セルフリノベーション6つの手順
先日、co-baネットワークを主催する株式会社ツクルバの提供するwebラジオ企画で、出演の依頼があった。
募集しているのは知っていたのだけど、渋谷のベンチャー企業の面々と肩を並べて(その時点では出演者はわからないので、あくまでもイメージだが)、なんとなく恐れ多い気がして、手をあげることはしなかった。
ところが、運営者から依頼があったので、それならばと受けることにした。
実はちょっとやってみたい気持ちもあったのだ。
内容についていろいろ考えたが、マヌケな話をするのは避けたい。
やはりこんな時、頼りになるのは専門(建築)の知識だ。
とりわけ、セルフリノベーションという分野は、同業者でも取り組んでいるのは一部と思われるので、プレゼンのテーマとしては(こういう表現は適切かどうかわからないが)ブルーオーシャンに違いない。
そんなわけで、テーマは「こうすればうまくいくセルフリノベーション」というようなものにした。
ここには、多少の追加変更を加えつつ、その内容を書き留めておく。
それは6つの手順からなる。
1.ラフに計画する
通常、改修工事ほど、工事のボリュームに対して、図面を多く描くことになるのだが、セルフリノベーションにおいては、最小限にする。
なぜなら、流動的に工事をすすめるためだ。
セルフリノベーションの利点は、その流動性にある。
細かいところまで描くと、計画、デザインが硬直化するし、変更をすれば無駄になる可能性もある。
平面図は最低限必要だが、断面図や立面図は書かずに、見切り発車する。
ただし、平面図もないと、計画が全くないことになってしまうので、それはよくない。
計画が必要ないわけではない。
そして、出来れば余剰空間を残しておくことだ。
特に空き家のリノベーションだと、必要以上に大きいスペースが得られることがある。
通常、余剰空間を作るということは、新築や、家賃の高いスペースでは難しい。
その利点は、大いに利用すべきだ。
2.残し方を考える
古い建物を完全に新しくしてしまうと、面白くない。
例えば、昔の看板などは、看板屋が手書きで描いたものであったりして、見る人が見れば味があるらしい。
過去の職人の手業で、現代では再現できないものがある。
そういった部分は積極的に残すべきであり、新築物件との差別化にもなる。
新しいものにわざわざエイジングを施して、古く見せることもあるが、本当に古い物には及ばない。
ただし、残し方にはセンスを問われるところもある。
場合によっては「若い人」に見てもらうという方法も考えられるだろう。
例えば、co-ba kamaishi marudaiには、3,40年前に流行った、模様の入った型ガラスがある。
僕らの年代からすると「ダサい、古臭い」としか思わないのだけど、研修でやってきた大学生が「ガラスがおしゃれ」と言っていて、目からうろこが落ちたことがある。
平成生まれの若い人から見れば、40年前のものでも見たことがないのだ。
3.テーマを決める
第1項の平面計画と同様、最低限の計画は必要で、デザインのテーマは決めたほうがいい。
壁に塗る色を決める時、家具や照明器具やインテリア小物を決める時など、テーマがあれば迷うことが少なく、ちぐはくになりにくい。
例えば北欧風、ブルックリン風、モダン和風など、流行のスタイルテーマでもいいし、もう少し抽象的なナチュラルとかシックとかポップというテーマでもいい。
もちろん、自分で考えて、オリジナルなものを作ることも可能だ。
co-ba kamaishi marudaiの2階を表現するなら「ポップ和風」のような言葉が当てはまるかもしれない。
なんでもいいが、その言葉を手掛かりに、全体と細部を組み立てていく。
重要なのはテーマを言語化し、それを最初から最後まで守ることだ。
4.あるものを使う
空き家のリノベーションの場合、以前のオーナーの使っていたものが残っていることがある。
そういうものは、可能な限り使っていきたい。
ただし、取捨選択は必要になる。
その手掛かりになるのは、前項のテーマだ。
テーマにそったものであれば使うし、そってないものは思い切って捨てるか、売れるものは売ってしまう。
場合によっては、手を加えることで、テーマにそうものに作り替えることも出来ることもある。
例えば、テーブルの天板やドアに貼ってある、木や石の模様が描かれた化粧板などは、テーマに合わない可能性が高いが、塗装することでリメイクすることが出来る。
また、クラウドファンディングや、DIYのワークショップを実施して、支援者がいる場合は、支援者から家具などをもらえることもある。
この場合も、使えるものは出来るだけ使いたいので、塗替えなどを考慮に入れつつ、工夫して使っていきたい。
sofo cafeでは、近くの工場に積み上げられている、不要な木製パレットをもらって、壁の飾りにしたり、テーブルの部材として使ったりもしている。
こうして、近くで手に入るものを利用するのは、デザインの観点のみならず、リサイクルや運送エネルギーの削減にもなり、一石二鳥だ。
また、すぐ近くの浜で拾った流木や、もともと庭に生えているあじさいのドライフラワーもsofo cafeやco-ba kamaishi marudaiのインテリアに使用している。
このように、この項目については、枚挙にいとまがないが、キリがないのでこのへんにしておく。
5.汗をかく
家具、インテリア、什器、電化製品など、今は安い物ものもある。
アイリスオーヤマの商品や、ニトリ、IKEAの家具、100均で買えるインテリア雑貨。
ネット通販もとても便利だ。
でも 安易に使ってしまうと、デザインが台無しになってしまう可能性がある。
家具なども出来るだけDIYで作ったほうがいい。
でも難しいものももちろんあるし、時間もかかってしまう。
そこで優先順位を次のようにする。
DIY→中古品(もらえるものを含む)→新品でも足で探す(通販、実店舗ともに)→安いものにひと手間くわえたもの
DIY、中古品は言うまでもないが、新品でも足で探すということは、出来るだけテーマにそったものを探すということ。
そして、安い物にひと手間くわえるというのは、前項同様、塗り替えたりして、テーマにそったものに作り替えるということ。
つまり、いずれにしても、ある程度の時間と労力を使う、汗をかくということだ。
100均で買ってもいいが、そのまま使うと空間のグレードが下がってしまう。
でも、ひと手間くわえることで、それを防ぐことができる。
6.足し算する
建物を改修してみるとわかるが、どこかを綺麗にすると、手を付けなかったところが気になってくる。
セルフリノベーションでも、当然、同じ現象が起こる。
「ラフに計画する」のは、そのためだ。
気になるだけではなく、「もっと良くしたい」と欲が出てくることもある。
こうしたところには、順次手を加えていく、これを「足し算デザイン」と呼んでいる。
足し算デザインは「あるものを使う」ことでもある。
計画段階ではなかったものが、リノベーション工事中に手に入ったり、知らなかったインテリアの手法、商品が見つかることも少なくない。
新しく得たものはどんどん取り入れて、つぎ足していく。
また、(店舗であれば)オープンしてからも、棚を追加したり、まだ塗っていなかった部分を塗り替えたりする。
他の店舗で見て真似をしたいことも出てくるかもしれない。
仕上は100%でなくてもよく、90%で追加できる余白があってもいいのだ。
新築の建物なら、完成した時がピークで、だんだんと劣化していくものだが、足し算デザインはピークということがなく、ずっとどこかが新鮮な状態を保つことが出来る。
さらに、足し続けることで、どこにもないオリジナルなものが出来上がる。
仕事を依頼されたインテリアデザイナーは、計画を始めてから店舗が完成するまでの時間しか「足す」ことができないが、セルフリノベーションなら完成後にも、ずっと足し続けることが出来る。
これは、より人を居心地よくさせるインテリアを作るために、とても有利なことだ。
以上6つの手順に従えば、統一感があり、オリジナリティもある、雰囲気のいい空間を作ることが出来るとがわかった。
自制心は必要かもしれないが、難しくはないノウハウだろう。
セルフリノベーションの際に、参考にしていただければと思う。
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