しおひがり棟の軌跡③ 2階に風呂を作ってはいけない
しおひがり棟には雨漏れをはじめとして、さまざまな問題があったが、もっとも憂うべきは1階のトイレだった。
原因の一つは後から増築したと思われる、屋外の風呂だ。
屋外の風呂といっても露天風呂というわけではない。
しおひがり棟は、2階へは屋外鉄骨階段をのぼってアクセスすることになっていた。
1階は店舗なので、住居部分である2階には専用の出入口、つまり玄関がある。
鉄骨階段を昇りきった正面に風呂があり、左手が玄関という配置であった。
脱衣場はなく、玄関からいったん外に出て(裸で?)、浴室に入るという奇妙な動線計画である。
そのことから考えても、後から付け足したものであることがわかる。
風呂の1階は倉庫になっている。
この倉庫が1階のトイレの窓を含んだ外壁を、屋内にしてしまっていた。
(以下、閲覧注意)
窓は真っ暗な倉庫とつながっているだけで、光も入らなければ風も通らない。
さらに問題だったのは、2階の風呂から水漏れがおこっていたことだ。
僕は、この倉庫と風呂は解体し、風通しをよくして環境改善することにした。
また、風呂の柱と屋根を残し、屋根付きのバルコニーにしようと考えた。
そして、この辺りの工事はDIYでは難しいので、施工業者に頼んでいた。
トイレの解体が始まると、恐ろしいことが分かった。
長年にわたる水漏れのせいで、柱や梁がシロアリに食われ、ほとんど消滅していた。
部分的にシロアリに食われているのは古い家のリノベーションでは普通のことだが、なくなっているというのは初めて見た。
シロアリに食われた部分は、取り替えればいいのだが、全くないというのは、ちょっとした衝撃だ。
柱や間柱だけでなく、外壁のモルタル下地の木摺り(きづり)も消滅していた。
これでは建物が傾き始めても不思議ではない。
なんとかギリギリ持ちこたえていたような状態だった。
柱は新設してもらい、梁も下から補強してもらった。
次に倉庫と、風呂の解体が始まったのだが、鉄骨の柱も錆びて、途中で寸断されたような形になっていた。
さらに2階の柱(木)は1階のトイレと同じように全くなくなっていた。
どちらもモルタルの外壁でもたせていた形だった。
モルタルの外壁を解体すると、2階の床も崩れてしまうというので、急遽、鉄骨でに補強してもらうことにした。
もちろん見込んでいなかったので、追加工事である。
出費が増える…
2階の屋根を残す計画は、柱がなくなっているので、無理だということになり、屋根も解体することになった。
屋根付きの半屋外バルコニーは幻となってしまった。
風呂の床だった部分には、下から柱を4本追加して、手摺をつけてもらった。
木の柱があれば、木工でDIYするつもりだったのだが、柱がなくなったので、鉄骨で作ってもらうしかなかった。
釜石大観音仲見世の商店街は、ほとんどがしおひがり棟と同じように、屋外階段で住居にアクセスし、風呂も2階にあることが多い。
そして、おそらくほとんどの家で、水漏れが起こっていると思われる(天井をみるとしみがあるのでわかる)。
2階に風呂を作るのは、建物の維持管理上、あまりよくないようだ。
しおひがり棟は、風呂を撤去したことで、かなり状態がよくなったのではないかと思う。
作り直したトイレも、倉庫を解体したことで、窓から光と外の空気を入れられるようになった。
前投稿の雨漏れも含み、このようにして一つ一つ環境改善をしていったのだった。