パリ祭と美輪明宏さんが説く愛と平和しかない時
７月１４日は日本では「パリ祭（フランス国民祭）」と呼ばれ、フランスの歌謡であるシャンソンが歌われるイベントなどがある。現在ではシャンソンの人気も知名度も下がり、フランスでもラップのような音楽が流行っている。フランスでは「７月１４日」とも呼ばれる国民の休日となっている。この日は、１７８９年のフランス革命の発端となったパリのバスチーユ監獄襲撃事件が発生し、その１年後の１７９０年７月１４日に建国記念日の式典が行われたことが「パリ祭」の起源となっている。日本では１９３３年に公開されたルネ・クレール監督の映画「７月１４日」が「巴里祭」という邦題が付けられ、それが日本で「パリ祭」という名称が定着した背景だった。
美輪明宏さんはシャンソン喫茶「銀巴里」の専属歌手となり、三島由紀夫や大江健三郎にその歌唱力を絶賛された。美輪さんは「天才方が私の歌に注目してくれました。彼らは、性的少数者（ＬＧＢＴ）である私の存在が、排斥すべきものではないということを社会に対して証明してくださったのです」と語っている。（産経新聞、２０１９年９月１０日）
フランス革命は自由、平等、博愛というリベラリズムの崇高な精神を世界に示したけれども、他方でナショナリズムという世界を混乱に陥れるイデオロギーを世界に拡散することになった。
フランス革命後に成立した人民による国家は、フランスのナショナリズムを高揚させることになった。あらたに成立した国家をまとめ上げるにはナショナリズムほど都合がいいイデオロギーはなかった。国家への貢献、献身を訴えるのには他にイデオロギーがないほどだった。フランス革命はフランスの軍事力を国王から人々の手の中に掌握させた。そして国民に自由や平等の権利を与えると同時に、フランス革命は兵役と納税の義務を課すようになったが、軍事力が飛躍的に伸びたことにフランス国民は陶酔することになり、やがて領土拡張政策に国家の栄光を見出していくことになり、ナポレオンはヨーロッパ大陸制覇を目指した。
美輪明宏さんはこのナショナリズムの考えを否定し、シャンソンで歌われる愛を強調する。「米国のトランプ大統領みたいに、民族主義者で時代遅れの連中に権力を持たせると、とんでもないことを引き起こそうとする。」（毎日新聞、２０２０年７月１８日）
美輪さんはエディット・ピアフの「愛の権利」（作曲：フランシス・レイ）の訳詞も行った。
この地球の常識など 愛の宇宙じゃ小さなもの
どこの国の神も法も 愛を禁じる権利はない
裁くことは出来やしないさ
人が人を愛することは悪ではない罪ではない
男と女が
女と女が
男と男が
年寄りと若者が
異国人同士が愛し合っても
人間同士が愛し合っても
人間同士が愛し合う事に変わりはない
（後略）
美輪さんの歌は
https://www.uta-net.com/movie/142523/
にある。
美輪明宏さんは「美輪明宏『平和への思い』今、伝えたいこと」というサイトの中でウクライナ戦争などを見て、戦争を回避することを考えましょうと訴えている。
こんな世の中を
生き抜く武器は
愛の言葉しかありません
この世のすべての問題を
解く鍵は愛です。
愛があれば
戦争なんか起こりません
ヘルマン・ヘッセはゲーテ的な精神世界を平和に到達するために強調したが、ゲーテはペルシア（イラン）の詩人ハーフェズ（ペルシア最高の叙情詩人と言われる。１３９０年没）に感銘を受けて彼自身の「ディーヴァン（ペルシア語で「詩集」）である『西東詩集（ディーヴァン）』を１８１４年から１９年にかけて書いた。ゲーテはハーフェズを精神において「双子の兄弟」とも形容した。ハーフェズの詩のテーマは「愛」だが、異教のキリスト教への想いを次のように表している。この愛と寛容の精神世界を欧米やロシアなどの指導者も知ってほしいとつくづく思う。
愛は栄光の降るところ
汝の顔より 修道場の壁に
居酒屋の床に、同じ
消えることのない焔として。
ターバンを巻いた修行者が
アッラーの御名を昼夜唱え
教会の鐘が祈りの時を告げる
そこに、キリストの十字架がある。 ―ハーフェズ
http://www.smile-kai.com/report/20141127umezu5.pdf
アイキャッチ画像は美輪明宏さん
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