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戦争をやめろ ―ルイ・アラゴン「平和の歌」とUNRWAへの資金拠出を再開する日本
平和こそが 戦争犯罪人を膝まずかせ
自白するように 余儀なくさせる
そして犠牲者たちとともに 叫ぶのだ
戦争をやめろ
―ルイ・アラゴン(フランスの作家・詩人:1897~1982年)「平和の歌」より
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/blog-entry-1617.html
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アイルランドのマーティン外相は27日、ガザで現在発生していることはあからさまな国際人道法違反であるとして、南アフリカが国際司法裁判所に提訴したことについて第三者として関与していくことを明らかにした。国際司法裁判所(ICJ)は1月26日にイスラエルに対し大量虐殺に該当する可能性のある行為を停止するよう命じる仮差し止め命令を出したが、ビンヤミン・ネタニヤフ首相の政府はこれに反発して事実上無視している。
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マーティン外相は「子どもたちが栄養失調に陥っていること、人口の半数が飢餓に直面していることはまったくの犯罪であり、スキャンダルだ。イスラエルが食料の搬入を制限する必要などない。イスラエルは境界で過剰なチェックを行い、食料輸送を妨害している。」と語った。
ICJは3月28日、イスラエルに対してガザ住民に対して食料、水、医薬品など必要な物資を届けるためのあらゆる方策を講じるように命じる暫定措置を出すなど、ガザの危機的状態は国際社会で広く認識されるようになった。
日本は今年1月にイスラエルがUNRWAの職員が昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃に関わっていたと主張したのを受けて、欧米諸国とともにUNRWAへの拠出金を停止してしまった。UNRWA職員が10月7日の事件に関わったという証拠をイスラエルが開示することはまったくない。日本政府の措置は性急すぎたし、ガザの人道状況を考慮すると、拠出金の停止はすべきではなかった。これに対して、日本の国会では立憲民主党の阿部知子議員や自民党の中谷元議員などが中心になって、資金拠出再開のための超党派の議員たちの勉強会を開催するとともに、政府への働きかけを行ってきた。
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私は、この勉強会の初回の講師を務めたが、27日の勉強会で中谷議員は再開の見通しになりましたよと言ってくれた。自民党に資金再開の働きかけを行ったのは中谷議員で、また昨日29日、ラザリーニUNRWA事務局長を招いた勉強会では阿部議員が人の命を助けるのに、イデオロギーは関係ないと発言していた。裏金問題など日ごろ見聞きするのとは異なる国会議員たちの姿を見る思いでいる。
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国連世界食糧計画(WFP)は18日、報告書を明らかにし、10月7日以前にはガザ住民の急性栄養不良の割合は1%未満だったのが、ガザ北部では現在、2歳未満の子どもの3人に1人が急性栄養不良、あるいは「消耗症」の状態になるという。「消耗症」とは身長に対して異常に体重が軽く、命に危険が迫っている状態だ。
この人道危機の中でもイスラエルのネタニヤフ首相はラファに地上侵攻しようとしている。ネタニヤフ首相を支配しているのは修正シオニズムのイデオロギーで、この思想の創始者のウラジミール・ジャボチンスキーは、「シオニストの植民地化はアラブの先住民とは独立した権力を確立、維持することによって進展、発展させることができる。それは、先住民が突き崩すことができない鉄の壁である。」と語った。ネタニヤフ首相は現在この「鉄の壁」をいっそう強固なものにしようとしているように見える。
冒頭の詩の作者であるルイ・アラゴンはファシズムのイタリア軍の侵攻によってフランス・ニースを去らなければならなかった。イタリア・ファシズムの指導者ムッソリーニは古代ローマを賞賛するとともに、学校ではローマの歴史教育を重視させた。ファシズムは自民族(人種)が他のそれよりも優れていることを喧伝したが、古代ユダヤ王国が支配していたことを根拠にパレスチナ全域の支配を正当化するネタニヤフ首相とその発想はよく似通っている。また、ムッソリーニはヒトラーと同様に反ユダヤ主義を喧伝したが、この二人と同様に、ネタニヤフ首相もまたエレツ・イスラエル(イスラエルとパレスチナを合わせた地域)からのアラブ人の放逐を考えている。
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