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トランプに激しく抵抗し、イスラエルの空爆を受けるガザ市民への共感を強調するメキシコ大統領
メキシコのシェインバウム大統領は、トランプ大統領と高関税の措置を1カ月遅らせることで合意したと発表した。米国で乱用が社会問題となっている合成麻薬「フェンタニル」の米国への密輸を防ぐため、米国との国境にメキシコ兵を配置するなどの措置をとることを約束したことで、トランプ大統領は納得したようだ。シェインバウム大統領は米国への対抗措置を訴えると同時に「理性」を強調し、米国との交渉を重視していたが、シェインバウム大統領の努力がいったんは実を結ぶ形となった。
トランプ大統領は外国製品に高関税を課せば、国民は米国製品を買うようになり、米国企業や米国経済が潤うと考えている。しかし、米国に代替になる製品がなければ米国民は高い輸入品を買わざるをえなくなり、シェインバウム大統領が主張するように、米国に深刻なインフレを起こす可能性がある。
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トランプ大統領はメキシコから入るフェンタニルを問題視しているが、彼の1期目政権時代、米軍はアフガニスタンのケシ栽培を著しく増加させた。アフガニスタンのケシの栽培農地はトランプ1期目政権時代の2017年には前年比で63%も増加した。結局、アフガニスタンのケシ栽培への無策も世界の健康を損なうことになり、アフガニスタンで生産された大麻樹脂はカナダにも多くもち込まれ(厚労省資料などによる)、それが、トランプ大統領が問題視するカナダからの麻薬の流入問題にもなっている。
メキシコ初の女性大統領のシェインバウム大統領は、昨年10月の就任の翌日、「イスラエルが現在行っている侵略を非難する」と発言した。また、彼女はパレスチナ国家がイスラエル国家と同様に承認されなければならないと語り、パレスチナ国家の承認こそがガザでの暴力を終わらせる方途だと訴えた。さらに、シェインバウム大統領は、ガザ情勢がレバノンやシリアに飛び火する懸念があることを強調したが、その後の展開は彼女が危惧した通りになった。
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シェインバウム氏は2008年12月から翌年1月にかけてイスラエルがガザを攻撃すると、メキシコシティの新聞「ラ・ホルナダ」の編集者に宛てた手紙の中で次のように語った。
「私のユダヤ人の出自、メキシコへの愛、そして世界市民のように感じているからこそ、私は正義、平等、友愛、平和への願望を何百万人もの人々と共有している。したがって、国家の爆撃のイメージを恐怖でしか見ることができない。パレスチナの民間人の殺害を正当化する理由はない。何も、何も、何も、子供の殺害を正当化することはできません」
メキシコもチリに同調して、イスラエルがガザ地区でジェノサイド(大量虐殺)を行っているとして、国際司法裁判所への南アフリカの提訴に昨年5月に参加した。
メキシコはパレスチナ問題でイスラエルに対して厳しい姿勢をとっている。2021年、5月27日に国連人権理事会はイスラエルが空爆を行ったガザについて、人権侵害状況について調査委員会の設置を盛り込んだ決議を採択したが、メキシコはこれに賛成票を投じた。イスラエル外務省はメキシコ大使を直ちに呼びつけて説明を求めた。
メキシコがパレスチナに共感するのは、ラテンアメリカが「米国の裏庭」とも形容されるほど、米国によって主権が踏みにじられてきたという歴史と無関係ではなく、イスラエルに軍事的に支配されるパレスチナに自らの姿を重ねているのだろう。メキシコでもBDS運動は広がりを見せ、ヨルダン川西岸・ゴラン高原に工場をもつメキシコのセメント企業CEMEXの占領地からの撤退を求めている。
メキシコのアラブ系移民の中で特に多いのがレバノンとパレスチナからの移民で、19世紀から20世紀にかけておよそ10万人のアラブ系移民があった。
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2014年7月から8月にかけてイスラエルがパレスチナ・ガザ地区を攻撃し、2000人以上の犠牲者が出る事態になるとメキシコシティでは、人々がパブロ・ネルーダ(1904~1973年)の詩「そのわけを話そう」の一節を叫びながら抗議の声を上げた。
悪党どもは 祝福をたれる黒衣の坊主どもを従え
悪党どもは 空の高みからやってきて 子どもたちを殺した
街じゅうに 子どもたちの血が
子どもの血として 素朴に流れた
山犬にさえ侮蔑される この山犬ども!
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ガザ空爆を推進してきたネタニヤフ首相やイスラエルの極右閣僚たちはネルーダの表現する「悪党」「山犬」ということか。パレスチナ問題で、イスラエルが国際法に違反し、そのイスラエルを米国が支援することも、メキシコをはじめとする「グローバルサウス」が米国を信頼できない要因や背景となっている。メキシコは米国に追随することなく、ロシアへの経済制裁を発動していない。
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