見出し画像

仲見世はハックニー?

リノベーションまちづくりについて、僕が解説するのは誰かの受け売りでしかないので、今まで積極的にはしてこなかった。

しかし、釜石大観音仲見世のリノベーションに関して、地元の人に知ってもらうには、自分で書いたほうがいいのかもしれない。

全国のリノベーションの事例を見れば、法則があることがわかるはずだ。

まずゲストハウス、シェアハウス、シェアオフィス(コワーキングスペース)、そしてカフェなどが空き家の多い地域に作られる。

それを始めるのは「アーティスト」や「クリエイター」と呼ばれる人たち。

本当のアーティスト(芸術家)やクリエイター(生業としてしている)の場合もあれば、そういう気質の人の場合もある。

僕のような建築士がはじめることもある。

建築士もそれらの気質を持った人の職業のひとつだろう。

人の気質というものは、どれぐらいあるのかわからないが、クリエイターやアーティストの気質を持った人は、社会の大半を占めることはなく、どちらかというと少数派なのではないかと思う。

それらの気質を持っていない人は、決定的に持っていないし、統計調査をしたことはないが、肌感覚では持っていない人がほとんどだと思う。

リノベーションによるまちづくりには、ほぼ例外なくこれらの気質の人が関わっている。

一方で最初に出来てくるものには、そのわりに個性がないのが不思議で、だいたい似通ったものが出来てくる。

それがゲストハウス、シェアハウス、シェアオフィス、カフェなのだ。

それらに吸い寄せられるように、飲食店や、物販店などが周辺に集まってくる。

最初の段階を過ぎると、主役はアーティストやクリエイターではなくなり、より商業的、大衆的な様相を呈してくるのだろうが、まだそこまで行っている地域は、日本ではあまり見たことがない。

海外ではそのような地域に人口が増え、商業地としても魅力が高まって地価や家賃が上がり、最初に集まったアーティストたちが出ていかざるを得なくなったという話も聞く。

ということはつまり、海外でもリノベーションまちづくりが行われているということだ。

海外でも実績のある、普遍的な法則ということになる。

今年の3月、工事前のsofo cafeに海外からのボランティアが来てくれた。

いろいろな国の人がいたが、イギリスから来た人が「ここはロンドンのハックニー地区に似ている」と言った。

ハックニー地区はスラム街だったのだが、ある時からアーティストが集まりはじめ、今ではカルチャーの発信地になっているという。

最近、メディアの取材や、他地域から視察に来る人に「なぜ何年も釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクトの活動を続けてこられたのか」と聞かれることがあるのだけど、それは言ってしまえば、この法則を知っているからに過ぎない。

アーティスト(クリエイター)が集まる→感度の高い人が集まる→店が増える→感度が普通の人も集まってくる→住む人も増える→町がよみがえる

最近気が付いたが、この法則というのは、実は郊外のショッピングセンター周辺も似たような流れで町が作られているのではないだろうか。

何もなかった郊外にショッピングセンターが出来ると、周辺に店が集まってきて、生活に便利なその近くに住宅地の開発がはじまり、人口が増えて学校まで出来たりして、地価が上がってくる。

最初にショッピングセンターが出来るか、アーティストが集まって来るかの違いだけで、その後は、似たような流れになる。

そう考えると、味気ないような気がすることもあるが、一方で進んでいる道に確信が持てるところもある。

釜石大観音仲見世には、去年シェアオフィスco-ba kamaishi marudaiが出来、今月sofo cafeが出来た。

来月にはゲストハウスあずま家がオープン予定だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?