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ユダヤ教の平和観とイスラエルのガザ攻撃を「ホロコースト」になぞらえたアウシュビッツ生存者
イスラエル軍は制圧したシファ病院からハマスの地下作戦司令室が見つかったと主張したが、司令室の写真を示すことはない。イスラエルが虚偽の理由で病院を攻撃した可能性が高く、アメリカのバイデン大統領も15日、記者会見で「ハマスは、司令部や軍隊を病院の下に隠す戦争犯罪をしている」と主張したが、ないものをあると主張するのは2003年のイラク開戦の時の理屈と似ている。
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イスラエルはこれまでもガザ攻撃のたびに病院や学校でハマスが人間を盾にしていると繰り返し主張し、国連が運営する学校や病院などを攻撃対象としてきた。2009年のガザ攻撃の際も国連が運営する学校からハマスの砲撃があったと主張し、学校への攻撃を正当化したが、戦闘終結後国連が調査しても学校からの砲撃は確認できなかった。それでもなお病院への攻撃を継続することを明らかにしている。
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イスラエルには好戦国家のイメージがあるが、しかしそれは本来のユダヤ人の平和観とはかけ離れている。ユダヤ教が説く平和について元ロンドン・レオ・ベック大学長ジョナサン・マゴネット氏は東京国際大学国際交流研究所のIIET通信(NO 49,2016年3月)の中で次のように書いている。
「ユダヤ教はおおよそ2000年もの間の大半で、異なる文化や宗教的伝統のなかで、いかなる具体的な権力も政治的な力ももたずに、各地で生き残ってきた少数派の信仰として存在してきた。政治的な歴史的結末として、帝国的な権力や野望といった課題や責務に対処しなければならなかった、キリスト教やイスラームの圧倒的な多数派としての文化とは好対照である。搾取と追放に苦しみ、究極的には根絶やしにされるかもしれないという危険を伴ったものの、ユダヤ教徒コミュニティに権力が不在だったことで、他に対して権力を行使したり、法を制定したりして、それを強制するといった現実に直面することなく、平和に価値を見出して平和を説き勧める一種の精神的な自由さがユダヤ人にもたらされた。」
(「宗教間対話と平和的共存に対するユダヤ教の貢献(“Jewish contributions to interfaith dialogue and peaceful co-existence”の邦訳)」
https://www.tiu.ac.jp/iiet/rifs_t/iiet49.pdf
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イスラエルのガザ攻撃はこうしたユダヤ教の平和の価値観とはほど遠い。パレスチナ人という他者に対して強制を伴いながら権力を行使し、命を奪うことすら行っている。
ハージョ・マイヤー博士(1924~2014年)はオランダの物理学者で、アウシュビッツでの収容経験があり、晩年は反シオニズム(イスラエル国家の基盤となるナショナリズム思想)の運動に従事した。世俗的なドイツ・ユダヤ人の弁護士の家庭に生まれ、1938年11月に発生したナチス・ドイツによるユダヤ人排斥暴動「水晶の夜」後にドイツの学校で学ぶことを許されなくなり、オランダの難民キャンプでの生活を余儀なくされた。1944年にナチス・ドイツに拘束され、10カ月間アウシュビッツ強制収容所で生活した。父親はチェコのテレージエンシュタット強制収容所で病没し、また母親はアウシュビッツで自死した。
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戦後はフィリップス電気に雇用され、フィリップス物理学研究所の所長となった。晩年は「国際ユダヤ・反シオニズム・ネットワーク(The International Jewish Anti-Zionist Network :IJAN)」のメンバーとなり、平和運動組織「多様なユダヤの声」の幹部となった。
晩年はイスラエルが「ホロコースト」をパレスチナ人に対する犯罪を正当化するために利用していると非難するようになった。2010年にイギリス労働党のジェレミー・コービン氏に招請された講演会では、空爆などイスラエルのガザの人々に対する扱いをホロコーストにおけるユダヤ人の大量殺害にたとえた。
2010年1月23日、スコットランド・エジンバラのオーガスティン統一教会の講演会で彼自身のシオニズム観を次のように説明し、イスラエル軍が子どもたち、女性、老人を殺害する背景に説得力をもつものだ。
「イスラエルのシオニズムとは、敵は完全に抹殺しなければならないという一種の終末論的見解をもつもので、スターリン主義やナチズムとも同様な見解だ。2009年9月、イスラエルのネタニヤフ首相はイランを攻撃する戦争の口実としてホロコーストを引き合いに出したが、アウシュビッツの強制収容所の犠牲者にシオニズムに共感をもつ者はほとんどいなかったし、また自分が育ったドイツでもシオニズムを支持する者は非常に少なかった。シオニズムはホロコースト犠牲者を代弁するイデオロギーではまったくない。
ユダヤ教とシオニズムは旧約聖書の教えにルーツをもつが、ユダヤ教は宗教であり、シオニズムはイデオロギーである。ユダヤ教はすべての人間は平等であるというヒューマニズムに基づき、それゆえにアメリカやイギリスでも多くの信徒たちが存在する。旧約聖書『レビ記』には『あなたたちの中にいる外国人は、あなたたちの間で生まれた人のように扱いなさい』とある。なぜなら私たちユダヤ人はかつてエジプトで外国人であったからだ。このような輝かしい宗教倫理はシオニズムとは真逆なものである。シオニズムによるイスラエルの『民主主義』はシオニストのためのものであり、パレスチナ人をも対象とする民主主義ではない。政治シオニズムは外国人嫌い、ナショナリズム、植民地主義、人種差別主義の性格をもっている。」
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