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トランプ政権の「ガザ・リビエラ化」の意図とは何か? -イスラエルのガザ戦争を支持したヨーロッパ諸国は後悔する

 トランプ大統領はガザ地区を米国が長期保有する考えを明らかにしたが、その構想を記者会見で明らかにする様子を見て満面の笑みを浮かべ、「歴史を変える可能性がある」と喜んだのはイスラエルのネタニヤフ首相だった。トランプ大統領は米国による「長期保有」の後、ガザをイスラエルに引き渡すつもりなのだろう。

 ガザからパレスチナ住民を追放すれば、地理的に近いヨーロッパに難民が押し寄せ、2015年にドイツで発生したシリア難民危機の再現となる可能性がある。トランプ構想を受けて、イスラエルによるガザ戦争を支持してきたドイツのショルツ首相もイギリスのスターマー首相もガザ地区は、ヨルダン川西岸、また東エルサレムとともにパレスチナ人の土地であると慌てて表明するようになったが、トランプが構想を進めれば、イスラエルのガザ戦争支持の高いツケをヨーロッパ諸国は払うことになる。

トランプ構想が明らかになって初めてガザやヨルダン川西岸、東エルサレムがパレスチナ人のものだと表明するようになった。彼らを難民化することは国際法に反するとあるが、難民がドイツに押し寄せることはまったく望んでいない。

 ヨーロッパ諸国がガザやヨルダン川西岸、東エルサレムがパレスチナ人のものと本当に思うのならば、パレスチナ国家を承認すればよい。今回の停戦でイスラエルはこれまで数百人のパレスチナ人政治犯を釈放したが、パレスチナ国家が成立すれば、イスラエルはパレスチナ人の恣意的な逮捕や拘留もできなくなる。日本政府もパレスチナ国家承認に踏み切るべきだ。

 トランプ構想を荒唐無稽だと笑い飛ばすわけにはいかない。曲がりなりにも米国大統領として絶大な権力をもつトランプ大統領は計画の実現に向けて動き出すことだろう。

 トランプ構想は「再開発」などではなく、ガザ住民に対する民族浄化で、国際法にも違反するものだ。ガザ地区は国連とその最高裁判所である国際司法裁判所によって、イスラエルの軍事占領下にあるパレスチナ領土の一部として認められている。国際法は、武力による領土の奪取を禁じており、これは侵略行為と定義される。

ロシアの犯罪はそのままイスラエルに当てはまる https://mainichi.jp/maisho15/articles/20220416/dbg/048/040/009000c

 トランプ大統領の提案は、少なくとも第二次世界大戦の終結と国連憲章の採択以来、運用されてきた国際法の中核的な信条をあからさまに拒絶するものだ。米国がガザ地区の所有権を主張すれば、それは領土の不当な併合に等しい。また、イギリスはパレスチナをユダヤ人に割譲する約束をしてしまったが(もちろんイギリスにはそのような権限はない)、イスラエルはパレスチナの領土を米国や他の誰かに割譲する権利も持っていない。

 侵略も国際刑事裁判所(ICC)で起訴できる犯罪の一つであり、米国とイスラエルはICCの加盟国ではないが、ICCは、パレスチナ自治区の司法権を主張しており、これには非加盟国がパレスチナ自治区で行った行為も含まれる。ガザのパレスチナ人を強制的に移住させることは、国外追放または強制移送という人道に対する罪となる。1949年のジュネーブ第4条約は、被保護者の占領地からの強制移送または国外追放を禁止している。

 トランプは、ガザの住民が去った後、彼らが戻るとは考えていないと述べた。彼らが帰還することを阻止することは、避難民が逃げた土地に戻る権利を保持するという国際法の原則にも違反することになる。グテーレス国連事務総長は、アル・アラビーヤTVに対し、ガザからパレスチナ住民を追い出すことは「パレスチナ国家を永遠に不可能にする高いリスクを生み出す」と語った。ごく当然のことだ。

トランプのリゾート構想はガザの人々の犠牲の上につくられる

 トランプはバイデン前大統領が関与したすべての戦争を止めるという公約を掲げて選挙戦を戦ったが、「ガザのリビエラ構想」はイスラエルにガザ戦争の継続を委任するだけでなく、イスラエル人入植者のためにガザを開発するものだ。ネタニヤフは、ガザでの戦争を再開するための使命を得てワシントンを去った。停戦に反対してネタニヤフ政権の閣僚を辞任したイタマル・ベングビールが再び内閣に復帰すると表明したのも、トランプ構想によって、ガザ戦争の再開が事実上約束され、ヨルダン川から地中海までイスラエルの領土にするというベングビールら極右の構想がトランプの開発計画によって実現に近づいたからだ。イスラエルのカッツ国防相は、「(ガザ地区外への)移住を希望するガザ住民は誰でも、受け入れ意思のあるどの国にでも移動できるようにする計画の準備」をイスラエル軍に指示した。

「世界中の人」ではなく、「イスラエルの入植者」だと思う https://news.ntv.co.jp/category/international/3c22ac2712c744bd95386d0f814f316e

 米国上院の弾劾裁判では出席議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領は有罪となり失職し、副大統領が大統領に昇格することになっているが、目下のところ上院議員でトランプの「リビエラ構想」に反対しているのはバーニー・サンダース議員のみで、政治家の親イスラエル姿勢が顕著な米国政治の特異な政治風土を表している。ガザに関するトランプの発言は理解できない、グロテスクだとサンダース議員は発言し、億万長者のためにではなく、パレスチナの人々のためにガザを再建しようと呼びかけている。日本など東アジア諸国、グローバルサウスの国々、またEUなどヨーロッパ諸国は団結して、サンダース議員の呼びかけに応じるように、トランプ構想の実現を断固阻止すべきであることは言うまでもない。

表紙の画像はトランプ大統領の主な主張
https://www.nishinippon.co.jp/item/o/1312946/

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