
基本的には、寝室は1階をオススメします。
なぜなら、通院や介護する上で楽であることはもちろん、階段は転倒した際に命に関わる重大事故につながる可能性があるからです。
⚫️スペースを確保しよう
介護に必要な物や福祉用具を設置するためにも、まずはスペースの確保が必要です。
例えば、電動ベッド(標準サイズ=幅83〜100cm×長さ190cm程度)を設置する場合、6畳程度の広さが必要とされており、ベッド周りに杖歩行の方で40〜60cm程度、車椅子利用の方で1m以上空けられると良いとされています。
スペースがあると被介護者が動きやすく、転倒の可能性が低くなるとともに、介護をするご家族の身体的ストレスも軽減できます。
⚫️自宅の採寸をしよう
寝室や廊下、トイレのなかなど、今後被介護者が自宅に戻った際に使うであろう場所を可能な限り採寸しておきましょう。
福祉用具を選ぶ際に、自宅に設置できるのか、窮屈にならないかも判断できます。
⚫️退院前にリハビリスタッフや看護師からアドバイスをもらおう
退院前に病院でリハビリ見学を行い、動作能力の確認を行いましょう。
また、介護や介助方法の指導や準備すべき福祉用具のアドバイスをもらってください。
例えば、被介護者がひとりで歩ける能力があるのに、手すりを自宅全体に取り付ける必要はありません。
手すりを設置する場合、どこに必要かなど専門家から話を聞けるいい機会です。
病院によっては、退院前に自宅に訪問し指導を受けることも可能ですよ。
⚫️介護保険を申請し、福祉用具はレンタルしよう
介護保険では福祉用具レンタルや購入のサービスもあります。
私はレンタルが可能なものは、購入ではなくレンタルをオススメしています。
なぜなら、実際自宅で使ってみないと被介護者に合うかわからない場合も多いからです。
よって、まずはレンタルで使用し、ほしいと思えば購入するのがとても良いと思います。
※トイレ用品など、物によってはレンタルできないものもあります。
介護保険とは、高齢で介護が必要となった方を、家族だけでなく社会全体で支えあう仕組みのことです。40歳以上の方は、保険料の納付が義務付けられています。
65歳以上で介護が必要となった場合は、お住まいの自治体に申請し、審査を受け、認定をされれば、その区分にあったサービスを限度額に応じて受けられる仕組みです。
介護保険で受けられるサービスのなかには、手すり等の設置のための費用の約9割支給をしてくれるもの(限度額20万円)や福祉用具の購入やレンタルのサービスもあります。
介護が必要と思われる際は、介護保険の申請をまずは行うことをオススメします。
詳細は、厚生労働省ホームページへ
はじめての在宅介護に必要な福祉用具3選
ここでは理学療法士としてさまざまな介護状態の方を見てきた私が、必要性が高いと感じる福祉用具を紹介していきます。
①電動ベッド
介護が必要となった場合、最初に準備すべきものです。
高機能である必要はないですが、背上げと膝上げ、上下に昇降機能がついているものにしましょう。
なぜなら、電動ベッドを使用することで、体調によって動作能力が変化する被介護者に合わせて、介助することなく起き上がらせたり、座らせたりすることができるからです。
また、介助を行う場合にベッドの高さを上げることによって、介護者は中腰で作業することが減るため、身体的ストレスを軽減できます。
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②手すり(設置式)
介護保険では、レンタル利用ができる設置式の手すりが多くあります。
また種類も多く、玄関、トイレ、ベッド周囲、お風呂用などさまざまです。
設置式の良いところは、工事の必要がなく、置きたいところにすぐ置けることです。
実際、退院後自宅に帰ってきて、生活を行うことで、本当に必要な場所がはっきりする場合も多いため、まずは設置式の手すりをレンタル使用することをオススメします。
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③シャワーチェア
シャワーチェアとは、お風呂の洗い場で使用する椅子のことです。
お風呂場は滑りやすく、温度差もあるため、体調不良を起こしやすい場所です。
しかしながら、介護用ではないお風呂場の椅子は低く、不安定ではないですか?
介護用のシャワーチェアは、座面が高く広いだけでなく、脚の滑り止めがしっかりしており、背もたれや手すり付きのものもあります。
立ち上がりが楽なだけでなく、座った姿勢が安定するので、安全面からも必要な福祉用具です。
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[その他]
歩行補助具やベッド柵も、必要に応じて準備してもらいたいものです。
ただし、日本の住宅は部屋や廊下が狭く、歩行補助具(歩行器や杖)がうまく使えない場合や、ベッド柵も手すりで代用できる場合もあります。
各々の状態に合わせて、まずは介護保険のレンタルを利用してほしいです。
まとめ
在宅介護は毎日続くものです。
よって被介護者も介護するご家族も、身体的ストレスだけでなく、ご家族だからこそ感じる精神的ストレスも抱えやすいです。
だからこそ、うまく福祉用具を利用して、可能な限り被介護者ができることを増やすことや、介助量を減らしていくことが大切です。
今回お伝えしたとおり、介護保険を利用することで、福祉用具は月に数百円程度〜レンタルすることが可能です(物品に応じてレンタル価格は違います)。
介護保険の申請がまだの方は、ぜひ近くの自治体や病院スタッフにご相談ください。
申請の方法を一から教えてくれると思いますよ。