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イスラエルの「ジェノサイド」を認定するアムネスティと、シャンソン「枯葉」の作者が語る「踊れ、平和とともに!」

 12月5日、国際的人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、イスラエルがガザで「ジェノサイド」を行っているという報告書を発表した。ジェノサイドとは国連広報センターによれば、ジェノサイドとは、国民的、人種的、民族的または宗教的集団の全部または一部を破壊する意図をもって行われた、次の行為のいずれをも意味する。
(a)集団構成員を殺すこと。
(b)集団構成員に対して重大な肉体的または精神的な危害を加えること。
(c)全部または一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。
(d)集団内における子どもの出生を防止することを意図した措置を課すること。
(e)集団の子どもを他の集団に強制的に移すこと。

アムネスティ・インターナショナルより


 イスラエル当局は、国連などが人道危機について繰り返し警告してきたにもかかわらず、封鎖を続け、人命救助を拒否している。アムネスティは、これらの行動は、1948年のジェノサイド条約と2002年に批准されたローマ規程の文言で言えば、パレスチナ人を「全体的または部分的に」物理的に破壊する計算された意図を示していると主張する。アムネスティ・インターナショナルは、パレスチナ人は明らかに民族であり、共通の言語と文化を持っていると主張し、イスラエルのネタニヤフ政権がガザで彼らの民族性のすべてまたは一部破壊しようとしていると主張する。

神代植物公園 7日


 今年は残暑が厳しかったせいか、紅葉の色づきも遅く、近隣の植物公園でもようやく見頃となってきた。日本でもあまりに有名なシャンソンの名曲「枯葉」の詞を書いたのは、20世紀最大のフランスの民衆詩人と言われたジャック・プレヴェール(1900~77年)だった。プレヴェールの詩は平易で、わかり易く、『プレヴェール詩集』(岩波書店)の翻訳者の小笠原豊樹氏はその解説文の中で「親しいともだちのように微笑を浮かべてあなたを待っている」と書いている。下は「枯葉」の冒頭の部分だが、若い頃の恋の情感を思い出される方も大いに違いない。

あなたは覚えているかしら
仲が良かった幸せな日々を
あの頃は今日よりも 人生は美しく
太陽は明るかった

枯葉がシャベルに集められる
そうよ 私は忘れない
枯葉がシャベルに集められる
想い出も後悔も

私を愛したあなた あなたを愛した私


 1900年に生まれたプレヴェールは、第一次世界大戦、第二次世界大戦、ヴェトナムがフランスからの独立を目指したインドシナ戦争(1946~54年)、アルジェリア独立戦争(1954~62年)などフランスの数々の戦争に接した人生だった。戦争や破壊、抑圧に反対し、戦争の犠牲になる子どもや女性に対する同情を寄せ、貧しい人々に共感をもった。また、戦争の声なき犠牲者である動物や植物の味方をプレヴェールは自任していた。戦争に対しては厳しい批判の表現を向け、ロシアのウクライナ侵攻など戦争が絶えない現代の世界にも生きる戦争批判のメッセージを残している。

「戦争」(プレヴェール作)
「きみら木を伐(き)る/ばかものどもめ」「鳥はとび去り/きみらそこに残って軍歌だ/きみらそこに残って/ばかものどもめ/軍歌だ 分列行進だ。」

 プレヴェールは“Si tu veux la paix, prépare la guerre”──「君が平和を欲するならば、備えよ戦争に」という危うい「積極的平和主義」を皮肉り、“Si tu ne veux pas la guerre, répare la paix” ───「君が戦争を欲しないならば、修繕せよ、平和を」あるいは「繕え、平和を」と訴えた。
 そして彼は次のような言葉を残した。「踊れ、すべての国の若者よ。踊れ、踊れ、平和とともに。平和はとても美しく、とても脆い。やつらは彼女(平和のこと、平和は女性名詞)を背中から撃つ。だが平和の腰はしゃんとする、きみらが彼女(平和)を腕に抱いてやれば」。

「もし きみが戦争を望まないなら、繕え 平和を」 (ジャック・プレヴェール 1953年) https://x.com/seijikanoh/status/899212524901457920

https://ivory.ap.teacup.com/editorsmuseum/472.html

 イスラエルのしていることは、プレヴェールの言葉を借りれば、イスラエルは平和を背中から撃つが、それに対抗するには日本を含めた国際社会が平和を抱いて尊重することだ。

 プレヴェールの代表的シャンソンにはやはりイヴ・モンタンなどが歌った「バルバラ」があり、バルバラという女性に呼びかけながら、戦争の空しさや悲惨さを説く。プレヴェールの詩はイスラエルのジェノサイドを前にして平和を修繕することをあらためて世界に訴える。

バルバラ(プレヴェール作 抜粋)
  戦争のなんという愚劣さ
  君は今 どうしているのか
  この、鉄の
  火の はがねの 血の雨のしたで
  そして君をいとおしげに腕のなかに
  抱きしめていたあの男は
  死んだ 行方不明 いやまだ生きているのか
  おお バルバラ


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