小笠原 ボニンブルーの休日(4) ウミウシでいっぱいの洞窟
次の日も海へ。
古見君は、朝早くからすでに一本海に出て、念願のミズタマヤッコを撮影してきたらしい。次はオビシメだと息巻いている。
私のほうはシュノーケリング専門だから、どこに出かけても面白い。水深のあるところではダイナミックな水中景観を楽しみ、浅場では岩やサンゴの隙間に生き物を探す。
西島の洞窟に入ったときは興奮した。
洞窟は幅7、8メートル、高さ地上20メートルぐらい、水面下も同じぐらいの縦に長い穴で、奥行きは30メートルぐらいあっただろうか。中にボートを停めて潜ってみると、岩壁に多くの生き物が付着していた。
イロウミウシや、コイボウミウシを見つけて喜んでいると、古見君がニセイガグリウミウシを発見して私に見せてくれた。黄色い体に白いツブツブがかわいい。「深いところはウミウシいっぱいですよ」
私はシュノーケリングの身軽さ気楽さを愛する者だが、こういうときだけはダイビングがうらやましい。
それでも、私は私なりにウミウサギという貝を見つけ、そのビロードのような外套膜をじっくり観察して楽しんだ。ぐにゃぐにゃした海の生き物はやはり見ていて面白い。こういうところに来たかったのだ。
古見君はついに弟島でオビシメを見つけたようだ。体に帯を締めたような模様があることからそう呼ばれる魚で、星野さんによれば、派手さはなく注目する人はあまりいません、とのこと。ガッツポーズをする古見君を横に、私も写真を見せてもらったが、普通の魚にしか見えなかった。もはやカラフルな熱帯魚だけでは満足できない、魚マニア古見君ならではのガッツポーズであった。
つづく
「Scapes」2014.6月号