イスラエル国会、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決
イスラエル国会は10月28日、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決した。とても国連加盟国の行為とは思えないが、イスラエルの政治・社会の極右傾向をまたも示すことになった。この措置によって、ガザやヨルダン川西岸などのパレスチナ難民の人道状況がいっそう劣悪になることは明らかだ。
今年1月、昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃にUNRWA職員が関わったとイスラエルが主張したことを受けて日本を含む12カ国がUNRWAへの拠出金を停止したことがあった。その後、イスラエル政府はUNRWA職員の関与について具体的な証拠を示すことはなかった。上川外相は2月2日の会見で、「UNRWA職員への疑惑を極めて憂慮しております。国連の調査が行われている限り一時停止せざるを得ないという判断に至りました。」と述べたが、イスラエルの主張を鵜呑みにし、ガザの人道状況よりも米国と歩調を合わせることに重きを置いたことは明らかだった。米国はUNRWAへの資金拠出をいまだに再開していない。
イスラエル議会の決定は、イスラエル国内でのUNRWAの活動を禁止するために、UNRWAは特にガザへの交通や物資運搬を断たれることになる。ガザのパレスチナ難民支援活動に重大な支障をきたすことは明白で、彼らの生活や健康、食糧援助、学校教育に壊滅的な打撃を与えることになる。また、UNRWA職員がイスラエル軍の攻撃を受けないための調整もイスラエル当局者との間で行えない。UNRWAとそのパートナー組織が9月から行っているポリオの予防接種にも影響を与えるだろう。
本来ならば、パレスチナ国家を認めず、パレスチナ難民の帰還を認めない占領国のイスラエルに難民の生活を支える義務があるが、国際的に支援を提供されるUNRWAによってイスラエルは難民に対して負うべき莫大な資金支払わずに済んできた。23年のUNRWAの予算は23億ドルで、その9割が国連加盟国からの拠出だ。
UNRWAはイスラエル建国と、それに伴う第一次中東戦争の結果生じた75万人の難民を支援する目的で設立された。UNRWAは、ガザ、ヨルダン川西岸、ヨルダン、レバノン、シリの5つの地域で暮らす600万人のパレスチナ人に食料、医療、学校教育、場合によっては住居を提供する主要な援助組織となっている。UNRWAは、教育、保健、インフラ、食糧支援、小規模金融という5つの分野で国家のような機能を果たしているが、政治活動や治安活動は行っていない。
国連は1948年に、パレスチナ問題の長期的な政治的解決を模索し、「難民の帰還、再定住、経済的・社会的リハビリテーション、補償金の支払いを促進する」ために、「国連パレスチナ調停委員会」を設立したが、イスラエルに国連を信頼する姿勢が希薄なために、その後和平プロセスは米国主導の下に置かれていった。シリア、ヨルダン、レバノンで生活するパレスチナ難民たちには、帰還よりもUNRWAがそれぞれの国家への統合を図る機関と見なす傾向がある。
米国は1970年にUNRWAへの拠出金は軍事訓練を受けている難民に使用されてはならないことを要求し、これに応じてUNRWAもパレスチナ難民の受け入れ国政府が彼らを審査できるように、毎年その職員のリストを公表してきた。3万人の職員の大多数はパレスチナ人たちで、UNRWAは彼らの雇用も創出してきた。
グテーレス国連事務総長は、UNRWAの活動禁止は大惨事になるだろうと述べ、日本、韓国、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツの外相は共同声明を発表し、イスラエルによる禁止措置が特にガザ北部で、すでに危機的で急速に悪化している人道状況に壊滅的な結果をもたらすと主張した。米国国務省のマット・ミラー報道官は、「法案の可決は、米国の法律と米国の政策に影響を与える可能性がある」と警告したが、米国の国内法は米国による人道支援物資の供与を妨害する国への武器の移転を停止することを義務付けている。イスラエルに対する武器移転の停止はイスラエル国家の根幹にも関わる措置だが、UNRWAの活動停止への対応は米国外交の公正性を試す重大な機会となっている。
表紙の画像は「イスラエル、UNRWAの活動禁止する法案可決」 国連事務総長「避難民に壊滅的な影響もたらす」
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