日本の防衛関連部品がイスラエルの戦争に用いられる?
日本政府はアメリカにパトリオット・ミサイルを輸出する最終調整に入ったが、日本製のパトリオット・ミサイルがアメリカを通じてウクライナに移転される可能性もある。戦後、平和国家を内外に強調、訴えてきた日本にとって大きな転換点だ。こうしたことが国民の間の大した議論もならずに決められることに危惧を覚えざるを得ない。
1967年4月に、佐藤栄作首相は武器輸出三原則の一つとして、国際紛争の当事国あるいはその恐れのある国に武器輸出は承認しないという考えを明らかにしたが、パトリオット・ミサイルの輸出はそうした原則が大幅に緩和された結果、輸出されようとしている。
1976(昭和51)年にはその他の国への武器輸出も「慎しむ」とし、事実上全面的に武器輸出を禁止した。その後、アメリカへの武器技術の供与、アメリカとのミサイル防衛システムの共同開発は認められるなど一部緩和された。2011年に野田佳彦内閣は、「平和貢献」のための武器輸出や武器の国際共同開発・生産を事実上解禁した。
F35戦闘機については、日本の企業がエンジンやレーダーの部品を製造するが、製造に参加した国々は、相互に部品を供与できることになっており、F35戦闘機の購入を行っているイスラエルにも日本企業が製造した部品が輸出されている可能性もある。
ハマスの奇襲攻撃があった10月7日以降、イスラエル軍の空爆などでガザでのパレスチナ人犠牲者はついに2万人を超えた。かりに日本企業によってF35戦闘機の部品輸出がイスラエルに対して行われているのであれば、日本はイスラエルによる殺りくに加担していることになる。
人権擁護の意識が強い国からはイスラエルがパレスチナ人を殺傷することが強く反発されている。たとえば、2009年9月、ヨーロッパの基金の中で最も規模が大きいとされる「ノルウェー政府年金基金」は、イスラエル最大の軍需産業エルビト社が西岸の分離壁の建設に関与していることを理由に、エルビト社への投資から撤退することを表明した。
日本政府や企業に求められているのはイスラエルの兵器がパレスチナ人の殺傷や人権抑圧に用いられていることへの強い関心や配慮だ。イスラエルに輸出される部品がパレスチナ人の殺害に用いられているのであれば直ちに輸出を停止しなければならない。イスラエルとの防衛協力の見直しも必要だ。
F35の技術開発については日本も参加し、その技術がレバノンやガザなどを攻撃してきたイスラエルにも移転されていることは確実だ。F35の部品の40%以上は日本が製造しているとも見られている。安倍元首相は2014年5月、イスラエル・ネタニヤフ首相との間で「日本・イスラエル共同声明」に署名したが、この声明によるイスラエルとの防衛協力や、武器輸出三原則を緩めることは、日本の一部の防衛関連産業を潤すことになるが、しかし日本の国際社会におけるイメージを低下させ、日本人が武装集団の標的になる可能性を高めるなど日本の安全のためには役立たない。
2014年5月13日付の「毎日新聞」の社説には下のように書かれていた。この社説の内容は「毎日」内部で議論にならなかったのだろうか。
「日本の中東政策の大きな節目ともいえよう。安倍晋三首相は訪日したイスラエルのネタニヤフ首相と会談し、両国の防衛協力を強化することで合意した。日本は北朝鮮の核・ミサイルの脅威に、イスラエルはイランの核開発の脅威に、それぞれ直面している。両首脳はこれを『今そこにある危機』と表現して、共通の懸念としたのである。
こうした連携は自然な成り行きともいえる。北朝鮮が日本を脅かす一方、イランを含む中東地域に核関連技術を輸出しているのは明白だからだ。国家安全保障会議(NSC)に相当する機関同士の意見交換や、防衛当局の交流拡大での合意は、それぞれ同盟関係にある日本、米国、イスラエル3国の情報交換の促進にもつながろう。この協力関係が平和と安定に結びつくことを期待したい。」
しかし、イスラエル・ネタニヤフ政権はその直後の7月から8月にかけてガザ攻撃を行い、2000人以上のパレスチナ人の犠牲をもたらし、またネタニヤフ氏はパレスチナ国家を認めないことを再三表明するなど平和とは逆行する数々の行動をとり、毎日新聞社説の期待とは真逆に平和を損なうことをイスラエルは行ってきた。イスラエルと軍事的に協力することは、中東の紛争や不安定の拡大に日本が「貢献」することになる。武器輸出三原則の緩和は、日本のその時々の経済状態にも合致するようで、兵器によって利益を上げようとする発想が歴史的にも絶え間ない戦争を起こしてきたことはいまさら強調するまでもない。
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