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みやざきミライ史2024-2124について
こんにちは、公共とデザインの石塚です。わたしは、「多様なわたしたちによる新しい公共」を目指し、企業-自治体-住民と共に社会をつくりあげている一般社団法人公共とデザインという団体を主催しています。今回、宮崎市制100周年記念若者ミライ提言事業では、宮崎市から委託を受け、プロジェクト全体の計画と運営を行いました。
宮崎市制100周年記念若者ミライ提言事業についての概要はこちらから🔗
100年後の宮崎の「こうだったらいいのに」を、いまの若者たちが考える
宮崎市内の高校生・大学生・大学院生30名が取り組む、宮崎市のミライを考える約半年間のプロジェクト。市制100周年という節目に、これからの世代を担う若者たちが主体となって、まちの価値や魅力を探究してきました。
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このプロジェクトでは、参加した学生それぞれの「気になる・面白い・興味がある」を起点とし、過去100年で培われてきた宮崎の資源・文化・生活を掘りさげながら、目に見えない宮崎の価値について探究。そこから見えてきた宮崎の価値をもとに、このさき100年後、自分たちにとって「望ましい未来」とそこに「到達するために”今”必要なこと」を提言としてまとめ、1月12日に宮崎市で行われた市制100周年記念トークイベント『宮崎のミライを語る』@宮崎市民文化ホールにて、来場者の約1800人に向けて発表します。
なぜ「みやざきミライ史2024−2124」という名前?
宮崎市制100周年という節目に始まったこのプロジェクト。プロジェクト運営チームでは当初から、宮崎の過去100年とこれからの100年をつなぐプロジェクトにしたいと考えていましたが、プロジェクト名に悩んでいました。
プロジェクトを進めていく中、学生たちが宮崎の人々から過去の話を聞いたり、街を歩きながら自分たちなりの視点をおもしろがったり、イベントで宮崎市に暮らす人たちと会話したり…。学生たちが活動をしている姿を見るなかで、彼/彼女たちの「今ここ」での活動や日々の生活もまた、100年後には「歴史」として積み重なっているのではないか、と。
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そこで、プロジェクトに参加している学生、宮崎に住んでいる方、通勤通学している方、なにかしらのかたちでこれまで宮崎に関わってきた人たち。一人ひとりが刻む時間や活動、そして当たり前にそこにある日々の暮らしが未来にとっての歴史を作っていくのだ、という意味を込め「みやざきミライ史」というプロジェクト名が決まりました。
プロジェクトのススメかた
今回プロジェクトでは、高校生1年生から大学院1年生までの異なる世代が混ざり合った6つのチームを編成。それぞれのチームの「問い・仮説」をブラッシュアップしながら、で宮崎市の価値を探っていきました。
大事にしたのは、「まずはやってみる」実践的なアプローチ。実際に手を動かし、普段の学生生活の延長上では関わらない別の世代や様々な仕事をされている宮崎の人たちと対話をしてみる。
実際の行動で得られた経験や気づきを通じて生まれた「もっとこうしてみたい」「これが面白そう」を楽しみながら、「今まで当たり前だと思っていたけど、こんなものが生活にあったらいいのにな」「自分がこれまで感じてたこういうところが宮崎の価値なのかもしれないな」を具現化。これらを発展させながら、イベントでの企画を計画して実行してみたり、提案につなげていきました。
\POINT/
🌟慣れ親しんだ宮崎を、色んな人の視点で見つめ直す
🌟個人の興味に紐づいた、「こうだったらいいのに」の宮崎の未来を考える
🌟プロジェクトを通じて、宮崎のいろいろな人と対話してみる
これまで、こんなことをやってきました
全8回のワークショップ、イベント出展・発表4回、街の人へのインタビュー21人
全8回ワークショップと3回イベント出展を通じて、学生たちは自分たちなりの視点で宮崎の未来を考え、かたちにしました。その成果は、市制100周年記念トークイベント「宮崎のミライを語る」での最終発表へとつながっています。こちらの記事では、発表に至るまでに学生たちがどんなことをやってきたのか、その一部を紹介できればと思います。
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ワークショップ
ワークショップでは、個々人の面白い、楽しい感じることとをベースにしながら、宮崎の目に見えない「価値」の探索していくプロセスを行いました。過去・現在・未来を行き来しながら、8回のワークショップを通じて探求を深めました。
DAY1 | 宮崎思い出マップづくり / フィールドワーク①自分の「気になる」を発見する
DAY2 |フィールドワーク②:遊古館 / 宮崎で活躍するたちに話を伺う
DAY3 | 宮崎の人へのヒアリングから、年表を作る
DAY4 | 街市の企画・準備
DAY5 | ミライを想像するワーク「ミライの予言から100年後の宮崎を想像する」
DAY6 | 宮崎市制100周年記念式典ポスターセッションの準備
DAY7 | SMILE MIYAZAKI 100年祭に向けた企画・準備
DAY8 | ミライ提言の準備
非常に濃密な時間で多様なワークを実施しました。やったことすべてを書き連ねるととても文章が多くなってしまうため、ここでは実施した一部のワークを紹介しようと思います。
□ 宮崎思い出マップづくり
自分や家族の思い出を、地図上にエピソードと一緒に貼りました。
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□ フィールドワーク
まちなかを歩いてみながら、気になる写真を撮り、コラージュを作成。
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□ 街の人21名へインタビュー
ずっと地元に住んでる方、UIJターンで宮崎に移住した方、飲食店経営者、起業家、神楽保存の活動をされてる方、伝統野菜を育てている農家さん…。学生たちの「こんなことを聞いてみたい」から、宮崎で暮らすいろいろな方にご協力いただき、お話を伺いました。
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□ インタビューを元に、年表をつくる
街の人へのインタビューした21人分を書き起こし、切り貼りしながら年表をつくりました。
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□ ミライを想像するワーク
100年後に起こるかもしれないミライを想像しながら、眼の前にあるものが、もしもミライの日用品だったら、どんなものなのかを想像してみる。
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イベント出展・発表
ワークショップで深めた問い・仮説を元に、実際に街の人とお話したり、アイデアを試してみる場として、イベントの出展等を行いました。そこでの対話や経験をワークショップに持ち帰り、問いや企画をブラッシュアップするサイクルを重ねました。
街市への出展 | 2024年8月24日
グループごとの「問い」を深めるための実践
一番街・若草通りにて月に1度開催されるイベント「街市」に参加。各グループで立てたはじめの問いや仮説を検証するため、企画をつくりまずは小さく簡易的に試してみました。街市への来場者との対話や体験を通じて、改めて自分がどんなことに興味を持っているのかを深ぼることができました。
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宮崎市制100周年記念式典でのポスターセッション | 2024年10月26日
各チームがみつけた「地域の価値」や「宮崎らしさ」を人に伝える
これまでワークショップや街市での実践などを通じて見出した「地域の価値」や「宮崎らしさ」。記念式典が行われた宮崎観光ホテルの会場前ロビーにて、参加した関係者(議員や著名人、関係者等)の方々に向けてポスター発表を行いました。各チームが設定したテーマに沿って、発見した地域の特徴や、それらを反映した宮崎市制100周年記念イベント「SMILE MIYAZAKI 100年祭」の予定企画についてポスターセッション形式で共有。来場者との対話を通じて、フィードバックを頂きながら、これまでの活動で得られた気づきをさらに深め、新たな視点を得る機会となりました。
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宮崎市制100周年記念イベント「SMILE MIYAZAKI 100年祭」への出展|2024年11月23日
自分たちが感じる宮崎の価値や「もっとこうだったらいいのに」の理想の体験を実践。イベントでの発表・共有、宮崎で生活する人たちとの対話を通じて、新たな価値に気づく
宮崎市制100周年記念イベント「SMILE MIYAZAKI 100年祭」にて、6チームがブースをだし、でそれぞれが企画を実施。来場者との対話を通じて、学生たちは自分たちが考える価値観を発信したり、体験づくりを行いました。
(グループごとの企画についてはぜひ各グループのnoteでどうぞ)
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宮崎市制100周年記念トークイベント「宮崎のミライを語る」でのプレゼンテーション|2025年1月12日
(📝こちらの様子は後日追記します)
このほかにも、プロジェクトの合間には個別の1on1やグループセッション、他地域への視察など、様々な活動を重ねてきました。「何がおもしろいと感じるのか?」「どうしてあなたにとってそれが大事だと感じるのか?」といった問いかけを何度も繰り返しながら、参加学生一人ひとりがもつユニークネスを一緒に探索することができました。
実際にやってみること→そこで得た気づきを深めること→もっとこうしたら楽しそう・良くなりそう。このサイクルをまわす。「自分は何をやりたいのか、どんなことに興味があるのか」という各々の視点からいつも生活している宮崎を捉え直すことで、あらためて目に見えない宮崎の価値を照らし出していきました。
プロジェクトを終えて
明治時代、わずか数戸ほどの農家があった土地をを県庁所在地として開拓した宮崎市。(同じように何もなかったところに県庁所在地があるのは日本では北海道の札幌くらい、だそうです)
そんな比較的な珍しい歴史を持つ宮崎市ですが、ほとんどなにもないところから100年を経て暮らしを積み上げてきた宮崎の方々が育んできた生活文化。生まれた時から住んでいる学生、進学を機に移り住んだ学生、普段は当たり前すぎて気づかない宮崎の街や人について掘り下げていく中で、「そういえばこうだよね」「知らなかったけど、こんなに宮崎っていろいろあったんだ」など、生活の中に埋め込まれた「目に見えない価値」に気づき、あらためて宮崎の良さを知ることができました。
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そのうえで、『次の100年では「こんな光景を残したい」「宮崎の価値を残すために、こんなものがあってほしい」』という提案をそれぞれのチームが行いました。
私自身も、別の場所で暮らすよそ者としてプロジェクトに関わる中で、参加してくれた宮崎で暮らす学生たちと一緒だからこそ見つけられた視点や気づきに触れ、とても楽しい時間を過ごすことができました。
同時にこのプロジェクトは、宮崎の「目に見えない価値」を探索していきながら、学生たちの「こうあったらいい(かもしれない)」をかたちにしていく試みでもありました。参加してくれた学生たちが、自分たちの生活に必要だな・あったらいいなと感じるときになにかちょっとでも新しい一歩を踏み出せたり、進学や就職で宮崎を離れたとしても関わりを持ち続けようと思えたら。そして、「未来は自分たちでつくっていくことができるのだ」と少しでも信じることができる原体験の一つになっていてくれたら、と願っています。