「長老たち(Elders)」は「紛争に軍事的解決はあり得ない」と訴える
2007年に世界平和のためにネルソン・マンデラ南アフリカ元大統領、ジミー・カーター元大統領、フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ・ブラジル元大統領、デスモンド・ツツ大司教などによって結成されたNGO組織「長老たち(Elders)」は、ハマスを非難しつつも「ガザを破壊し民間人を殺すことは、イスラエルの安全を増すことにつながらない。地域や、さらに地域を越えてテロを増殖するだけであり、紛争に軍事的解決はあり得ない」という声明を出した。(BBC11月18日)
「パレスチナ人の自由なしにわれわれの『自由』も不完全だ」-ネルソン・マンデラ
南アフリカの反アパルトヘイト運動の指導者で、全人種参加の選挙後初の大統領となったネルソン・マンデラ氏はイスラエルの占領下に置かれるパレスチナ人にも強い同情や共感をもった人だった。
2016年4月26日にヨルダン川西岸のラマラに高さ6メートルのマンデラ像の除幕式が行われた。
「人種差別は魂の病だ。
どんな伝染病よりも多くの人を殺す。
悲劇はその治療法が手の届くところにあるのに、
まだつかみとれないことだ。」―ネルソン・マンデラ
同じ2016年11月29日の「ニューヨーク・タイムズ」のオバマ大統領に宛てたオピニオン記事で、ジミー・カーター米元大統領はアメリカがパレスチナ国家を承認することを求めた。
カーター氏はオバマ大統領が中心になって、国連安保理がパレスチナ国家を認め、ヨルダン川西岸に入植地をつくることが国際法に照らして不法という決議を成立させることを要求している。現在、ヨルダン川西岸に70万人が不法に暮らしていることをカーター氏は指摘しているが、こうしたオピニオン記事を書いたのは、トランプ政権の成立によって、国際社会が後押ししてきたイスラエル・パレスチナの二国家共存という枠組みが崩れるであろうという懸念を背景にしていた。
カーター氏はイスラエルにアパルトヘイトがあると認めて、訴えたアメリカで最初の唯一の大統領経験者で、イスラエルの占領地における入植地の拡大が中東地域の安定や平和にとって重大な障害であると説いた。
「ミドルイースト・モニター」(23年2月20日付)でジャーナリストのイヴォンヌ・リドリー氏はカーター氏のことを平和と高潔の人として、またパレスチナ人の真の友人として永遠に思い起こされるだろうと述べている。リドリー氏はまた世界の指導者たちが南アフリカの反アパルトヘイト運動の指導者ネルソン・マンデラ氏の葬儀に参列しながらマンデラ氏の「パレスチナ人の自由なしにわれわれの『自由』も不完全だ」の発言を認めようとしない偽善を指摘している。
南アフリカでは、アフリカ人の土地所有権をわずかな不毛の地「保護区(Reserve)」に限り、ここから流出するアフリカ人を無権利な外国人扱いとして、氏名、部族等を明記し、雇用者のサインで有効となる「パス」によってコントロールしていった。パスを携帯しないだけで犯罪となり、アフリカ人たちは社会生活では住宅地から公共施設まで分離されるようになり、反アパルトヘイトの活動家たちには恣意的な逮捕や拷問までも行われた。他方、イスラエルは2007年からガザを経済封鎖し、パレスチナ人の政治犯を逮捕、またヨルダン川西岸の水資源の85%を支配している。(アルジャジーラによる数字)
イスラエルは占領地であるヨルダン川西岸と東エルサレムに70万人のユダヤ人たちを住まわせ、彼らは厚くて、高い分離壁によって護られて暮らしている。ヨルダン川西岸には320万人のパレスチナ人が居住するが、イスラエルはパレスチナ国家を認めず、彼らに「国籍」を与えていない。ヨルダン川西岸におけるパレスチナ人の移動はかつての南アフリカのように、「パス(身分証)」によって制限される。パレスチナ人たちには基本的な人権も、労働の自由も、組合運動、教育の保障、言論の自由も与えられていない。まさにかつての南アフリカのアパルトヘイト政策で、国際社会の声が南アフリカのアパルトヘイト撤廃に力をもったように、パレスチナのアパルトヘイトもイスラエルの無差別なガザ攻撃を受けて同様な声を上げていくことがますます求められている。
2000年9月に第二次インティファーダが発生すると、その翌年9月11日に米国同時多発テロが発生し、2014年のイスラエルのガザ空爆の翌年にはパリでやはり同時多発テロが発生した。パレスチナの問題は「長老たち」が主張するように世界暴力の増殖と結びついている。
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