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総選挙の結果と、民族浄化が着々と進むガザ北部

 総選挙で自公は半数を割ることになった。「裏金問題」なども敗因としてあると思うが、国の形のあり方を形づくる安全保障問題の重要事項を国会での議論を経ずに、また民意問うことなく、閣議決定で決定するなど驕りがあった。岸田政権はNATOにまで接近する姿勢を見せたが、ヨーロッパの安全保障問題にまで首を突っ込み、ロシアとの関係を決定的に悪くする必要があるだろうか。そのNATOはイスラエルのイラン攻撃について、イランの側につくものはNATOの敵と見なすとまで発言している。

 選挙で当選した上川陽子前外相は「一意専心の思いで日本の平和外交を前に進めていく」と語った。また「2023年9月13日に私は岸田政権の外務大臣を拝命し、丸1年にわたりまして、日本の国益を守る。そしてこの地域の中での領土領海領空を守りながら、おの日本の存在感を高めていく。そして何といっても、国民の皆様からご支持はいただき、そのためにご理解をいただく。」と当選の興奮からか、論理的でないことを言っているが、結局平和外交と言っても軍備による「平和」かと思ってしまう。「ガザで子どもを死なさないで」とも語ったらしいが、それをイスラエル政府関係者に述べた様子はなく、イスラエル政府関係者との会談ではいつも「ハマスのテロを非難する」という発言を繰り返すばかりだった。

ハマスのテロを非難する前にイスラエルの国際法違反の行為の数々を批判しなければフェアではない

 日本の政界が選挙で忙しかったこの期間、イスラエルはガザ北部の民族浄化をいっそう進めるようになった。ネタニヤフ首相は、ガザ北部を空爆などで瓦礫の中にさらに埋めることによって、パレスチナ人の追放を進めている。彼の姿勢はイスラエルがアラブの隣人と平和に暮らせる可能性をまったく葬り去ってしまった。

 1981年10月15日参議院外務委員会で宇都宮徳馬議員は「サダトさんの死(直前の10月6日にイスラム主義の過激派に暗殺された)というものは非常に不幸なことでありまするけれども、やっぱりこれはだれが一体サダトさんを窮地に陥れたかといいますと、余りにもイスラエルの態度がキャンプ・デービッドの精神に沿わない、一方的に強硬な態度をとるということからサダト大統領はアラブ世界から孤立し、それで、イスラム原理派というような強いアラブ主義者が非常な反感を持ったというところに原因があると思いますね。ですから、そういう基本的な認識を持って日本の外交をやりませんと、これは将来間違える、必ず間違えるというふうに私は存じておりまするけれども、園田外務大臣はどう考えられますか。」と述べている。

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=109513968X00219811015&spkNum=56 

 これを現在に置き替えるとイスラエルが強硬な姿勢をとるからパレスチナ和平交渉を担うパレスチナ自治政府は支持を失い、ハマスのような急進主義が支持を集めるということになる。現在ネタニヤフ政権がガザ北部で行っていることは、1995年7月12日からおよそ10日間行われ、8000人とも言われるムスリムが殺害されたボスニアのスレブレニツァ虐殺以上のことを行っている。

国境なき医師団による要請 https://www.facebook.com/story.php?story_fbid=933166905523035&id=100064892012049&_rdr

 さらに極右を含むイスラエルの現政権は、ガザからヨルダン川西岸、南レバノンにまでイスラエルの国境を拡大することを目指している。イランにも攻撃をしかけ、イスラエルは中東の唯一の覇権国であるかのようにふるまい、ジェノサイド文化を促進するようになった。ネタニヤフ首相は果てなき戦争を望むようになり、イスラエルが併合を考えるガザ北部には食料も水も医療も供給されず、医療制度は解体されつつあり、学校も爆撃されるなどガザは居住不能になりつつある。スレブレニツァと同様、ガザ市民たちは「安全地帯」に移送され、その「安全地帯」で殺害されるケースも後を絶たない。

「いま地獄です」ガザにいる日本の人道支援関係者「逃げる場所ないのに逃げろと」「救急車や病院すら攻撃しようとしている」|TBS NEWS DIG https://www.youtube.com/watch?v=sC_nbKKkQ0c

 国際刑事裁判所(ICC)の検察官のカリム・カーンが、ネタニヤフと彼の国防大臣ヨアブ・ギャラントの逮捕状を要求してから5ヶ月が経過した。同時に逮捕状が請求されたハマスの指導者たちは全員がイスラエルに殺害されたが、イスラエルの政治指導者たちにはいまだに逮捕状が発行されていない。ICCでは予審裁判部の裁判官が、検察官が請求した逮捕状を発行するまで平均的には2カ月で処理される、ICCの機能も麻痺している。

 ガザでは殺りくが続いているものの、バイデン大統領はイスラエルに武器・弾薬を供給し続けている。ガザ北部の民族浄化は3週間続いているが、欧米の指導者たちによる非難声明は皆無だ。イスラエルの国会議員タリー・ゴトリフ(ネタニヤフ首相と同じリクード所属)は「私たちが(ガザ住民たちに)持っている唯一の慈悲は、彼らに去る機会を与えることです。・・・彼らは去って南に行くべきです。」と述べている。

武装するイスラエルの極右 https://www.middleeasteye.net/opinion/israel-genocide-culture-won-wants-endless-wars

 国際社会が声を上げなければ、ガザでの民族浄化はますます進むばかりだ。岩屋外相はガザ復興への日本の関与を発言するようになったが、政界も国会が再開されたら、イスラエルの民族浄化を防ぐための措置を考えなければならない。民族浄化が進んだらガザ、特に北部にはパレスチナ人がいなくなり、復興どころではなくなる。

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