小笠原 ボニンブルーの休日(2)透明度30メートルの海に浮かぶ
小笠原の海の青さは、ボニンブルーと呼ばれる。
沖縄やミクロネシアの青さとどう違うのかわからないけれど、ものすごい透明度なのは一目瞭然。そのボニンブルーの波を蹴立てて、まずは父島のすぐ南西に位置する南島へ向かった。
この島には扇池というビーチがあって、その景観が面白い。岩に開いた穴から海水が打ち寄せ、扇のように広がる白く美しい砂浜を形成している。
ビーチそのものは小さく、浅いうえに荒い波が入るから、泳いだり潜ったりするには適さないけれど……と思ったら、古見君が潜っていた。
ええっ? こんなビーチで?
「シシマイギンポっていう小さな魚が、岩から顔を出してて、これがかわいいんですよ」なんて言ってうれしそうだ。私は景色のことしか頭になかったのだが、こんなところでも魚に迫るとは、さすが水中写真家である。
星野さんが砂の中から妙な生き物をすくって見せてくれた。スナホリガニといって、丸っこい背中がユーモラスなヤドカリの一種だ。常に後退して砂に隠れようとする臆病者っぷりがかわいい。なんだかいろんな生き物がいるじゃないか。
んんん、こんなところで一日遊んでいたいぞ。
しかし、南島上陸は、自然環境保護のため2時間以内と決められている。最後に丘に登って箱庭のような美しい島の全景を眺めたあとは、再び海に出て、いくつかのポイントで潜ることになった。
古見君はミズタマヤッコや、オビシメといった小笠原の固有種もしくはそれに類する魚を撮影したいらしく、星野さんにポイントを教えてもらいながら、次々と潜っていく。
一方の私はシュノーケリング専門である。ボートの周辺でプカプカ浮かんで過ごした。
海中を覗くと、驚異的な透明度のおかげで、深い海の底まで太陽の光が射しこみ、なんだか荘厳な雰囲気。まるで青い大聖堂でも見ているかのようだ。さしずめ自分は、空から降臨する天使だろうか。ふと見れば、大きなカメが私の下を泳いでいった。
楽し過ぎるじゃないか、小笠原。
このあとも、兄島の海中公園でサンゴの森を探索したり、島の洞窟を泳ぎ抜けたりと、われわれはひたすらボニンブルーを堪能した。
つづく
「Scapes」2014.6月号