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「関税は最も美しい言葉」と発言するトランプのサイコパス ―関税は欧米の介入の手段であり続けた

 米国のトランプ次期大統領は、「辞書の中で最も美しい言葉は『関税(tariff)』だ」と述べ、メキシコやカナダから犯罪や薬物の流入が止まるまで両国の製品に25%の関税を課す意向を明らかにした。中国の製品にも10%の追加関税を課す方針を示し、関税を交渉のカードに使う姿勢を鮮明にしている。メキシコからの輸入車には200%以上の関税を課す可能性も明らかにし、メキシコに生産拠点を置く日本の自動車企業も米国に生産拠点を移すなどの措置を考えるようになった。外国の製品に高関税を課せば、国民は米国製品を買うようになり、米国企業や米国経済が潤うと考えている。しかし、米国に代わりになる製品がなければ米国民は高い輸入品を買わざるをえなくなり、米国に深刻なインフレを起こす可能性がある。

 関税は歴史上、欧米諸国の介入の手段であり続けた。産業革命によるヨーロッパ経済の拡大は、ヨーロッパ諸国の工場に供給する原料と、その製品の新たな市場を求めさせることになった。地理的に近接する中東や北アフリカは両方の必要を満たす地域で、エジプトとシリアは綿を、またアナトリアとイランはタバコを、さらにレバノンは絹をヨーロッパに供給した。ヨーロッパ諸国は関税も安く設定するように中東や北アフリカ地域に圧力をかけ、またこれら地域はヨーロッパ製品の市場となっていった。

トランプは勝手に関税を引き上げている http://blog.livedoor.jp/hirohiko24-bokepuri/archives/41568401.html


 ヨーロッパ諸国から輸入される商品価値は、中東イスラム世界から輸出される商品のそれを上回るようになっていったため、貨幣価値が下がり、貿易収支の危機が増大していった。たとえば、1844年から1873年までの間、モロッコの貨幣価値は90%も下落した。また中東地域の財政も健全ではなくなり、モロッコやチュニジア、エジプト、オスマン帝国、イランはヨーロッパの金融市場から資金を借りるようになったが、イランを除くこれらのすべての国や地域は財政破綻状態となった。

関税自主権の回復 小村寿太郎は、不平等条約の一つ、関税自主権の改正に取り組んだ。条約締結から50年余り、ようやく自主権を回復することに成功した。 https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005310799_00000



 オスマン帝国の伝統的産業やギルドは、安価な、近代的なヨーロッパ製品の流入によって壊滅的状態になる。近代的な産業を興そうという試みもまた技術や知識、資本が欠如していたこともあって成功しなかった。

アフマド・アラービー https://note.com/naagita/n/n5b75afe43f68


 明治の開国後、日本は欧米諸国によって、治外法権を押しつけられ、関税自主権をもつことができないと、日本人の中には谷干城(たに・たてき:1837年~1911年、第一次伊藤博文内閣の農商務大臣)のように、中東の植民地化された国々に同情をもつ政治家たちも現れた。彼は、英仏の植民地主義に抵抗したエジプトの軍人アフマド・アラービー(1841年~1911年)に敬意を示し、アラービーが流刑になったスリランカにも会いに行くほどだった。谷は政府の欧化政策に反対して、植民地支配を受ける人々に対する同情をあらわにした。アラービーは、反西欧、反オスマン帝国、反ヘディーウ(オスマン帝国からエジプトの支配層に与えられた称号)の立場を明らかにし、立憲制の確立と議会の開設を唱えていた。

アマゾンより



 トランプは、一期政権時代の2018年6月のカナダ・シャルルボワでのG7サミットを前にして、カナダのトルドー首相が電話会談でトランプ政権が高関税を課す理由がどうして米国の安全保障と関連するのかを問うと、トランプ大統領は「君たちはホワイトハウスを焼き打ちしたじゃないか」と答えた。トランプ大統領は1814年に、米英戦争の最中にホワイトハウスが焼き払われことに言及したらしかったが、ホワイトハウスに火をつけたのはイギリスであり、カナダではなく、カナダの建国は1867年のことだった。

 「アメリカ合衆国通商代表部」によれば、シャルルボワ・サミットの前々年である2016年には、米国はカナダから3201億ドル相当の輸出を行ったが、カナダからの輸入額は3076億ドルであり、実質的には米国はカナダに対して貿易黒字状態にあり、高関税の必要などなかった。

 思い込みだけで不正確なことを平気で言ったり、理不尽な措置をとったりするトランプ次期大統領は、その特異な思い込みでエルサレムもイスラエルのものと考えているのだろうが、三大一神教の聖地がある東エルサレムは「占領地」だ。トランプのサイコパスはその奇矯な閣僚人事とともにやはり国際社会の重大な懸念材料とならざるを得ない。

映画「羊たちの沈黙」 https://eiga.com/movie/25151/

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