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日本への「道徳的支持者」を増やしなさい 石橋湛山の教訓は現代の国際社会に通用する

 笹山大志「石橋湛山に永田町注目『日本の針路考える』 首相や閣僚も研究会参加」(朝日新聞、12月13日)という記事があった。国会には湛山思想を学ぶ超党派の議連「石橋湛山研究会」が23年から活動を続け、石橋の筋が通った勇気ある言論に共感する石破首相などが参加しているという。

石橋湛山研究会 岩屋外相もメンバーなのですね https://www.tokyo-np.co.jp/article/287210


 「保守本流」をつくった石橋湛山(1884年~1973年)元首相の根本的な考えは「日本はかつて誤った道を歩んだ、もうここで誤った道を歩ませてはならない。」というものだったが、防衛費倍増や反撃能力など防衛力強化に傾斜し、米国への追従を優先する傾向がある現在の日本政治にあらためて指針や教訓を与えるものだ。

 石橋は立正大学学長だった時、60年安保反対闘争が高揚すると、学生たちに向かって「今頃勉強している奴はバカだ。デモに参加してこい!」と檄を飛ばしたこともあった。日米安保によって日本が冷戦構造の中で再び戦争に巻き込まれることを石橋は懸念したが、中国を敵視するトランプ政権が誕生する中で米中の対立に日本が不要に関与することなどあってはならない。
石橋は「大日本主義の幻想〈1921年〉」の中で次のように語っている。
「朝鮮・台湾・樺太・満州という如き、わずかばかりの土地を棄つるこにより、広大な支那の全土を我が友とし、進んで東洋全体、否、世界の弱小国全体を、我が道徳的支持者とすることは、いかばかりの利益であるか測りしれない。」

立正大学のページより


 石橋が生きていたら、米国一辺倒の外交になるより、日本の支持者を増やすような外交を重視しなさいと言うだろうが、「大日本主義」「道徳的支持者」と聞いて即座に「大イスラエル主義」を唱え、周辺の国々を攻撃するようになった現在のイスラエルを連想せざるをえない。

 ガザ戦争が始まると、イスラエル兵の肩章に大イスラエルの地図が現れるようになった。その大イスラエルの地図にはナイル川からユーフラテス川まで、イスラムの聖地であるメディナからレバノンまでの地域が含まれ、エジプト、レバノン、シリア、イラク、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン全土、パレスチナの領土が含まれている。この地図がイスラエルの領土的野心を表すものとして、アラブ・イスラム世界の多くの人々の反発を招いたことは疑いがない。


大イスラエル主義を表すイスラエル軍兵士の肩章 https://www.instagram.com/themapspy/p/C8X6CqZSVuO/



 この地図は100年以上前にシオニズムの思想を生んだとされるテオドール・ヘルツルが100年以上前に「エジプトの小川からユーフラテス川まで.」とユダヤ人国家の地理的範囲に言及したことや、1982年にアリエル・シャロン国防相(当時)の顧問だったオデッド・イノンが発表したイノン計画などが背景になっている。イノン計画では、アラブ世界を民族的・宗派的のラインによって分断すべきであることが説かれ、あらゆる種類のアラブの対立はイスラエルにとって有利であり、そこにイスラエル有利な地域秩序をつくるべきであることが説かれている。イスラエルは最近レバノン、シリア、イエメンに侵攻したり、空爆を行ったりしたが、こうしたイスラエルの攻撃が国際法に違反するものであることは明らかであり、特にイスラエルはシリアのアサド政権が保有していた空軍力を徹底的に破壊し、シリア領空の安全を確保し、次の目標であるイラン攻撃への道を開いたと見られている。

正しい発言は日本への道徳的支持者を増やすことになる


 イスラエルは27日、ガザ北部で唯一機能していたカマル・アドワン病院を破壊し、病院長や医師、看護師たちをガザ南部に強制的に移動させた。これも「大イスラエル主義」政策の一環で、イスラエルはガザ北部からパレスチナ人たちを追い出し、そこをイスラエルが支配し、イスラエル人が居住する地域にしようとしている。

 2024年、イスラエルはシリアのゴラン高原非武装地帯への侵入やガザ北部のジェノサイドなどで「大イスラエル主義」の目標を進めたかのような印象があるが、イスラエルの国際的孤立はいっそう深刻になり、イスラエルの不利益はさらに明白になった。トルコはイスラエルとの年間70億ドル(1兆100億円余り)に上る貿易を停止すると5月に発表した。

 イスラエルに対するBDS(ボイコット、投資撤退、制裁)運動は、国際司法裁判所がイスラエルの国際法違反を指摘したり、また国際刑事裁判所がネタニヤフ首相などに逮捕状を発行したりしたことによっていっそうの弾みを得ることになっただろう。BDSはイスラエルのスポーツ、文化、学術イベントのボイコットを提唱し、イスラエルと「協力」する外国企業への圧力を呼びかけているが、かつて南アフリカが経済制裁によってアパルトヘイトを放棄せざるを得なかったように、イスラエルに深刻な否定的影響を及ぼす可能性がある。イスラエルは世界の道徳的支持者をまったく失った印象だ。国際法を自ら破り、イスラエルの国際法違反を支持する米国は道徳的支持者ではまったくない。

石橋湛山の言葉 大イスラエル主義だった現地住民などからの反発によって長く維持できないだろう http://www.museum.pref.yamanashi.jp/3rd_jinbutsu/jinbutsu06_ishibashi_tanzan.html


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