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古い植民地主義的発想「ガザ2035」でガザ支配の恒久化を図るイスラエル・ネタニヤフ政権

 今年5月にイスラエルの「エルサレム・ポスト」紙はネタニヤフ首相の戦後ガザ地区に関する構想「ガザ2035」を発表した。その構想を表すガザの未来図の中には緑地の中に立つ高層ビル群、ガザ沖合には貿易に使用される船舶が停泊している。2000年代に頭角を現し、世界の貿易、交通のハブとなったUAE(アラブ首長国連邦)のドバイを彷彿させるかのようだ。その構想が書かれた文書には「ゼロからの再建」が強調されている。その言葉にはネタニヤフ首相のガザに関する目標、つまりガザを徹底的に破壊し、その後に新しい都市をゼロから設計するという目標が公然と述べられているかのようだ。

「ガザ2035」は正気の沙汰ではない https://www.youtube.com/watch?v=iO34By5OoUg

 「ガザ2035」は、ガザをサウジアラビアのムハンマド皇太子による構想であるNEOM(ネオム)と連結し、ガザに湾岸地域からのエネルギーと原材料を供給し、地中海沿岸の工業生産センターに転換するというものだ。

 この構想は植民地主義の流儀をそのまま踏襲するものだ。原材料がガザにもち込まれ、ガザの富は流出する。原材料はガザの先住民であるパレスチナ人の安価な強制労働によって商品化され、その富は土地を占領する主体であるイスラエルが手にすることになる。19世紀後半、欧米列強は植民地に工場を建設して、現地の安い労働力を使った安価な商品生産を行おうと考えていった。こうした構造は、19世紀以前にも欧米ではプランテーション経営にすでに見られ、16世紀にポルトガルのブラジルでの砂糖生産から始まり、インドのデカン高原ではイギリスの綿工場向けの綿花の栽培が現地農民を労働力を通して行われた。米国南部の綿花プランテーションも独立後の米国の経済運営に貢献した。イスラエルのネタニヤフ政権が構想するのは、19世紀後半の第二次産業革命で重化学工業が発達してからの植民地における現地住民を使った工場経営の形態だ。

ガザ北部はリゾート、南部は工業地帯になっている

 重化学工業とは、鉄鋼・造船・機械などの重工業と、石油などを加工する化学工業を合わせた呼称であり、第2次産業革命では石油も次第に使われるようになった電力が主な動力源となった。イスラエルが湾岸の産油国とガザを結びつける構想はまさに欧米帝国主義が構想した重化学工業の形態そのものだ。

 ガザには昨年10月7日以前、36の病院、12の大学などまったく十分ではないが、社会インフラが存在していた。それを「ゼロからの再建」とネタニヤフ政権が形容するのは、イスラエルがガザをことごとく破壊し、その再支配を構想し、ガザの住民を追出すか、労働力として使役できる場合は強固にコントロールすることを意図している。ネタニヤフ首相が構想するガザの再建は、もちろんイスラエルのための「再建」であって、ガザ住民のためのものではない。イスラエルがビジネス利益を目的とするこの新しい「地域貿易・エネルギー拠点」でガザ住民たちは、安価な労働力を提供することになっている。

戦争犯罪人のネタニヤフ 24年9月26日、ニューヨーク https://www.dailysabah.com/opinion/columns/the-artificial-belief-of-alliance-with-israel

 「ガザ2035」にはパレスチナ人の主体性に注意や関心などまるでなく、イスラエルの安価な労働力と天然資源へのより簡便なアクセスを構想するものだ。この構想がパレスチナ人の民族自決権などまったく度外視するもので国際法に違反するものであることは言うまでもない。サウジアラビアの「NEOM」にもプロジェクトに伴う政府による土地や家屋の接収に対する強い反発があり、その反対運動の指導者であるアブドゥル・ラヒーム・フワイティ氏がサウジ軍によって「テロリスト」として20年4月15日に射殺された。フワイティ氏は、サウジ北西部の紅海に面するフライバの町を拠点とするフワイタト部族の有力者だった。イスラエルによる「ガザ2035」は、サウジアラビアのNEOMよりも大規模に、より多数の人々の土地や家屋を接収し、彼らの生活を破壊するもので、占領地住民の保護を内容とする国際法の観点からも到底受け入れられるものではない。


パリでイスラエルのレバノン攻撃を非難する人々



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