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モハメド・アリが強調した非暴力主義
「いかなる理由があろうとも、
殺人に加担することはできない。
アッラーの教えに背くわけにはいかない。」
これは、2016年6月に74歳で亡くなった元ボクシング・ヘビー級世界チャンピオンのモハメド・アリ(ムハンマド・アリー)の言葉である。人種差別のようなアメリカ社会の不正義に憤り、神の前の平等や正義を強調するイスラムに改宗した。
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1960年のローマ・オリンピックのライト・ヘビー級で金メダルを獲得し、1964年にソニー・リストンを破って世界ヘビー級チャンピオンとなった。
1964年頃にはアフリカ系アメリカ人のイスラム組織である「ネーション・オブ・イスラム」の活動に加わった。「ネーション・オブ・イスラム」は黒人が白人社会に統合されることを拒絶し、黒人の「復権」と彼らの経済的自立を唱えた。「カシアス・クレイ」は奴隷の名前だとして放棄し、「モハメド・アリ」と改名した。
自分は「ベト
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コン」とは戦う理由がないとして、徴兵を拒否して、王座をはく奪され、5年の懲役刑の判決を受けたものの、無罪を勝ち取った。56勝して、そのうちノックアウト勝ちが37回、敗戦はわずかに5と圧倒的な強さで、ボクシング界に伝説を遺した。
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1975年に正統派スンニ派イスラムに改宗し、さらに2005年にはイスラム神秘主義の信仰に帰依するようになった。人間の善行を特に重視する神秘主義の立場から暴力的な「イスラム組織」を明確に否定するようになった。
2015年12月にはイスラムには無辜の市民を殺害するような教義がなく、過激主義によってイスラムを誤解するようなことがあってはならないと説き、慈愛や平和の精神を説くイスラムの本質への理解を訴えた。
ロシアがウクライナに侵攻し、またシリア、リビアなどでも紛争が継続してる。世界で発生するテロや紛争、人種差別に対してアリは平和や非暴力、平等の貴重なメッセージを遺した。
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