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miyayou
2019年4月3日 22:20
プロローグ「おい、そっちじゃないぜ」と早瀬は言った。「整備室はこっちだ」と彼が指差した先には、客の流れから外れた場所に、飾り気のない事務的な灰色のドアがあった。窓から差し込む夏の日差しに焼かれた灰色のコンクリートに、そのドアは同化しているように見えた。僕の手には、最新の画像認識プログラムが入ったメモリーがあり、彼の手にはセキュリティカードがあった。僕たちは、この会場の五百人の観衆の中に潜む未来