アジア的共存の価値の象徴としてのシルクロード
「世界遺産・絹の道、東へ続け 日韓『ルート延伸を』」という記事が2016年3月8日に朝日新聞に掲載された。
2014年、「シルクロード」の一部が「長安・天山回廊の交易路網」として世界遺産に登録されたが、同記事によれば、日本に至る「シルクロード」を世界遺産にしようとする動きは、日本では現れていないという。
現代のような「国境」という障壁のない古代の交易路は、人間社会の共存システムとして機能するものでもあった。
東西の異なる文化圏も「シルクロード」によって連結されていた。このシルクロードは、その名の示す通り中国の絹がヨーロッパに輸出されるのに利用された交通路であったが、今から2000年余り以前に、中国から、インド、中東、黒海地方を結ぶ通商ルートとして確立された。
日本の奈良正倉院には「白瑠璃碗(はくるりのわん)」というイランから伝来した宝物がある。日本もイランなど西域とつながっていた(『漢書』西域伝ではイランも「西域」に含められている)。現代の日本でもイランのラスター彩の芸術を高めていった人間国宝の加藤卓男氏(1917~2005年)のような人物が現れた。
シリアでは、2018年の時点で700万人近い難民が国外に流出した。日本などアジアならば欧米諸国やロシアのように、暴力に対して即座に空爆で報復、撲滅などという発想には至らないだろう。
インドのガンジーは、「暴力は何も解決しません。愛、お互いを信頼する心、理性が問題を解決します。みんなが共存することが大事なのです」と語ったが、異質な文化・価値がいかに共存していくかは、シルクロードによっても伝えられたアジアの伝統的価値観にあるように思う。
アイキャッチ画像はウイグル風景
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