フランス「革命の5月」 ―ガザでの即時停戦を求める運動はフランスの高校生にまで波及
イスラエルのネタニヤフ政権がラファ侵攻を行う構えでいる中で、フランスでは高校生にもガザでの即時停戦を訴える運動が広がっている。5月5日、高等学校連合のマネス・ナデル副会長はBFMTV(フランスのテレビ局)で、「明日からかなりの数の高校が閉鎖される」、「およそ数十校」になるだろうと語った。その動画は
https://twitter.com/BFMTV/status/1787147113391943953 にある。あどけない表情ながらも自分の意思をしっかりと伝えている様子が見てとれる。非人道的なガザ攻撃に対する「NO」を突き付ける声は着実に世界で広まっている。特にこれまでイスラエルを支持してきた米欧諸国の若者たちが、イスラエルのアパルトヘイトやジェノサイドに重大な関心をもち始めた意義は大きく、米欧政府の無条件なイスラエル支持の姿勢やイスラエルそのものの政策を改善することを望みたい。
ネタニヤフ首相は5日、エルサレムのホロコーストの式典でスピーチを行い、いかなる圧力も、国際法廷の決定もイスラエルの自衛の権利を止められないと発言した。これに対して、ホロコーストとガザでの戦闘を重ねるのは歴史的文脈が異なるという声が上がっている。
ナチス・ドイツによるホロコーストを生き延びた人々ははネタニヤフ首相のように、ホロコーストをガザ攻撃の正当化のために利用する考えをもっていない。
2014年8月23日、国際的な反シオニズムのユダヤ人団体がイスラエルによるガザ攻撃を非難する意見広告を「ニューヨークタイムズ」紙に出した。この書面に署名したのは327人のホロコーストを生き延びた人や、またその親族たちだった。その中でイスラエルによるガザでの「虐殺」が非難され、イスラエルを政治的・経済的に完璧にボイコットすることが呼びかけられた。ホロコーストの生存者たちは、イスラエル社会が極端で、人種的な非人道主義に陥っていることを指摘し、嘆いている。
イスラエル出身のハリウッド女優ナタリー・ポートマンは2015年8月26日付の「インディペンデント」にホロコーストについて語った。ホロコーストについてそれを思い起こし、犠牲者に対する敬意を払うことは重要だが、「憎悪」はいつの時代にも存在し、ヘイトを受ける人々にも感情移入する必要があり、「我々は犠牲者だ」ということをパラノイア的に唱え続けるべきではないと語っている。
「反セム主義」のようなヘイト・クライムは、いつの時代、あらゆる人々にも存在することを知らなければならないとも述べたが、彼女にこのような想いをもたせたのは、2007年のルワンダ訪問だったという。そこで1994年に発生したルワンダ虐殺に関する博物館を見学すると、大虐殺(ジェノサイド)は自分が教育を受けている時期にも発生していたものの、ナチス・ドイツのよるホロコースト以外は学校では教えられることがなかったことを知ったという。
ポートマンはイスラエルのネタニヤフ元首相の「人種主義的な発言」にもゾッとするとコメントしたことがあるが、ジェノサイド、あるいはホロコーストは、ユダヤ人にだけ起きたことではない。1996年にワシントンDCを訪ねた時に、イラン社会の研究者であるエリック・フーグランドは1993年にナショナル・モールのわきに開館したホロコースト博物館について触れながら、「ホロコーストはアメリカのインディアンにも対してもあったし、広島・長崎への原爆投下だってホロコーストだ」と語っていた。現在のイスラエルの右派政権にとって「ホロコースト」という言葉はイスラエルによるあらゆる非人道的な行為の「免罪符」になっている感もある。
冒頭のナデル副会長のようなフランスの高校生たちは、下のアラゴンの詩のように、ネタニヤフ首相を膝まずかせたい思いでいるに違いない。
平和こそが 戦争犯罪人を膝まずかせ
自白するように 余儀なくさせる
そして犠牲者たちとともに 叫ぶのだ
戦争をやめろ
―ルイ・アラゴン(フランスの作家・詩人:1897~1982年)「平和の歌」より
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/blog-entry-1617.html
歌手の加藤登紀子さんは「学生たちが自由の旗を掲げた『パリ五月革命』は、遠きパリ・コミューンを思わせた。」と語っている。1968年は、チェコスロバキアの民主化運動「プラハの春」が軍事力で制圧され、フランスでは「5月革命」があり、大学の改革、ベトナム反戦、労働者の管理問題の改善が唱えられた。米国では4月にキング牧師暗殺事件があった。イスラエルがラファ攻撃を強行すれば、今月は再び「革命の5月」になるかもしれない。
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