アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険
マルコ・ポーロが『東方見聞録』を発表したのと同じ頃、行ってもいない東方世界の旅行記を著した稀代のペテン師ジョン・マンデヴィル。
その息子アーサーは、世に出るのを厭い、苔と羊歯の庭いじりを唯一の喜びとしていたが、ある日教皇から呼び出され、亡き父の書に記されたプレスター・ジョンの王国を探すよう命じられる。
「ありもしない王国を探しに行くなど、人生をねずみの餌にくれてやるようなものだ」。
不満たらたらのアーサーに同行するのは、柄の悪い傲慢不遜な修道士と書物好きで夢見がちな弟。たよれる武器は、蝿を遠ざけることのできる指輪のみ。果たして、一行は王国を見つけることができるのか。
驚異と笑いに満ちた奇想天外な旅へ、いざ(しぶしぶ)出発!
これを書いていたのは、ちょうど新型コロナが流行しはじめた2020年。旅に出られなくなって仕事ができなくなったので、これをチャンスととらえて、ずっと書きたいと思っていた奇譚の執筆に勤しみました。
昔から好きだった『高丘親王航海記』や『ガリバー旅行記』さらには『船乗りクプクプの冒険』など、ふしぎな世界を旅する物語を目標にしつつ、これまた大好きな西洋中世の奇譚を参考にしながら、創作していきました。
本書巻末に参考文献の一覧をつけていますが、なかでも強い影響を受けたのが彌永信美『幻想の東洋ーオリエンタリズムの系譜』で、もし小説を読んで中世西洋人から見た東方世界に興味を持たれたなら、この本を読んでみるといいかもしれません。
今回初めて長編の小説を書いたわけですが、ふしぎなもので、書きはじめてみると、当初は予定していなかった(つまり自分の構想になかった)つながりが生まれてきて、深い意図なく書いた小さな表現が偶然後半の布石になっていたり、思わぬところで話が繋がったり、なぜこんなに調子よく話が組みあがっていくのかと自分でも驚くことがありました。
小説を書くってそういうものなんでしょうか。結構、ふしぎな体験だったので、そのうち解説記事をアップしたいと思っています。
題して「私はどのようにして初めての長編小説アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険を書いたか」とか。
超超超ネタバレになるので、有料で公開しようと思います。なので本書を読んでいない人はぜひ買わないでください。
どうぞよろしく。