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アラブ諸国はトランプ構想を断固拒否し、パレスチナとの連帯を訴える -イスラエルはアパルトヘイト国家として国際社会で苦境に立つ
2023年10月に始まったガザ戦争によってイスラエル人口の約 7%、つまり50万人余りがイスラエル国外に出たきり戻ってこない。彼らには帰国する様子がないが、またイスラエル国民の約10%は二重国籍者であり、いざとなれば容易に国外に移住できる。また、イスラエルをとりまく安全保障環境が改善、解決されない限り、イスラエルに移住を考えるユダヤ人は減り続けるだろう。
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イスラエルは周辺アラブ諸国に対する兵員の劣勢を補うために、米国から移転されたり、自国が開発したりした優れた軍事技術に依存してきたが、ここ数年、高価な兵器システムを無力化できる安価な新技術が登場し、イスラエル軍を大いに苦しめることになっている。ウクライナ戦争では、ウクライナがごくわずかな費用のドローンを改造して戦車を破壊できることを実証した。遠隔操作のボート型ドローン と誘導ミサイル、および航空ドローンは、ロシア黒海艦隊の旗艦を沈め、生き残った船をウクライナの戦場から遠く離れた港に閉じ込めることに成功した。ドローンで武装したイエメンのフーシ派は、紅海の船舶の航行を大いに停滞させ、イスラエル南部の港湾都市エイラトに本部を置くイスラエル・エイラト港湾会社は倒産した。
※アラブ諸国はトランプ構想に「ノー」
イスラエル軍は危機の際には予備役の大量召集によって支えられているが、予備役の招集によって、ハイテク産業の従事者、教師、工場労働者、オフィス管理者などが本来の業務から離れるようになり、それもイスラエル経済の停滞をもたらした。15カ月に及んだ紛争を経てもイスラエルはガザ地区を掌握することができず、停戦とともに新車のようなジープに乗って民衆に支持されるハマスの戦闘員たちの姿があった。ハマスによるガザ統治は揺るぎそうもない状態だ。トランプのガザ長期保有の構想を受けて、ガザでの戦争は再開され、長期化する可能性が出てきた。戦争が続く限り、イスラエルに移住しようとするユダヤ人は減り、他方イスラエル国外に脱出しようとするイスラエル人は増加し続けることだろう。
※イスラエルの極右閣僚たちのヨルダン川西岸併合計画
悲惨なガザ戦争の様子を見て、アラブ諸国でも国民の圧倒的多数はガザへの同情や共感を強め、イスラエルに激しく反発するようになり、これを見てアラブ諸国政府もイスラエルとの距離をあらためて置くようになった。
トランプ大統領がワシントンでのネタニヤフ首相との会談後、ガザを米国が長期領有することを明らかにし、「サウジアラビアは非常に協力的だ。そして、彼らは非常に協力的だ。彼らは中東の平和を望んでいる。とても単純なことだ」とサウジアラビアの協力について楽観的な見通しを述べると、その数時間後、サウジ外務省は、パレスチナ国家に対する「断固たる揺るぎない」支持の姿勢を強調した。サウジの声明は続けて、「サウジアラビア王国はまた、イスラエルの入植政策、土地の併合、あるいはパレスチナ人をその土地から追放しようとする試みなどを通じたパレスチナ人の正当な権利に対するいかなる侵害も明確に拒否することを再確認する」とし、その立場は「交渉の余地がない」と述べた。
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最も激しくトランプ構想に反対しているのはヨルダンだ。ヨルダンは、イスラエルがヨルダン川西岸のパレスチナ人を放逐するために対ヨルダン国境を開放するならば、イスラエルに対して宣戦布告するとも見られている。ヨルダンは米国から年間14億5000万ドルの経済援助と軍事援助を受けているが、この財政援助の代償としてさらにヨルダン川西岸の100万人のパレスチナ難民を受け入れることになるのであれば、ヨルダンは米国からの援助を断ってもよいと考えている。
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ヨルダン川西岸には宗教シオニストの極右入植者たちが数十万人暮らしている。彼らは武装してパレスチナ人を暴力的に襲撃し、土地を奪ったり、家屋を破壊したりしている。彼らにとってヨルダン川西岸と東エルサレムは古代ヘブライ王国の中心であり、神から与えられた土地である。極右入植者たちの頭の中には民主主義、平和、共存、あるいは国際法という価値観はない。イスラエル極右の存在はパレスチナとの共存を不可能にしているが、このままだと、イスラエルは着実に国際社会で苦境に立たされるアパルトヘイト国家になるだろう。パレスチナ人の抵抗に対処するため、数年ごとに小さな戦争が勃発し、それはイスラエルの卑劣な表現では「芝刈り」ということになる。その結果、ユダヤ人の少数派がアラブ人の大多数を貧困と抑圧の中に留めておく状況が生まれる。イスラエルからの頭脳流出は続き、国際的な正当性も低下し、イスラエル経済の活力は確実に低下することだろう。イスラエルに明るい将来はない。
表紙の画像はトランプ構想を拒絶するヨルダンのアブドラ国王とそのファミリー
夫人はパレスチナ人だ
https://www.newmyroyals.com/2019/12/queen-rania-of-jordan-shared-new-family.html