ヒューマニズムこそ不正への抵抗手段 ―エドワード・サイード
アメリカのパレスチナ系文学者のエドワード・サイード(1935~2003年)は、アラブ諸国やイスラエルの音楽家から成る西東詩集管弦楽団の設立(1999年)に際して「ヒューマニズムは、人類の歴史を損なう非人道的な慣行や不正に対して私たちが持っている唯一の抵抗手段です。人々の間の分離は、人々を分かつ問題の解決策とはなりません。そして確かに他者への無知は何の助けにもなりません。私たちが共に暮らし、演奏し、共有し、愛してきた音楽にあるような協力と共存が、そのような助けになるかもしれません。」と述べた。
https://themuslimtimes.info/2013/03/16/goethe-the-muslim/
必ず不幸や苦しみが
降りかかってくるものである。
しかし、それを自分の運命として受け止め、
辛抱強く我慢し、
さらに積極的に力強く
その運命と戦えば、
いつかは必ず勝利するものである。 ―ベートーベン
2016年12月に、西東詩集管弦楽団の設立にサイードとともに尽力したダニエル・バレンボイム(1942年生まれ)はベルリンに「バレンボイム・サイード・アカデミー」を創設した。バレンボイムは「音楽こそが、あらゆる異分子を調和へと導く希望の礎です。音楽家は政治に何の貢献もできないが、好奇心の欠如という病に向き合うことはできる。好奇心を持つということは、他者のことばを聞く耳を持つということ。相手の話を聞く姿勢を失っているのが今日のあらゆる政治的な対立の要因です」と述べた。(YAMAHA Web音遊人より)
「好奇心の欠如」はガザでのジェノサイドをひたすら行い続けるネタニヤフ首相やイスラエルの極右政治家たちに言い得る言葉だ。
バレンボイムは「中東紛争(パレスチナ問題)では、国家と軍隊を持つイスラエルに、より大きな責任がある」と述べている。バレンボイムはアメリカのトランプ前大統領によるエルサレムへのアメリカ大使館移転に反対して「まず関係国はパレスチナを主権国家として承認すべきだ」とイスラエル紙に寄稿した記事の中で書いた。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13546186.html?_requesturl=articles%2FDA3S13546186.html&rm=150
バレンボイムが占領政策を「戦略的に誤っている」とするのは、それが長期的には、パレスチナとイスラエルの相互不信の背景となり、いつまで経ってもイスラエルは自国の安全保障に敏感な国であり続け、また力でもって国際法違反の行為を行うことは、イスラエルそのもののイメージを壊し、暴力の種子をまき続けることになるからだ。
旧約聖書に出てくるヘブライ語の「ツェデク(男性名詞、女性名詞はツェダカー)」は「義」を意味し、正義は神の支配の最も根本にあるものであり、神ヤハウェは正しい裁きを行うことによって、虐げられている人、貧しい人、やもめ、孤児(みなしご)など弱者を救済するものだが、バレンボイムの主張はこのユダヤの義を誠実に説くものだ。
平 和
ヤニス・リトソス
大島博光 訳
子供の夢、それが平和だ
母親の夢 それが平和だ
木かげの 愛のことば
それが 平和だ
世界の顔の上の傷口が閉じる持
死者たちが寝返りをうって
自分たちの流した血がむだでなかったと知って
ぐっすりと 眠りにつくとき
それが 平和だ
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