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イスラエルへの軍事支援を増額するドイツと、ガザを愛した料理人
イスラエル軍はシファ病院の関係者、医師、看護師、患者たちに退避勧告を出した。すでにイスラエル軍の攻撃によって病院の電力が使用できない状態になって、手術が不可能になり、保育器の赤ん坊たちの生命も危機的状態に陥っている。11月11日時点で、すでに4、506人の子どもたち、3、027人の女性たちを含む11、078人のパレスチナ人たちが犠牲になっている。
このように多数のパレスチナ人が亡くなっているのに、今年ドイツ政府が承認したドイツの軍用品のイスラエルへの移転は例年の10倍以上にもなっている。ドイツはガザをめぐる紛争でイスラエル支持の姿勢を明確にしているが、トルコはドイツのイスラエルへの武器供与について「イスラエルが戦争犯罪や人道に対する罪に使用する可能性のある軍事物資や軍装備品の提供を停止する」と求めるようになった。
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ドイツが国際社会の中でも突出したイスラエル支援を行うのは第二次世界大戦中のナチス政権によるユダヤ人迫害に関連するものであることは言うまでもないが、ナチス政権のユダヤ人迫害と同様なイスラエルによるパレスチナ人に対する人権侵害がドイツの軍用品によって行われてよいはずがない。
ドイツはホロコーストでユダヤ人の人権を著しく侵害したが、イスラエルによるパレスチナ人の人権侵害にも重大な道義的責任を負っている。
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1933年に反ユダヤ主義を掲げるナチスがドイツで政権の座に着くと、さらにパレスチナ人たちを圧迫することになる。パレスチナへのユダヤ人の移住は、1933年に30、000人、1943年には42、000人、1945年には61、000人と増加していった。1936年にはパレスチナのユダヤ人人口は400、000人となり、総人口のおよそ3分の1を占めるようになった。(Laura Etheredge , Historic Palestine, Israel, and the Emerging Palestinian Autonomous Areas, p.56)ナチスによるホロコーストがなければ、ユダヤ人の大量のパレスチナへの移住もなかった。
ヒトラーは「民族自決主義」をもち出して、ドイツ民族の子孫と考えられる人々すべてを統一しようとした。そして、ドイツがポーランドや他のスラブ系民族の国や地域を軍事的に征服して、経済的に自存できる、軍事的にも動じない十分な領土を獲得することを目指した。この領域においてはドイツ民族が「主の民族(Herrenvolk)」であり、従属する人々を下に見るヒエラルキーのトップに位置する。そして彼らを無慈悲に、効果的に搾取する。
イスラエルは現在ヨルダン川西岸の水源をコントロールし、その経済発展や維持に役立て、またヨルダン川西岸のパレスチナ人の土地を収奪して、入植地を拡大する。ガザに対しては経済封鎖を行い、パレスチナ人たちへの物資の移動を必要以上に制限して、実質的な占領下に置き、彼らを政治的にも経済的にも従属させている。イスラエルの行動様式は、ナチス・ドイツのそれと似通っていることに容易に気づくだろう。
ところで、アメリカの人気シェフのアンソニー・ボーディン氏(1956~2018年)はCNNの取材で世界各地を歩き、現地の食事情を紹介する番組「パーツ・アンノウン(未知の場所)」を担当していた。彼は、2014年に全米のイスラム団体「ムスリム公共問題評議会(Muslim Public Affairs Council)から表彰を受けた際に「パレスチナ人の基本的人権を奪うことほど恥ずべきことはない」と発言した。ボーディン氏は日々のニュースには現れない現地の事情を、食や文化、人々の暮らしを通じて掘り下げて紹介していた。
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パレスチナ系カナダ人の人権活動家のダイアナ・バトゥ弁護士は「ボーディン氏はパレスチナ人たちを人間として凝視し、その眼差しがとても力強かった。彼は料理だけでなく、食をめぐるヒューマニティー、文化、また伝統までも愛した。彼は、パレスチナ人の食事情とともに、彼らがいかに人権をはく奪されているかという強いメッセージを伝え続けた。」と語った。人口の半分が子供たちであるガザを歩き、ガザの子どもたちに愛情ともいえる親しみをもち、優しく接し、彼らの境遇に強く同情した。
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イスラエル・ネタニヤフ政権はガザを「テロの温床」として経済封鎖し、たびたび攻撃を加えてきた。こうした対決的視点が、ガザの人々の人権を著しく侵害し、その緊張や不安定、暴力・紛争を招いてきた。ガザを訪れれば、圧倒的多数の人々がボーディン氏の感じたようにテロとは無縁の気さくな人間味あふれる人々であることに容易に気づくだろう。メディア、また中東研究者たちも、ナチスやイスラエル・ネタニヤフ政権のような排除の姿勢ではなく、ボーディン氏のような温かい視点でパレスチナをはじめとする中東を紹介することがこの地域の安定に貢献することにもなることは間違いない。
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