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広島市松井市長「ロシアは対話よりも自分たちの考えを押し付ける」 ―ではイスラエルは?

 昨日もアルバムの中で動画をアップしたが、6月5日の松井一実・広島市長の記者会見で、松井市長はロシア・ベラルーシを招待しないで、イスラエルを招待する理由をフリーランスの記者から尋ねられると、


パレスチナが市を非難 https://x.com/hanin_gaza_jp/status/1811701328349134961

市長)「根拠は言い尽くしてます。国家を評価するんではないわけですから。何を聞きたいんですか?私に。式典が平穏にできるかどうかを判断して、今あえて申せば、対話をする、そういった状況をね、それぞれの国が持ってるかどうかということを、直接ロシアの場合大使から確認したりして、ね?式典がうまくいかない可能性があると思ったから今の状況では招待するのをやめたということを言ってきてます。」


フリーランス)「ですから、その式典がうまくいかないと考えられた根拠をですね、もう少し教えていただけますか。」


市長)「対話をすべきであるという考え方を伝えても、ね。対話よりか自分たちの主張を、ね?他者に押し付けるというか、広島にそういうことを聞けというふうな話しぶりがあったからであります。正直言うと。」

(記者会見の文字起こしは https://note.com/sonoko_miyazaki/n/n01fae6277651 、動画はhttps://x.com/trappedsoldier/status/1812391522698207348/video/2 にある。)

 市長はもううんざりとばかりに、かなり高圧的にフリーランスの記者の質問に答えている。ロシアは他者の言うことに聞く耳をもたぬから式典がうまくいかない危惧がある、だから招待しないとでも言いたげである。記者会見の様子では松井市長こそ人の言うことに耳を傾けない様子だ。

 国際社会の言うことを聞かないのはロシアよりイスラエルのほうがはるかに深刻だ。イスラエルは数々の国連決議に違反し、7月19日に国際司法裁判所がイスラエルの占領や、占領地における入植拡大は国際法違反という勧告的意見を出した。この勧告的意見を松井市長はどう考えるのか。オリンピック停戦の国連総会決議を無視して一昨日もガザのハマスの軍事部門トップ・ムハンマド・デイフを殺害したことを発表した。

同様のことをイスラエルに対しても言わなければ公平ではない

 松井市長などは考えが及ばないだろうが、中東イスラム地域では広島や長崎の原爆投下によるその惨状には深い同情があり続けている。原爆投下などによって国土が荒廃してもなお戦後著しい復興を遂げた日本に対する敬意がある。その広島市が4万人近いガザの人々を殺害したイスラエルを招待することは広島が訴える「平和」の権威を下げ、アラブ・イスラム世界の人々をひどく落胆させるものだ。ガザでは広島の原爆と同様に、武器をもたない丸腰の市民が日々多数犠牲になっている。

 中東研究者の高橋和夫さんによれば、ヨルダンで売られていた地球儀の日本には東京、大阪と広島・長崎の4都市だけの名前が記されていたという。第二次世界大戦後にアメリカの軍事介入を受けたり、アメリカが支援するイスラエルによってパレスチナ人というムスリム同胞が犠牲となったりしてきたアラブ・イスラム諸国にとっては広島・長崎は特別な意味をもっている。

https://x.com/sayoccopu/status/1781368788371566982

 またアフガニスタンで支援活動を行っていた中村哲医師も「世界で一番親日的な国はアフガニスタンだといってもいいでしょう。私たちが国境を通過する時に、外国人は通過禁止となっている時も、日本人だというと、『アフガン人ではないが外国人とは言えない』と通してくれるのです。日本人には特別な感情を持っているようです。どうしてか分かりませんが、彼らが知っているのは、日露戦争、それから広島・長崎の原爆はどこに行っても、どこのお百姓でも知っていました。」

http://www.jca.apc.org/act/nakamurakouen.html

 平和式典にイスラエルを招待して、ロシアを招待しない松井市長のような「ダブルスタンダード」は良好な対日感情をも損なうことになり、日ごろ岸田首相が重視するグローバルサウスからの信頼も得られず、国際社会における日本の影響力をも低下させるものだ。松井市長の判断は被爆者などが戦後営々として訴えてきた平和への想いも傷つけることになる。米国の中東政策に従い、ロシアの戦争は断固非難し、イスラエルの戦争は容認する広島市の姿勢はアラブ・イスラム世界の圧倒的に多くの人々に不快な想いをさせていることは間違いない。



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