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ヨルダン川西岸が「ガザ」のように破壊される? ―ニューヨークで売買されるパレスチナ占領地の不動産物件

 国際社会のパレスチナについての関心はガザでのハマスによるイスラエル人人質の解放と、パレスチナ人政治犯の釈放に向かいがちだが、1月19日にガザ停戦が発効した直後、イスラエルはヨルダン川西岸を破壊し、住民の難民化をもたらす軍事作戦を、西岸のジェニンなどで開始した。

ジェニンに侵攻するイスラエル軍戦車に投石するパレスチナの少年たち 23日 https://www.dawn.com/news/1893962/israel-prevents-return-of-palestinians-to-west-bank-camps


 イスラエル軍はガザ停戦が発効したわずか2日後の1月21日から国内情報機関シンベトとの共同の対テロ作戦「鉄の壁」を開始したと発表した。イスラエルの拡張主義イデオロギーである修正シオニズムのイデオローグ、ウラジミール・ジャボチンスキーは、1923年にアラブ人に対してユダヤ人は絶対的な「鉄の壁」を構築してアラブ人の攻撃を断固退けることを唱えた。ネタニヤフ首相は、このジャボチンスキーの考えに従うように、ヨルダン川西岸での「治安」を徹底的に強化するという目標を明らかにし、また極右のスモトリッチ財務相も、ガザとレバノンに続いて西岸でのテロを根絶すると訴えた。

 ジェニンでは、「ジェニン旅団」などのパレスチナの武装組織が活動しているが、ハマスもジェニンのレジスタンスに支援を与える考えを明らかにした。ジェニン旅団は、「侵略する占領軍」と対決し、積極的に銃撃戦を繰り広げると訴えている。

ジェニン旅団 生活に希望がなければ軍事的抵抗しかないだろう https://mondoweiss.net/2023/07/west-bank-dispatch-the-pa-moves-to-tighten-the-noose-on-the-resistance/


 OCHA(国連人道問題調整事務所)によれば、1月21日以降、ヨルダン川西岸北部でのイスラエル軍の軍事作戦は水と衛生のインフラに深刻な被害をもたらし、何万人もの人々の清潔な水へのアクセスを困難にし、公衆衛生上の懸念を強めている。極右のイスラエル人入植者たちは、セルフィート県ヤスーフ村で約155本のオリーブと果樹の木を伐採した。

オリーブの樹を伐採するイスラエルの極右入植者 https://english.wafa.ps/Pages/Details/128617


 イスラエル軍の軍事作戦は拡大し、23日、2002年以来初めてヨルダン川西岸にイスラエル軍の戦車が投入されたが、イスラエルのカッツ国防相はイスラエルがヨルダン川西岸の難民キャンプに少なくとも来年まで駐留する考えを明らかにして、4万人のパレスチナ難民がキャンプに帰還を許可しないように指示した。カッツ国防相はジェニン、トゥルカレム、ヌールシャムスの難民キャンプでは住民がいなくなり、キャンプでのUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動も停止していることを明らかにした。カッツ国防相はイスラエル国防軍が「恐怖の巣」を一掃し、「テロリスト」のインフラと兵器を「大規模に」破壊していると述べた。

 ヨルダン川西岸の人道支援関係者は1967年の第三次中東戦争でイスラエル軍が30万人のパレスチナ人たちをヨルダンに放逐して以来、最大規模の難民が発生していると述べている。イスラエル軍は23日、これまで70人以上のパレスチナ人「テロ工作員」を殺害し、およそ300人を拘束したことを明らかにしたが、幼児や妊婦も含む民間人も「誤って」殺害したことも認めている。

イスラエル軍のジェニン攻撃 2月2日 https://www.middleeasteye.net/news/israel-destroys-neighbourhoods-jenin-camp-hospital


 ジェニンは古代から発展した街で紀元前14世紀のエジプト新王国の一連の外交文書であるアマルナ文書でも言及されている。一部の研究者は、ジェニンは聖書に登場するレビ人の都市エン・ガンニム(ヘブライ語:「庭園の春」)ではないかと推定している。中世には、町は十字軍に占領され、十字軍はそれをル・グラン・ジェランと呼んだ。ジェニンには第一次世界大戦中、オスマン帝国とドイツ軍の基地が置かれ、1948年の第一次中東戦争では、ヨルダン軍とイラク軍の重要な戦闘拠点だった。農業が盛んな地域にあるジェニンは、長い間、地域の主要な流通の中心で、小麦、オリーブ、ナツメヤシ、イナゴマメ、イチジクが近郊で栽培されている。

 ニューヨーク・ブルックリンで18日、ヨルダン川西岸の占領地の不動産物件の内覧会が開かれたが、これに米国の親パレスチナ組織「パレスチナ解放会議アウダ(帰還)」が抗議して、主催者側との暴力的衝突に発展した。この不動産イベントは、ブルックリンのボロパークに拠点を置くイスラエルの不動産会社ゲッターグループ(Getter Group)が主催したものだった。ゲッターグループは、自社のウェブサイトやソーシャルメディアで繰り返しヨルダン川西岸の不動産物件を宣伝している。言うまでもなく、占領地の不動産物件の売買は国際法では違法とされる行為だ。

米国ではヨルダン川西岸の占領地の土地の売買が行われている https://www.cair.com/press_releases/cair-ny-calls-for-ag-probe-into-real-estate-events-across-new-york-state-advertising-sale-of-occupied-palestinian-land/


 イスラエルの極右閣僚ベザレル・スモトリッチ財務大臣は、1月に占領下のヨルダン川西岸における違法入植地建設を加速するための新たな措置を発表し、これまで承認に数ヶ月かかっていた入植地建設許可を毎週行えるような新たな仕組み作りを行い、ヨルダン川西岸での土地接収の拡大とその手続きを迅速に行う考えを明らかにした。スモトリッチ財務相などイスラエル極右はヨルダン川西岸が神から与えられた土地だと主張し、その領有を正当化しているが、トランプ大統領のガザのリゾート化と同様に、国際社会はイスラエルのヨルダン川西岸併合の動きにも厳しい目を向けなければならない。

表紙の画像はジェニンに戦車がやって来た


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