![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/162050597/rectangle_large_type_2_324837664871a426a87a82422cc9581d.png?width=1200)
荒れるイスラエルのサッカー試合 ―日本人にも教訓を与える国のイメージ
14日、パリのスタッド・ド・フランスで行われたフランス代表とイスラエル代表の試合は、16,611人とフランス代表の試合としては史上最低の観客動員数となった。イスラエルの試合のボイコットが呼びかけられた上に、イスラエルのサポーターが暴力的に荒れるという治安上の懸念もあった。16000人余りの観客に対して、この試合のために動員された警備員は4000人にも上った。
7日、オランダ・アムステルダムでもマッカビ・テルアビブのサポーターたちがアヤックスに0-5で敗れると、民家のパレスチナの旗を引き裂き、通行人に花火を投げつけ、アラブ人に対する人種差別的なスローガンを叫び、暴力的行為に及ぶと、地元住民たちとイスラエル・マッカビ・テルアビブのサポーターたちとの衝突が始まった。BBCやNBCの報道でも先に暴力をふるったのはイスラエル人のほうだったと伝えられている。
14日のパリの試合は0-0の引き分けだったが、イスラエル国家斉唱の際に、ブーイングが聞かれ、前半戦が始まると間もなく観客同士の暴力的衝突が始まった。試合中、イスラエルのサポーターたちは「人質を解放せよ、ハマス、ハマス、お前はクソだ!」などと叫んだ。こうしたイスラエル・サポーターたちのふるまいがフランス人の反感を買うことになった。レバノンは、フランスの植民地であったころでもあり、フランスでも信仰されるキリスト教人口も40%前後と宗教的にもフランス人はレバノンに親近感をもっている。
![](https://assets.st-note.com/img/1731738749-wv184ehD9AVctJqaB3m7K5rS.jpg?width=1200)
試合にはフランスのマクロン大統領、ミシェル・バルニエ首相、オランド元大統領、サルコジ元大統領が観戦に訪れていたが、駐フランス・イスラエル大使のジョシュア・ザルカや、イスラエルのシン・ベト治安機関の責任者であるローネン・バールも、イスラエルの選手やサポーターに対する警備状況監督のためにスタッド・ド・フランスにやって来た。マクロン大統領はイスラエルのヘルツォーク大統領とネタニヤフ首相と試合前に電話会談を行い、フランスは「反セム(ユダヤ)主義に屈することはない」と告げた。
しかし、オランダやフランスでのイスラエル・サポーターたちを巻き込む暴力的衝突は必ずしも反セム主義ではない。ガザやレバノンに共感する人々は、イスラエルの代表チームによる試合のボイコットを呼びかけていた。イスラエルによるガザとレバノンでのジェノサイド、さらにはイスラエルの国際法に違反する行為のために、国際社会のイスラエルを見る目がすっかりしらけきっている。レバノンでも昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃以来、レバノン国民の犠牲は3500人に近づいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1731738816-zxCovYiZUujkMn9EgHbRtK2r.jpg?width=1200)
フランスとイスラエルの関係は、マクロン大統領がイスラエルへの攻撃用兵器への供給停止を呼びかけて以来、悪化するようになった。フランス政府は、最近、イスラエルの兵器企業がパリの見本市に出展することを禁止しようと試みたが、フランスの裁判所によって決定が覆された。
スタッド・ド・フランスでの試合が行われている間、ガザやレバノンと連帯する抗議運動もパリで行われていたが、デモの参加者たちはマクロン大統領、オランド元大統領、サルコジ元大統領の観戦はイスラエルの虐殺を黙認するものだと抗議した。また、観客動員の少なさはフランスの世論がパレスチナを支持し、イスラエルに共感をもっていないことの表れだと語るデモ参加者もいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1731738936-XCioNOsnGwr0c3JFVA9LMtKU.png)
以前、トルコ・イスタンブールのベリーダンス場で、フロアから一般参加で壇上に上がって踊る客が一人一人自己紹介すると、ある客が「イスラエルから来ました!」と言ったら会場全体が途端にシーンと静まり返り、その場がまったく白けたことを覚えている。会場ではイスラエルの国際法違反やガザ攻撃などが強く意識されていたのだろう。それほど国のイメージ、国の政策は国民一人一人にも影響を及ぼすものだと実感せざるを得なかった。
作家のなださんは2012年12月に「賢い国になろう」と次ように語っている。
「日本にかぎらず多くの国の政党が、「強い国を目指す」というスローガンを掲げて選挙を戦っているようです。せめて「賢い国になろう」をスローガンにできないのかと思う。人口が1000万とか500万の国が世界にはあります。そうした小国が強い国を志向しますか。たとえばスウェーデンやノルウェーやスイスが、強い国を目指しているかと、僕は言いたい。戦争の世紀は第二次世界大戦までで、今や21世紀になったのだから、賢い国をつくっていくべきでしょう。」
日本が「賢い国」になるには、他国に軍事介入などしないで、また軍事介入に協力を行うこともなく、他国の社会福利の改善に尽力するとか、さらに良いモノづくりを継続したり、優れた学術・文化の発信を行っていけば、日本人は海外に出ても胸を張って「日本人だ」と名乗ることができ、また日本人ゆえに歓迎されたりすることもあるだろう。今のイスラエル人のように、海外に出ていって日本人だから暴力を振るわれるような事態になることだけは避けたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1731738903-19MfoB4ZATdigyUzhGeXWO6s.jpg?width=1200)
表紙の画像は荒れるイスラエルのサポーターたち
10月7日、アムステルダムで