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ガザの「日本地区」と、米国がトランプ政権だからこそ日本はパレスチナ国家承認を

 ガザ南部のハーン・ユーニスに「日本地区」と呼ばれるところがあることはあまり知られていないだろう。日本の援助で建てられた学校や保健所、住宅が集中するところだ。2012年から昨年3月までハーン・ガザの子どもたちは日本の支援への感謝と東日本大震災の被災者との連帯の思いを込めて凧揚げを行っていた。

https://www.merryproject.com/activity/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A%EF%BC%81%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%90%8C%E6%99%82%E5%87%A7%E3%81%82%E3%81%92%EF%BC%81/


 UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)渉外・広報局の新田朝子さんによれば、ガザの子どもたちは日本の文化である折り紙や俳句なども学び、また釜石市の子どもたちのアイデアによって竹の植林も行っていた。竹には「強さ」「不動」などの花言葉もあって、ガザの子どもたちに強く生きてほしいという願いも込められていた。残念ながらそのハーン・ユーニスはイスラエルの攻撃によって大半が破壊されていることだろう。

 パレスチナ国家創設に言及する日本のパレスチナ支援は、イスラエルを支援する米国、またイスラエルとは明らかに異なる道を進んでいた。ところが、こうした日本の姿勢が強調されなくなったのは、日本政府や日本の政治家たちの米国への遠慮や配慮があるからだろう。パレスチナ和平に関する日本の主体性があまり強調されなくなった。

「ハマスのテロ攻撃を非難する」としか言わなかった首相・外相 https://digital.asahi.com/articles/ASRBT61YNRBSUTFK00N.html



 イスラエルはハーン・ユーニスの日本地区を攻撃して破壊し、かつては日本のODAで建設したガザの空港も完全に破壊したこともあった。日本国民の税金が台なしにされているわけだから日本政府はイスラエルに対して明確に非難の声を上げるべきだろう。

 日本の声は当然だが国際世論の力となり、公正な姿勢はアラブ・イスラム諸国などグローバルサウスからも評価されることになる。

 かつて日本には政治家たちが明確にパレスチナ支援を口にする時代があった。田中角栄首相は、1973年の第四中東戦争による石油危機の際に、イスラエルは1967年の第三次中東戦争において占領した地域からの撤退を実現すべきである、日本政府はパレスチナ住民の合法的権利を認め、その尊重を行うなどの声明を1973年11月に出した。石油の確保が目的だったとはいえ、パレスチナの民族自決権に明確に言及した政治家だった。

 ヨーロッパのスペイン、ノルウェー、アイルランド、スロベニアがパレスチナ国家を承認し、国連に加盟している193カ国のうち147カ国がパレスチナ国家を承認した。

 イスラエルはパレスチナ人の民族自決権の基礎となるパレスチナ人の土地を奪い続け、入植地拡大を継続している。パレスチナ国家承認は、イスラエルとパレスチナを合わせた地域(イスラエルは「エレツ・イスラエル」〔イスラエルの地〕と呼んでいる)をイスラエルだけが支配するという発想や、イスラエルの入植地拡大を抑制する役割を果たすことになる。国家の主権を侵害してはならないことは国際法の常識だし、国際司法裁判所も7月にイスラエルの占領や入植地拡大を国際違法だと断じた。

 当事者間の交渉を通じた『二国家解決』を支持する日本政府はパレスチナ国家を承認していない。イスラエルにパレスチナ国家を承認する姿勢や様子がないだけに「当事者間の交渉」というのは無責任な響きすらもっている。
米国はトランプ政権が誕生することになったが、米国に追従して日本がパレスチナ国家承認を行わなければ、半永久的に承認の機会を失うことだろう。米国はトランプ政権の一期目に時代、イスラエルの一国支配を事実上認め、テルアビブにあった米国大使館もパレスチナが首都と主張するエルサレムに移転してしまった。日本政府が交渉の当事者と考えるイスラエルのネタニヤフ首相は昨年9月の国連総会で、パレスチナ全域がイスラエルの領土であることを示す地図を見せた。イスラエルにはパレスチナ国家を承認する意図などまるでない。

【パレスチナ・ガザ地区】自民党・国際協力調査会で意識調査結果を発表しました https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=4328



 石破首相は、ガザに関する人道外交議連の会長だった。私は、この議連の勉強会にはほとんど出席したが、やはりほぼ全出席だった石破首相にはガザの人道危機がいかに深刻か当然よくわかっている。政権の維持で忙しいだろうが、政治の師である田中角栄氏と同様に、外交では民族自決権を根拠とするパレスチナ国家承認を含めてガザ問題を最優先するようなつもりで取り組んでほしいと思っている。経済的に、あるいは米国の武器市場として日本を考えるトランプが、日本がパレスチナ国家を承認したことで、日本と疎遠になることは考えにくい。国際法の常識など一顧だにしないようなトランプの時代こそ日本が筋を通せば、アラブ・イスラム諸国、グローバルサウスなど多くの国際社会の信頼を得られる良いチャンスだ。

横浜市議会 https://jcp-yokohama.com/archives/30969

表紙の画像はガザ
ハーン・ユーニスで
日本と連帯するパレスチナの少女たち
https://www.unrwa.org/japan70th/kites-of-hope-2023〜ガザ地区の子ども達から、日本の被災地へ/

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