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つぶやき 令和の米騒動と台湾米(再び台湾米②)

(「再び台湾米①」より続く)
 さて、いよいよ「アイラップ」に水とともに入れた台湾米「むすびの郷(さと)」を炊く。正確には湯煎する。

 大きめの鍋にお湯を沸かし、お皿を敷いてからお米入りのアイラップを沈める。皿を敷くのは鍋底の熱が直接に伝わって袋が破れないようにするため、らしい。インターネットに出回るレシピには「耐熱皿」と書いてあるが、わたしは普通の陶器の皿の中から、袋がしっかり収まりそうな形のものを選んで敷いた。

 レシピの多くは火加減と加熱時間を「中火、お湯がぐらぐら沸騰する状態で30分くらい」とある。しかしわが家のIHヒーターの中火では「ぐらぐら」以上になるし、そこまで強火の必要はない気がしたので、「ぐらっ」程度の中弱火の感じで、蓋をして約30分加熱した。

 加熱を始めて15分くらいたつと、お米が膨張して、米粒と水だった中身が固体に近づくのがわかる。加熱ムラがないよう途中で袋をひっくり返してもみた。鍋があまり深くないせいもある。レシピには、お湯が減ってきたら足すように、というアドバイスもあったが、幸い最初に沸かしたお湯で最後まで加熱できた。

 30分後。アイラップの口を開くと、お米にはしっかり火が通り「ご飯」になっていた。「むすびの郷」のパッケージに書いてある「ほのかな香り」もある。蒸らすために中身をしっかりほぐす。なんか「いい感じ」だ。炊飯器で炊いたときのボソボソ感があまりない。レシピには「そのまま10分ほど蒸らす」とあるが冷めてしまいそうなので、袋の口をもう一回閉じて再び湯煎の鍋に戻した。もちろん火は止めてある。

 10分後、アイラップを再び開いてできあがったご飯をお茶碗によそう。炊飯器で炊いたときよりしっとりしている。口に運ぶと、しっとりふっくら、甘みもあり、はっきりと「おいしい」。炊飯器で炊いたものとはまるで違う。ただし、おいしいご飯の表現としてよく使われる「ツヤ」はない。密閉して湯煎したからか、もともとそういう品種なのか。

 そういうわけで、台湾米「むすびの郷」は、炊飯(加熱)方法次第でとてもおいしくいただける――本領を発揮する――ことがわかった。今回は湯煎だったが、方法によっては同じように、あるいはよりおいしく食べられるかもしれない。

 いっしょに食べたツレも「たしかにこっちのほうがおいしい」と言い、「台湾でよく売っている日本の昔の電気釜みたいな炊飯器だと、もっとおいしく炊けるのかもね」と付け加えた。昔の電気釜みたいな、とは「大同電鍋」のことだろう〈298〉。大同電鍋にはずっと関心があるが買うには至ってない。次はふつうの鍋で炊いてみたい。

 ここでわたしはまた思い至った。わが家の炊飯器と「むすびの郷」の相性が悪いのではないか。わが家の電気炊飯器は鋳物で比較的高機能、蓋の密閉度と強力加熱に特徴がある。銘柄米でなくてもかなりおいしく炊きあがるので信頼してきた。しかし炊いてきたのはすべて日本米だった。

 高圧・高温下での加熱は、「むすびの郷」には向かないのかもしれない。台湾のゆったりした空気や植生、人びとの行動のように、ゆるやかに加熱してあげるのがいいのかも。ちょっと視点を変えられたおかげで、気づきの多い食卓になった。

〈298〉大同電鍋は台湾で1960年発売、もとは東芝が技術供与か技術提携したと何かで読んだことがある。台湾では炊飯はもちろん、蒸し物、煮物、炒め物などにも使われている(らしい)。オン・オフスイッチぐらいしかなく、内部ヒーターが一定温度に達すると電源が切れる、といういたってシンプルな構造のため逆に用途が広いようだ。シンプルな機能ゆえか販売当初の外観を踏襲しており、ある年代以上の日本人には懐かしく感じられるだろう。何年か前から日本でも販売しているが、少ない容量でも6合炊きと、現代の日本人のライフスタイルにはちょっと合わない気がする(現地にはもっと小型のものもある)。
《参考》大同電鍋(日本)公式サイト>大同電鍋


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