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米国ワシントンの「ブラックフォーク・ダウン」と、日本の空域は大丈夫か?
米国の首都ワシントン上空でアメリカン航空の旅客機と軍用ヘリ「ブラックフォーク」が衝突し、いずれも近くのポトマック川に墜落した。
ブラックフォークの墜落と聞いて、米軍の東アフリカ「アフリカの角」にあるソマリアへの軍事介入を描いた映画「ブラックフォーク・ダウン」(2001年)を思い出した。
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ソマリアは1991年から内戦状態に入り、国連安保理の決議に基づき、米軍を主力とする多国籍軍・統合任務部隊(Unified Task Force, UNITAF)が編成され、1992年12月に首都モガディシオに展開した。1993年6月にパキスタン軍兵士25人が殺害され、その首謀者と見なされたアイディード将軍を逮捕することを目的にした米軍の作戦が同年10月3日に展開された。しかし、アイディード将軍派民兵組織によって米軍の強襲型戦闘ヘリのブラックフォークが撃墜されるなど、米兵18人が犠牲になると、米軍はソマリアから撤退していった。
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このソマリアでの米軍への攻撃はオサマ・ビンラディンが背後で操っていたと後に米国は訴えるようになった。イスラム系の国であるソマリアからの米軍の撤退は超大国の米国に対するイスラムの勝利と見なされた。そのソマリアでの米軍の敗退を描いた映画が「ブラックフォーク・ダウン」だった。
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トランプ一期目政権発足直後の2017年3月に武装集団アルシャバーブ(青年たち)に対する空爆を強化する方針を打ち出し、17年は38回、また18年は47回の空爆を行ったが、武装勢力を弱体化することにはならなかった。ソマリアでは昨年8月に首都モガディシオにおけるアルシャバーブの自爆攻撃で少なくとも32人が死亡し、今年1月になっても21日、22日に北東部のプントランド地域で、IS系武装集団と治安部隊の衝突で20人余りが死亡した。トランプ1期目政権時代の「テロとの戦い」も効果がなかったわけだ。
暴力によって得た勝利というものは
敗北に等しい。
それはつかの間のものだからである。 ――ガンジー
旅客機と軍用機の衝突事故と聞いて、日本の横田空域のことも思い出してしまった。1都9県にまたがり、東西で最長120キロメートルにまたがり、米軍が管理する広大な横田空域はいまだに日本に返還されていない。
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1975年の日米合同委員会の「航空交通管制に関する合意」は、太平洋戦争後に米軍に与えられた管制業務をそのまま追認してしまった。この日米合同委員会は、外務省の北米局と在日米軍とによって構成され、議事内容も非公開で、どのような経緯で米軍に管制業務が与えられたかも明らかになっていないし、日本の国会も関与することはなかった。とても民主的な手続きを経たとは言えない中で決まってしまったものだが、世界的に見ても外国の軍隊が横田空域のように広い空域をコントロールするケースはなく、日本と同様に第二次世界大戦の敗戦国ドイツでも、米軍の軍用機もドイツの航空法に従い、ドイツの法人が管制を行っている。
横田空域はこれまで8回、部分的な削減が行われてきたが、米国には返還に応じる気配はない。2013年4月の参院予算委で、安倍晋三首相(当時)は横田空域について日本が占領された名残と言っても良いと述べたが、日本の安全保障が米国に頼っていることも指摘し、返還を強く求められないと言いたげだった。
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米国が理不尽に戦争を行ったイラクでさえも、米軍機の発着には事前の許可が必要になっている。これは例外なく、ISとの戦いで攻撃に向かう戦闘機も例外なく許可が求められた。2019年8月にアブドゥルマフディー首相は、戦闘機であれ、ドローンであれ、また偵察目的であれ、イラクの空域を許可なく飛行することは敵対行為であると見なすと発言した。この発言はバグダッド南東にある米軍使用のアル・サドル基地の兵器庫が爆発して、イラク市民一人が亡くなり、13人が負傷した事件を受けてのものだったが、イラク政府は米軍の兵器庫を市街地の外に移動させることを強く求めた。
2017年11月、日本を初訪問したトランプ大統領は、羽田空港ではなく、横田基地に大統領専用機で降り立ち、米軍関係者たちの前で真っ先に演説し、それに兵士たちが「USA!」の連呼で応じた。主権国家に対するトランプ大統領の振る舞いは外交上の配慮に欠いていた。オスプレイも米軍の一存で横田基地に配備されたが、主権国家なら空域の管制権の返還を求めるのは当然ではないか。
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表紙の画像はワシントン墜落事故に関する下のページより