
ネタニヤフ首相へのICCの逮捕状は「言語道断」と語るバイデン大統領はプーチン大統領への逮捕状は「正当」だと肯定した
オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は20日、イスラエルのネタニヤフ首相、ガラント国防相、またハマスの指導者たちに逮捕状を請求した。イスラエル政府首脳への逮捕状について米国のバイデン大統領は「言語道断(outrageous)」と語り、ブリンケン国務長官は21日、議会との連携の上にICCに対する制裁の可能性を探っていくと述べ、米国政府が逮捕状に強く反発していることを明らかにした。

ところが、昨年3月、ICCがロシアのプーチン大統領に逮捕状を請求した際には、バイデン大統領はロシアが明らかに戦争犯罪を犯していると述べ、逮捕状は正当なものであるという見解を示している。また、ブリンケン国務長官も米国が締約国でないため、プーチン大統領の逮捕に協力するようにICCの締約国に呼びかけた。

このように、ICCの逮捕状をめぐっても米国の「ダブルスタンダード(二重基準)」が明らかになった。フランスやスペインはICCの「独立性を支持する」という声明を出した。フランス外務省はガザでの市民の犠牲を何カ月も警告してきたと述べ、スペイン外務省もXへの投稿でICCの職務は介入を受けず自由に遂行されねばらないと主張している。フランス、スペインはICCの締約国だが、同じ締約国の日本はどうなのか?

ブリンケン国務長官は逮捕状の請求が停戦と人質解放に向けた交渉の成功を脅かすと述べたが、逮捕状の請求が停戦を遅らせる理由について説明しなかった。米国こそ停戦を送らせてきた「張本人」で、国連安保理で停戦を求める決議案に3回拒否権を行使し、4回目は棄権した。
ネタニヤフ首相はICCの逮捕状請求が「歴史的な道徳的暴挙」と断じ、イスラエルとハマスの指導者を同列に扱うのは誤りだと批判した。

しかし、ICCの訴状の内容はイスラエル政府首脳とハマス指導者たちとは異なっている。イスラエル政府首脳たちは、民間人を飢えさせ、民間人に攻撃を加え、民間人を絶滅させようとした罪で起訴されている。他方、ハマス指導者たちのほうはレイプなど性的犯罪や拷問や人質など捕虜の扱いに関する責任が問われている。ガザではすでに3万5000人以上が亡くなっているように、犯罪規模はイスラエルのほうがはるかに大きい。
ICCは、2014年夏のイスラエルのガザ攻撃、ヨルダン川西岸へのイスラエル市民の移住(入植地の拡大)、また2018年3月から19年12月にかけて行われたガザ境界でのパレスチナ人によるイスラエルへの帰還を求めるデモに対するイスラエル軍の発砲、パレスチナ人ベドウィンの追放などを戦争犯罪の容疑があるとして捜査してきた。
ICCの司法権以外に世界では40カ国ぐらいが侵略や人権侵害行為自体を罰する法律を独自にもっている。チリの独裁者ピノチェト将軍は1998年10月16日に、スペインの治安判事バルタサール・ガルソンによってチリで犯した人権侵害で起訴され、その6日後にロンドンで逮捕された。スペインとイギリスの連携による迅速な措置だったが、ピノチェトは健康上の理由で釈放されるまで1年半の間、自宅拘禁に置かれた。国内法が外国の元首だった人物に及んだ最初の事例だったが、ネタニヤフ首相も逮捕への危惧から行動の自由が大幅に制限されるに違いない。
