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トランプは日本に来れなくなる? ―ICC(国際刑事裁判所)への制裁はICCが定める司法妨害罪に該当する
2月4日にイスラエルのネタニヤフ首相は米国を訪問する予定になっているが、トランプ政権になってから最初の外国首脳の米国訪問だ。ネタニヤフ首相にはICC(国際刑事裁判所)から逮捕状が発行されているが、トランプ大統領はICCに対する制裁を発動することを明らかにしている。
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しかし、2022年まで30年間ヒューマン・ライツ・ウォッチの事務局長を務めた米国のケネス・ロス弁護士は『フォーリン・ポリシー』誌の”Sanctioning the ICC Could Put Most Travel Off-Limits for Trump(ICCへの制裁でトランプの大半の渡航が禁止される可能性)”と題する記事の中でトランプ大統領がICCに制裁を発動すれば、ICCはトランプ氏を司法妨害で訴追できると述べている。
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ローマ規程第70条は、司法の運営に対する妨害を禁止しており、これには「裁判所職員が職務を遂行できないように、または不適切に遂行するよう強制または説得する目的で、裁判所職員を妨害、脅迫または不正な影響を与えること、および裁判所職員が遂行した職務を理由にその職員に報復すること」が含まれる。
トランプ大統領のICCに対する制裁はまさに司法妨害罪が禁じる範囲内に相当するだろうとロス氏は説明したうえで、ICCに加盟する国々にはトランプを逮捕する義務が生じると主張する。ロス氏によれば、各国がトランプ大統領に必ずしも手錠をかけるわけではないが、静かに来るなと言われる可能性が高いという。つまり、トランプ大統領はICC加盟国への渡航が困難になるが、ロス氏は、記事の中でトランプ大統領はロシアのプーチン大統領に世界ののけ者になるのはどんな気分なのか尋ねたら良かろうとも書いている。
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かりにガザで戦闘が再開され、イスラエルがガザを空爆し、ガザ市民が飢える中で、トランプ政権がイスラエルへの武器供給を継続すれば、イスラエルの戦争犯罪をほう助し、教唆した罪でも起訴される可能性もあることをロス氏は強調している。ロス氏は、トランプ大統領はICCに制裁をかけることでネタニヤフ首相やガラント前国防相を免責するのではなくて、ネタニヤフ首相に国際法のルールを遵守するように促すべきだと主張する。でなければ、トランプ大統領の首脳会談とか、国賓としての訪問、さらにはゴルフツアーなど海外渡航の多くに困難が伴うことになったり、あるいは禁止されたりすることになるというのがロス氏の考えだ。
昨年5月末にヒューマン・ライツ・ウォッチなど日本で活動するNGOは共同で上川外相に公開書簡を送り、「私たち日本のNGOは、日本政府が、ルールに基づく国際秩序にコミットするICC加盟国として、ICCの独立性を公に擁護すること、そして、ICCの活動とその関係者、そしてICCに協力する機関・人びとに対する脅迫・妨害を公に非難するよう要請します。」と要望した。日本はICC加盟国で、しかもICC所長が日本人、さらにICCに最大の資金を拠出する国なのだから毅然として、ICCに制裁をかけるトランプ大統領の措置を非難して、制裁を止めるための必要な措置を講じるべきだ。
1月31日、ICC本部もあるオランダ・ハーグで、ベリーズ、ボリビア多民族国、コロンビア共和国、キューバ共和国、ホンジュラス共和国、マレーシア、ナミビア共和国、セネガル共和国、南アフリカ共和国などグローバルサウスの国々の政府代表者たちが「ハーグ・グループ」を発足させた。
「ハーグ・グループ」は次の目標をもっていることを明らかにした。
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・ネタニヤフ首相とギャラント前防衛相に対するICCの逮捕状に基づいて行動し、国際刑事裁判所を支えるローマ規程に基づく義務を遵守する。すなわち、可能な場合には、この二人を逮捕すること、ガザにおけるイスラエルに対する集団殺害の防止という国際司法裁判所の暫定措置を実施する。
・国際的な義務と国際司法裁判所(ICJ)の2024年7月19日の勧告的意見に沿って、人道法、人権法、またはジェノサイドの違反の明らかなリスクがあるイスラエルへの武器移転を妨げるための措置をとる。
・人道法、人権法、またはジェノサイドの違反を助長する可能性のある軍事燃料または武器をイスラエルに運ぶリスクがある場合、ハーグ・グループの管轄海域内の船舶の停泊を禁止する。
・イスラエルによるパレスチナ人の軍事占領を終わらせ、パレスチナ国家の出現を可能にするために、可能なことは何でも行う。
ハーグ・グループの発足会議にはアイルランド・シン・フェイン党全国議長のデクラン・カーニー氏も出席した。昨年パレスチナ国家を承認し、ガザからの医療避難者を受け入れるアイルランド、スペイン、ノルウェーがハーグ・グループに参加することも考えられる。ハーグ・グループは宣言でガザや他のパレスチナ占領地域で生命、生活、コミュニティ、文化遺産がイスラエルによって奪われていることを深く遺憾に思い、このような国際犯罪に対して、受け身の姿勢でいることを強く拒むと宣言している。日本はトランプやイスラエルという国際法に照らして不義の側ではなく、ハーグ・グループに見られる世界の良識とともに、国際社会の正義の実現の先頭に立ってもらいたい。
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表紙の画像はhttps://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/254749 より