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茄子

嫌いなもの
苦手なもの
出来ないこと…
数えたらいくらでも出てくると思うけど。

時には、敢えてそこに頭から突っ込んでみれば、
今まで知らなかった新たな世界が広がっていることもある。

私にそんなことを教えてくれた存在
それは、茄子。


いつから嫌いだったんだろう
なんで嫌いになったんだろう
正直、そこら辺のことは覚えていない。

〝嫌いな食べ物は?〟

そう聞かれたら、〝茄子〟と答えていた。


学生時代、初めてのバイトはスーパーのレジ担当だった。
夕方ちょこっとバイトに行く日と、土日に丸1日バイトする日があった。
土日の時は朝からバイト。
昼になると、お惣菜担当のパートさん達と一緒になることがよくあった。
お店の中でお弁当やおやつ、好きなものを買って食べていたけど、余ってしまいそうなお惣菜なんかをパートさん達はよく〝これ食べて~〟と持ってきてくれた。

そんなある日だった。

いつものように〝これ食べて~〟と差し出されたのは、茄子の揚げ浸しだった。

私は固まった。

しばらく手を付けずにお弁当を食べていた。
が、
〝今日は茄子が多くて多くて!遠慮しないでどんどん食べてね!〟
と、薦められる。

嫌いなんです。食べれないんです。そう言ってしまえば、それで終わること。
なのに何故かその時はそんな言葉が出せなかった。

いつもいつも、本当の娘のように接してくれるパートさん達。
そのパートさん達を前に、私は断るということが出来なかった。

ならば、食べるしかない。

別にアレルギーがある訳じゃない
死ぬ訳じゃない

1つなら…

意を決して1口食べた。

あれ?…美味しい?
待って!!茄子って、こんなに美味しかったの?!

衝撃が走った

ウソみたいにパクパク茄子を食べていた。


それからというもの、スーパーで茄子を買って食べる、という日々が訪れた。
自ら茄子を買う日が来るなんて夢にも思わなかった。


人生の中で自分が経験出来ることって、限られてる。好きなこと、楽しいこと、そういう感情が沸く方へ動くことはもちろん幸せなことだけど。

なんだか最近つまらないなぁ。
そんな時は思いきって
嫌いなこと
苦手なこと
出来ないこと
そんなことに挑戦してみたり。

自分はそんなに興味なかったことでも、
家族や友人や、身近な人の興味に付き合ってみたり
えいっと飛び込んでみたりすると
刺激を受けられて面白いなって思う。

〝ほんのひとかじり〟
それが私の世界を面白くする、
ちょっとした習慣になった。






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