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カフィーヤーパレスチナ人の抵抗のシンボル

 ヨルダン川西岸ラマラ(ラマッラー)の調査機関によって行われた世論調査が12月23日に発表されたが、ガザがイスラエルの攻撃によって荒廃したにもかかわらず、ガザのパレスチナ人住民の57%、ヨルダン川西岸82%が10月7日のハマスによる攻撃を支持している。また、ハマスはエルサレムのイスラムの聖地を守り、パレスチナ人の政治犯の釈放のために行動したと思われている。また、この世論調査ではパレスチナ住民の90%近くがパレスチナ自治政府のアッバス議長の退陣を望んでいる。アメリカはガザでの戦闘が終わった後に、パレスチナ自治政府がガザの統治を担うことを望んでいるが、パレスチナ人の民意はアメリカの構想をまったく支持していないことが判明した。パレスチナ自治政府は腐敗と、反対派の抑圧、イスラエルの治安部隊への協力などで評判が良くない。

ヤーセル・アラファト https://www.pinterest.jp/pin/414331234442952308/


 10月7日以来、ヨルダン川西岸でも280人ぐらいのパレスチナ人が殺害された。ヨルダン川西岸のパレスチナ人たちがイスラエルへの抗議活動で正体を隠すのに用いるのがカフィーヤ(クーフィーヤ)という布だ。

 伝統的に東地中海地域のアラブのベドウィンや農民の頭巾などとして使われてきたカフィーヤは、現在パレスチナ人たちの民族的アイデンティティーの一つのように着用され、意識されるようになったが、きっかけは1936年から39年にかけてのイギリス植民地主義への抵抗である「アラブの反乱(Arab Revolt)」にあった。

ベラ・ハディッド https://www.arabnews.com/node/2065521/lifestyle


 「アラブの反乱」はイギリスのパレスチナ統治への反発として起こった。シリアやパレスチナなど東部アラブ地域におけるイギリスやフランスの委任統治支配、シオニストの入植活動に対して武装解放闘争を行っていた聖職者のイザッディーン・アル・カッサーム(1882~1935年)が1935年にイギリスのパレスチナ警察によって殺害されると、アラブの民族感情は新聞、学校、言論界などで煽られて噴出していった。カッサームの運動は民族・宗教感情に訴えるものだったが、このアラブの反英ナショナリズムの高揚を前にして、イギリスは2万人の兵力をパレスチナに送り込んだ。他方、シオニストの民兵組織も1万5000人に膨れ上がっていた。アラブの政党は「アラブ高等委員会」を組織して、ゼネスト、イギリス委任統治政府に対する税の不払い、地方行政府の閉鎖、シオニスト移民の停止、シオニストに対する土地売却の停止、アラブ国家の独立などを訴えた。この「アラブの反乱」に参加する者たちはカフィーヤで顔を隠してイギリス当局の逮捕・拘禁を免れようとし、カフィーヤはイギリスに対する民族的抵抗のシンボルとなった。

ロジャー・ウォーターズ ピンクフロイド https://images.dawn.com/news/1192128


 「アラブの反乱」には隣接するシリアなどからも同調する者たちが現れ、イギリスの施設やシオニストの入植地を襲撃したりしたが、その中心になったのはパレスチナ人(アラブ人)農民たちだった。イスラエル国家成立以前に、イギリスの植民支配やシオニストの移民に抵抗するアラブの民族運動が高揚したことも、アラブ先住民が居住するところにユダヤ人国家建設を認めたイギリスのパレスチナ政策の矛盾が如実に表れている。イギリス委任統治当局はカフィーヤを禁止しようとしたが成功しなかった。

カフィーヤを被る https://www.pinterest.jp/mahera99/palestine-falesteen/


 カフィーヤがパレスチナの民族運動のシンボルとしていっそう意識されるようになったのはPLO(パレスチナ解放機構)の議長であったヤーセル・アラファトがカフィーヤを常用していたからだ。アラファトがカフィーヤを着用していない画像はほとんどない。PLOの中の左翼組織のPFLP(パレスチナ解放人民戦線)も好んでカフィーヤを使用し、PFLPに属し、ハイジャックの女性メンバーであったレイラ・ハーリドのカフィーヤを着用する姿は世界に少なからぬインパクトを与え、パレスチナ問題に国際社会の目を向けさせる効果をもっていた。

レイラ・ハーリド https://www.palquest.org/en/biography/9857/leila-khaled


 1960年代、70年代に、カフィーヤは世界の反戦や反帝国主義、反人種主義運動のシンボルともなり、世界の左翼運動はパレスチナとの連帯の意を示し、キューバのカストロや南アフリカのネルソン・マンデラもカフィーヤを着用したことがある。

 毎年5月11日は「世界カフィーヤ・デー」でカフィーヤを着用して、パレスチナとの連帯を示し、東エルサレム・シェイク・ジャッラからのパレスチナ住民の立ち退き命令、エルサレムやガザでの暴力に対する世界の意識や関心を高めることが訴えられ、スーパーモデルのジジ・ハディッドなどがSNSで呼びかけた。「5月11日」はパレスチナ人の「ナクバ(大災厄)の日(5月15日)」を意識して、パレスチナ人との連帯を念頭に設けられたらしい。

 カフィーヤはファッションとしても意識されるようになったが、ルイヴィトンが販売した700ドルのカフィーヤは、パレスチナ人の植民地主義とイスラエルへの抵抗のシンボルを商業的利益のために用いるのかと反発されている。

ルイヴィトンのカフィーヤ https://www.businessoffashion.com/news/global-markets/louis-vuitton-caught-in-controversy-over-keffiyeh-style-scarf/?fbclid=IwAR24A0XjAryC-WJsxG2e8mcj2DA28omqrQP35lZLyQHJ8hmst7aJxXNWNws


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