高石ともやさんの他界と、それでもイスラエルに爆弾を供給する米国の「戦争の親玉」たち
17日、フォークソング歌手の高石ともやさんが亡くなったが、一番印象に残っているのはやはり「受験生ブルース」か。
ひと夜ひと夜にひとみころ
富士山麓にオウム鳴く
サインコサイン何になる
俺らにゃ俺らの夢がある♬
受験生を悩ました(?)三角法の解法は、イラク・バグダードを首都としたアッバース朝時代に、数学者のフワーリズミー(780頃~850年頃)は、サイン、コサインの数値の正確な表をつくり、タンジェント(tan)の数表も初めて作成した。数字の0を含めて彼が発展させた代数学がなければ、正確な数学の解法は存在しなかった。フワーリズミーの業績もイスラム・スペインでラテン語に翻訳されてヨーロッパ各地に広がっていった。
また、高石ともやはボブ・ディランの「戦争の親玉」に日本語の詞をつけた。岡林信康はこの訳を自身のアルバムの中で「さすが師匠!」と絶賛していた。ベトナム戦争の頃、ディランは戦争で莫大な利益を上げる軍産複合体の存在や活動に気づき、戦争が発生するファクターとして、その危険性を認識していた。「戦争の親玉」のリリースが1963年で、ドワイト・アイゼンハワーが大統領離任演説で、軍産複合体の危ういと指摘したのは、1961年1月17日だった。下は高石ともやの「戦争の親玉」の詞の一部だ。訳詞というよりも彼独自の作詞と言えるものだ。
爆弾を作るお前さんたち
壁の影にかくれても
あんたの顔は丸見えだ
おいらの世界をおもちゃのように
ひねくりまわし、ただこわすだけ
いつも隠れて弾が飛んでくりゃ
雲をかすみに逃げるだけ
若者たちに引き金ひかせて
死人の数を数えてる
屋敷に隠れて若者の血は
ただ大地に赤く染み込む
名も付けられずに死んでいく子供
かたわのままで生まれる子供
そんな恐怖を撒き散らす
お前にゃ血なぞ流れちゃいない
https://protestsongs.michikusa.jp/english/dylan/ mastersofwar.htm
いままた米国の軍産複合体はパレスチナのガザ地区で4万人が亡くなっても、イスラエルに武器・弾薬を売却し続けている。今年3月に米国のバイデン政権は、MK48 2,000ポンド爆弾1、800発と、MK82 500ポンド爆弾500発の移転を承認した。2000ポンド爆弾は1000フィート(約305メートル)以上離れた住民らも殺傷させる破壊力を持っているとされる。イスラエル・アメリカによるテロのほうが「ハマスのテロ」よりもはるかに規模が大きく深刻で、切実だ。実際、ガザの犠牲者数はイスラエルが米国など欧米製の威力の大きい兵器を多用するので、ハマスの攻撃によるイスラエル人の犠牲よりもはるかに多い。
BBC(8月19日付)は、イギリスで対テロ戦争の任務についていた官僚が、イギリスがガザ戦争でイスラエルに武器を供与していることは、イギリス政府が戦争犯罪に共謀していると辞職したことを報じた。ガザで多数の人間が死ぬことを予知しながら、それでもイスラエルに兵器を売却することはやはり戦争犯罪だ。
イスラエルのガザでの戦争は米国からの武器の供給なしに行うことは不可能だった。バイデン政権はイスラエルに対して140億ドル以上の軍事援助をイスラエルに与えて、イスラエルはこの軍事援助の資金を使って米国製兵器を買うことが義務づけられている。米国の対する軍事援助は毎年38億ドルだが、これらの資金が自ずと米国の軍需産業を潤すことになる。ロッキード・マーティン、RTX(旧レイセオン)、ボーイング、ジェネラル・ダイナミクス社など米国の大手軍需産業は、いずれもイスラエルのガザ攻撃後に株価を上げている。
高石ともやの詞の続きは下のようになっている。
名も付けられずに死んでいく子供
かたわのままで生まれる子供
そんな恐怖を撒き散らす
お前にゃ血なぞ流れちゃいない
あんたはおいらにきっと言うだろう
世間知らずと、まだ若すぎると
でもひとつだけ言えることは
人を殺すことは許せない
イスラエルは7月中旬の時点で、ガザの子どもたち12,390人を殺害したが、これは2019年から22年までの世界の紛争の犠牲になった子どもたちの数の12,193人を上回った。また、ガザの子どもの10人に9人は成長に必要なだけの栄養を得られていない。
毎日、イスラエルはガザの人々を殺害するので、まるでユダヤ教が殺人を許容する宗教であるような印象すら受けるが、旧約聖書申命記5章17節には「あなたは殺ころしてはならない」と書かれてあり、ユダヤ教でも殺人は明確に禁じられている。いとも簡単に人を殺すのは今のイスラエルが真のユダヤ教の教えから逸脱し、シオニズムと混同する国家主義ユダヤ教ともいうべきものがイスラエルの政治・社会が支配していることの証左だ。