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ガザ攻撃の爆弾にサインしたイスラエルのオリンピック柔道家

 8月1日、柔道男子100キロ級で、イスラエルのペテル・パルチク選手が銅メダル、女子78キロ級で、やはりイスラエルのインバル・ラニルが銀メダルを獲得した。会場ではイスラエル国旗が振られ、イスラエル人たちが歓喜に湧いていた。パルチクは「オリンピックの価値を尊重している。最も大切なのは平和だ」と述べたが、パルチク選手の言葉とは裏腹にイスラエルはオリンピック期間中の7月30日にレバノンのシーア派組織ヒズボラの作戦本部トップのファド・シュクル司令官を殺害し、7月31日にイラン・テヘランでハマスのイスマイル・ハニヤ最高指導者を暗殺した。パルチク選手が言うようにイスラエルがオリンピックの価値を尊重し、平和を大切にしているとはとても思えない。

 また、パルチク選手自身もパリ・オリンピックの開会式でイスラエル選手団の旗手を務めたが、ガザに落とされる爆弾に自らのサインを行っている。パルチク選手はウクライナ生まれの入植者で、イスラエルの爆弾の写真とともに、ハマスやISを意識して「私から喜んで(爆弾を)贈ります」とXに書き込んだ。パルチクのこうした振る舞いを知るにつけ、イスラエルのオリンピック参加を認めるのは適切でないと思わざるを得ない。

パルチク選手の書き込み イスラエルの爆弾を喜んで贈ります


 柔道競技では、イスラム諸国の柔道家たちからイスラエル選手を拒絶する動きが見られた。タジキスタンのヌラリ・エモマリ選手とモロッコのアブデルラーマン・ブーシタ選手という2人のムスリム柔道家がイスラエルのバルチ・シュマイロフ選手との握手を拒否し、またアルジェリアのメサウード・ドリース選手はイスラエル選手との試合前に計量を行わなかったが、これは故意にシュマイロフ選手との試合を避けるための行動だったという見方もある。130年の長きにわたってフランスの植民地支配の下に置かれたアルジェリアには、イスラエルの植民地支配に苦しむパレスチナに対する強い同情や共感がある。

 国際柔道連盟(IJF)はプーチン大統領をIJFの名誉会長などすべての役職から解任したが、イスラエル柔道界に対する処分は目下のところ聞かれない。

 パレスチナ・ガザ地区のナガム・アブー・サムラさんはガザの空手チャンピオンで、パリ・オリンピックに出場する可能性もあった。いまは、イスラエル軍に完全に破壊されたガザのアル・アクサー大学で体育学の学士と修士号を取得し、ガザの子供たちに空手で希望をもってもらえるように指導を行っていた。しかし、昨年12月17日にイスラエルの攻撃を受け、一緒にいた妹は死亡、彼女も片脚を失う重傷を負った。イスラエルの渡航許可が下りるまでに時間がかかり、彼女がエジプトの病院に搬送された時は既に遅く、彼女は帰らぬ人となった。享年24歳だった。

 イスラエルによるガザ攻撃によって400人のアスリートが命を落とすなど多数の死者を出し、また、イスラエルの攻撃によってほとんどのスポーツ施設が破壊されたことを受けて、パレスチナ・オリンピック委員会はIOCにイスラエルの参加を認めないように要望書を出したが、聞き入られることはなかった。

 イスラエルのガザ攻撃によって犠牲になるパレスチナのアスリートは後を絶たない。1996年のアトランタ・オリンピックのパレスチナ選手団の旗手を務め、1万メートル走に参加したマジド・アブー・マラヒール(享年61歳)はイスラエルの攻撃で負傷し、6月に医療設備や医薬品の不備のために亡くなった。1月にはパレスチナ・サッカーのナショナルチームのコーチだったハーニー・モサデルがイスラエルの空爆の犠牲になった。3月にはやはり「ハーン・ユーニスの伝説」と呼ばれたムハンマド・バラカトが彼を標的にした空爆で亡くなった。

パレスチナ・サッカーのナショナルチームのコーチだったハーニー・モサデル イスラエルによって殺害された  https://english.ahram.org.eg/NewsParis/515214.aspx


 7月19日、国際司法裁判所は、イスラエルの占領や占領地における入植地拡大が国際法に違反するという勧告的意見を出したが、ガザ地区についても、イスラエルが陸、海、空の境界の管理、人や物の移動の制限を含む、ガザ地区に対する権限の重要な要素を依然として行使することができ、また行使し続けきたという結論を出している。 つまりガザへの実質的支配や、経済封鎖は国際法違反だと国際司法裁判所はその勧告的意見の中で述べ、イスラエルのガザに対する占領的支配は昨年10月7日以来いっそう顕著となったと主張している。

 選手が爆弾にサインし、またパレスチナのアスリートを殺害し、さらに他国の主権を無視して軍事介入を行うイスラエルはやはりオリンピックに参加する資格はない。国際サッカー連盟もロシアのワールドカップやヨーロッパでの対外試合への参加を禁止しているが、国際的スポーツ機関はロシアとイスラエルに対する公平な措置を講ずるべきであることは言うまでもない。

安田さんが言われる通りです。

表紙の画像は日本でイスラエルへの抗議運動に遭いながらイスラエルを擁護するパテル・パルチク
今年3月
https://x.com/JComm_NewsFeeds/status/1774499802765729865/photo/1

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